志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

切通理作『ウルトラマン ニュージェネの証~『ギンガ』『ギンガS』『X』『オーブ』『ジード』&ゼロ』(株式会社ホビージャパン)感想

 気付けば「ニュージェネレーションヒーローズ」と呼ばれる『ウルトラマンギンガ』以来のウルトラマンシリーズの歴史も10年を超えた。総集編番組を挟みながらという留保付きながら、これほど長くTVシリーズウルトラマンが製作され続けたのは空前だ。そしてこの度、『ギンガ』~『ジード』までにゼロも加えたスタッフ・キャストへのインタビュームックが登場することになった。

 インタビューされたスタッフ&キャストは以下の通り(下線は過去のインタビューの再編集)。

●On-site staff ——現場スタッフ
アベユーイチ/原口智生/石井良和/坂本浩一/田口清隆/小中和哉/髙橋創/新井毅&武山弘道&根岸泉

●Story ——脚本家
長谷川圭一/小林弘利/黒沢久子/乙一&三浦有為子

●Actor ——出演者
根岸拓哉&宇治清高&坂本浩一/最上もが/高橋健介&田口清隆/坂ノ上茜/石黒英雄/濱田龍臣坂本浩一/島田和正 ※キャスティング

●Production ——制作
渋谷浩康/岡崎聖/鶴田幸伸/大岡新一

●Technical ——技術
後藤正行/橋爪謙始&酒井豊&相馬宏充&市川智茂/西川伸司/なかの★陽/品田冬樹&澗淵隆文/木場太郎&倉田友衣子
●Suit actor ——スーツアクター
寺井大介/岩田栄慶

 他にインタビュアーの切通氏による各シリーズ総論や全話解説もあり、ニュージェネシリーズを忘れかけていてもそれぞれがどんな話だったか、すぐに如実に思い出せる構成になっている。この本の本旨ではないが、各ウルトラマンのスチール写真やメイキング写真、絵コンテなども珍しいものがあり、その点でも損はさせないものとなっている。

 一見して目を引くのはやはり切り込みの多彩さだろう。昭和ウルトラシリーズはムックがそれこそ40年以上の歴史を以て出続けているが、その中でのスタッフ・キャストのインタビューでもここまでのバラエティで揃えてくるのはなかなかない。何せ、キャスティングや絵コンテ、美術といった方々までいるのだ。こうした手広さはまさにニュージェネシリーズが現在進行形だからこその恩恵と言えるだろう。
 そしてインタビューがどれもこれも長い!1ページに細かい文字でびっしりとした情報量!スタッフ一人一人から聞き出す密度が半端ないものとなっている。おかげで読了するのに結構時間がかかってしまった。しかしそれだけに各シリーズともに真に迫るというか、リアリズムというか、実感を以てニュージェネウルトラマンの息吹を感じられる。
 中でも『ウルトラマンギンガ』についてはある意味ショッキングというか、やはり色々と無理があったことを裏付けるような証言が飛び出してくる。ここで改めて思うのはニュージェネシリーズは「歴史」であるということだ。冒頭で述べたようにウルトラマンTVシリーズがこれほど長く続いたことはない。さらにニュージェネは最初から五体満足にスタートしたわけではなく、ウルトラマン自体が求められているとは言えないところから出発し、その存在意義を徐々に認められていった流れを持つ。「ウルトラマンを取り戻す」―その中で何が行われていたのか、あえて言えば不完全なウルトラマンを支えた哲学とは何だったのか、スタッフたちの証言によってそれらが形作られていく。
 その点でいうと本書の範囲が『ジード』までなのは示唆的とでも言おうか、ここでようやくそれなりに過去のシリーズとも遜色ないウルトラマンの形が完成した。『R/B』以降はそれを受けて、現代的に何ができるのか、どう変えていけるのかという別の歴史が紡がれていくと言える。『ニュージェネの極』(仮)として『R/B』以降の作品を扱う続編も予定されているとのことだが、どのような「歴史」を見せてくれる構成になるのか、今から楽しみだ。

 以下、所感(そのうち増えます)。

  • 今回「&ゼロ」と付いているが、実際『ゼロファイト』がニュージェネのルーツであることをアピールできていたのはうれしかった。『ニュージェネの極』でもクロニクル系番組には触れてほしいが果たして…
  • ギンガとルギエルには対となる関係性があるというのは『ギンガ』のスタッフも薄々とは感じつつ、それぞれの思う関係性はわりと違っていて面白かった
  • キャスティングについても誰がどう決めたのかというのも捉え方がいろいろあって興味深い