志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

安土桃山時代

徳島城博物館・特別展「阿波戦国絵巻―細川・三好・長宗我部・蜂須賀―」

三好長慶生誕500周年であった令和4年も終わり催し物も一段落、と思ったところで大ネタが飛び込んでまいりました!徳島城博物館の特別展「阿波戦国絵巻―細川・三好・長宗我部・蜂須賀―」でございます。思えば、長慶生誕500周年の去年に色々あったのは全て大阪…

『小学館版学習まんが 日本の歴史8 戦国大名と織豊政権』がスゴイ!

学習漫画というジャンルがいつからあるのかはよく知らないが、児童向け、あるいはもう最近は大人向けでも、学問内容や自身の主張を漫画化する手法は一般的になっている。文字ばかり並んでいるのにうんざりする人間でも漫画なら読めるし、漫画技術も発達して…

安土城考古博物館・春季特別展示「戦国時代の近江・京都―六角氏だってすごかった!!―」

安土城考古博物館・春季特別展示「戦国時代の近江・京都―六角氏だってすごかった!!―」を観に行ってきました。 azuchi-museum.or.jp 六角氏の最新研究を詰め込んだ『六角定頼』が発売されて早3年!ようやく博物館展示でも六角氏をテーマにしたものが現れまし…

石井伸夫・重見髙博・長谷川賢二編著『戦国期阿波国のいくさ・信仰・都市』(戎光祥出版)の感想

四国東部の戦国史は常に畿内のそれと不可分な関係にあった。畿内で力を持った細川氏・三好氏は四国東部を勢力としていたし、織田信長も三好氏との関係を一つの軸として四国情勢に関与・介入した。一方で、畿内権力の研究が様々な角度から切り取られて進展し…

三好氏居所集成・三好康長編

『織豊期主要人物居所集成』の三好氏版。Twitterで毎日連載していたが、実休・存保(義堅)に続きこれまた記事として典拠付でまとめておく。monsterspace.hateblo.jp monsterspace.hateblo.jp織豊期主要人物居所集成〔第2版〕思文閣出版Amazon 三好康長の系…

天野忠幸『三好一族―戦国最初の「天下人」』(中公新書)の感想

天野忠幸先生と言えば、このブログで三好氏について触れだしてから何度も何度も名前を出させていただいている三好氏研究の泰斗だが、意外なことにこれまで著書の感想を記事にしたことがなかった。『戦国期三好政権の研究』や『三好長慶』、『三好一族と織田…

海を渡り実力評価を求めた真鍋氏

※本記事は真鍋淑郎さんの出自を特定あるいは推定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。 先日真鍋淑郎さんがノーベル物理学賞を受賞された。実におめでとうございます。真鍋さんはすでにアメリカ国籍ということだが、出身は愛媛県四国…

三好氏居所集成・十河存保(三好義堅)編

『織豊期主要人物居所集成』の三好氏版。Twitterで毎日連載していたが、実休に続きこれまた記事として典拠付でまとめておく。 monsterspace.hateblo.jp織豊期主要人物居所集成〔第2版〕思文閣出版Amazon 十河存保の生年 十河存保の活動経歴(1)~十河氏の当…

池田教正―受け継がれる河内キリシタンの記憶

戦国時代は世界的には大航海時代と重なっている。ヨーロッパ世界の航海技術が著しく進歩して、ヨーロッパ世界から直接的に人物や文化が流入することが可能となった。そのヨーロッパ世界から最も遠かった国の1つが日本であった。しかし、その日本へも1540年代…

中脇聖編著『家司と呼ばれた人々』感想

近年歴史関係の本は充実していっている。背景として研究の深化があることは間違いないが、一昔前だとなかなか出ないようなテーマでの一般書が出版されている。出版不況が叫ばれて久しい中、マイナー気味なテーマでの出版が可能であることは、それだけであり…

南丹市立文化博物館・秋季特別展示「八木城と内藤氏~戦国争乱の丹波~」

南丹市立文化博物館にて秋季特別展示「八木城と内藤氏~戦国争乱の丹波~」を観に行って参りました。 http://www.be.city.nantan.kyoto.jp/hakubutukan/tenji_kikaku/2020/yagi.pdf 【南丹市立文化博物館秋季展示会のお知らせ】明日(10/24)から「八木城と…

柴裕之編著『図説 豊臣秀吉』(戎光祥出版)のススメ

小学生以来歴史とは長い付き合いになる。私の位置としては一介の歴史ファンの域を出ていない。しかし、それなりに最新研究も能動的に摂取していると、どうしても知識としてはディープなものになる。「初心者」ではないわけである。一方、歴史というジャンル…

(年未詳)3月2日牧郷宛池田教正・多羅尾綱知連署状の年次比定について―「御家門様」とは誰か

日本史を素描していくための史料として基礎となるのは、やはり当事者がその時々に遺した文書や手紙、日記ということになる。こうした史料にはリアルタイムの認識が直に反映されていると見られるからである。ところが、こうした史料の「素性」というのはすぐ…

山田康弘『足利義輝・義昭 天下諸侍、御主に候』(ミネルヴァ書房)の感想

『足利義輝・義昭』に何を見出したいと思っていたのか いやあ出ましたね。山田康弘先生による『足利義輝・義昭』!もう発売から2ヶ月経っておいて「出ましたね」も何もないのですが、著者といい題材といいいつ読んでも「出たな!」という重みがある。足利義…

『多聞院日記』天正10年6月3日条の「細川殿」とは誰か

『多聞院日記』は興福寺の塔頭多聞院の僧侶が3代、文明10年(1478)から元和4年(1618)まで書き継いだ日記である。140年分全てが現存しているわけではないが、戦国時代から江戸時代初期にかかる「一次史料」として日本史研究では重視されている文献である。…

松浦光が死んだのはいつか

以前の記事(松浦光(孫八郎)―和泉国の戦国大名 - 志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』)では松浦光が亡くなったのを、織田信長が光に進物の返書を宛てた天正3年(1575)12月から、『兼見卿記』に「泉州松浦後室」が出現する天正4年(1576)8月までの間と…

松浦光(孫八郎)―和泉国の戦国大名

唐突だが、和泉国の戦国時代を説明せよと言われて、すらすらと答えられるだろうか。そもそも和泉国に戦国大名はいたのか、それさえも意識にない人が多いと思われる。そうした中、松浦氏は和泉戦国史の鍵を握る氏族である。ところが、松浦氏の情報は未だ研究…

松永久秀と若江三人衆の血縁関係

以前から、松永久秀と若江三人衆の血縁関係については触れているが、そろそろ「なぜそうなのか?」と思われる方もいるかもしれず、考えをまとめてみることにした。 まず、前提として松永久秀と若江三人衆のプロフィールをまとめておく。若江三人衆については…

中西裕樹『戦国摂津の下克上 高山右近と中川清秀』(中世武士選書・戎光祥出版)の感想

知ってると思ってるけどよく考えたら意外と知らない、そんな人物や出来事を研究者が斬る!ことでお馴染みの戎光祥出版さんの中世武士選書シリーズ。最新刊は何と中西裕樹先生が描く、摂津の戦国時代。これは高槻市民としては読まざるを得まい…といった趣きが…

三好康長の息子・徳太郎の動向と三好式部少輔との関係小考

三好徳太郎は三好康長の息子とされる人物である。『細川両家記』の元亀元年野田・福島の戦いの三好勢の記述にも「三好山城入道笑岩斎。同息徳太郎」が見える。『両家記』は元亀4年(1573)に成立したとされるため、この記述の信憑性は高い。また、康長の文書…

松山重治―境界の調停と軍事

松山重治とは一体何者なのか?松山重治なんて初めて聞いたという人にも、三好氏を齧っていて名前を知っている人にとってもこの問題は深淵なものを孕む。三好氏家臣の中での出世頭と言えば松永久秀である。近年では三好長慶の家臣団編成の特異性が指摘されて…

豊臣秀長の評価の推移とこれから

豊臣秀長は豊臣秀吉の弟である。何でもないような事実であるが、秀長の存在はあまり意識されることがない。兄である秀吉が最下層から天下人に立身出世した話は江戸時代初期から創作の題材としてメジャーであるのに対して弟の秀長の影は頗る薄く、兄の物語の…

なぜ織田信長は三好康長(康慶)を重用し続けたのか?

三好康長はどちらかと言えばマイナーな三好一族の中ではそこそこ名前が知られている武将ではないかと思われる。なぜなら、康長は織田信長の重臣となっており、近年は本能寺の変の原因として四国説がクローズアップされる中、四国説のキーマンとなる人物だか…

元亀の争乱における細川昭元(細川信良)―織田信長に天下を取らせた男

何となくリアルっぽさがある人気戦国歴史漫画『センゴク』を読んでいて思わず吹き出したシーンがある。『センゴク』第一部第五巻(だったか…)には比叡山で織田信長包囲網を代表する大名たちが参会する、漫画らしさ重視の場面がある。ここに現れたのは朝倉義…

徳川氏の実名に見る「秀吉」の有無

豊臣政権下において元服した徳川家康の息子は四人いる。次男秀康、三男秀忠、四男忠吉、五男信吉である。家康の長男信康は天正7年(1579)に切腹に追い込まれ、六男忠輝が元服したのは慶長7年(1602)、家康が将軍となる前年である。さて、これら豊臣政権下…

豊臣秀頼は豊臣秀吉の実子ではない?―論争の意義

はじめに 豊臣秀吉は戦国時代の日本列島を統一し、江戸幕府に繋がる統一政権を作り上げた人物である。しかし、豊臣政権は秀吉の死後、豊臣政権の宿老であった徳川家康によって政権を奪われ、江戸幕府にアップグレードされた。秀吉の遺児で名目的には豊臣政権…