今年はウルトラマンゼロ15周年!ちょっと前にゼロ10周年だったような気がすることを思うと、時が経つのが早くなってますね…。それはともかく、円谷プロもゼロ15周年を推していく気はあるようで、今年もすでにイベント開催が決まっている。とは言え今年のものはニュージェネレーションヒーローズのルーツとしてのゼロをフィーチャーする趣が感じられる。…実のところ、我が愛するウルティメイトフォースゼロは小説「ウルティメイトフォースゼロ~Side Story~」以来、大した出番がなく(ギャラファイやボイスドラマにチラッと出たり程度)、ゼロ15周年でまた新しい出番が欲しいなと思いつつ、今回はお呼びではなさそうな…と内心あきらめかけていたら…。
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↑この記事ももう3年前という事実…
4月5日~7日上演の「NEW GENERATION THE LIVE スターズ編 in 博品館劇場」は副題が「奴らがウルティメイトフォースゼロ」!ここで来ましたか…。幸いにも千秋楽公演がU-NEXTで期間限定配信されるというので、内容を観ることができた。
まずは外面から触れますが…すごく、すごいです!ゼロの声が宮野真守、グレンの声が関智一なのはもはや当然といった感がありますが、ミラーナイトの声も緑川光!ジャンボットは神谷浩史!ジャンナインは入野自由!出し惜しみなしの本物攻勢です。今回はベリアルやトライスクワッドの出番もありますが、彼らももちろんオリジナルボイス*1。いやあ一時期の『新ウルトラマン列伝』や大怪獣ラッシュでミラーナイト・ジャン兄弟が不自然に喋らなかったり、代役だったりしたことを思うと、ライブ公演で全員本物なのはそれだけで夢みたいだ…。今後ともこれがデフォルトなんですよね?ね!?
- 前編 奴らがウルティメイトフォースゼロ!
ゼットさんによる公演説明が終わる(ちなみにゼットさんので出番はここだけ。登場ヒーローに名前があるからてっきりメイン格かと)と、まずはオープニングバトルで、Voyagerの「奴らがウルティメイトフォースゼロ!」生歌唱からのウルティメイトフォースゼロVSマグマ星人の海賊軍団!戦いが終わったら、分捕った剣やウルトラゼロランスをパスしてるのが面白い。もう一歩進めて武器交換戦法とかやってもいいんですよ?ここでジャン兄弟はエネルギー補給と称して一旦退場。やっぱりロボットキャラだから90分出ずっぱりはきついのか?マグマ星人からの戦利品として宝の地図を手に入れたゼロ、グレン、ミラー一行は地図の示す先へ向かうことに。折しもトライスクワッドも地図を見つけており、遺跡の前で鉢合わせ。結局、両チームでお宝争奪戦を行うことに。しかし、グレンとタイタスは極寒の空間、ミラーナイトとフーマは目がチカチカする騒々しい空間、ゼロとタイガは怪獣墓場のような空間へ飛ばされ、なんやかんやあって戦うことになる。
トライスクワッドってウルティメイトフォースゼロに似てるよな…という感慨はあったものの、ライブでも共演は初なのではないでしょうか。脳筋か知性か、パワータイプかスピードタイプか、でグレン・ミラーとタイタス・フーマが綺麗に交錯するので、掛け合いが楽しいのなんの。筋肉を煽られてキレるタイタス、鏡や分身でお互いの攻撃をいなすミラーナイトとフーマなど、思いもよらないところから共演の味噌が飛び出してきてすごい空間だ…。ゼロとタイガの煽り会話も「ま、俺は70%くらしか力出してませんけどね」→「だろうな!俺が50%だからな」→「間違えた!30パーだった!」→「俺は20パー!」と男子学生レベル!いやまあこいつらのメンタルは確かに男子高校生と男子中学生なので合ってるんですけど…。タイガがトライストリウムになると、ゼロたちも負けじとトライエメリウムという名のただグレンとミラーが騎馬戦の要領でゼロを持ち上げているだけの姿(?)に!「あれをやるんですね…」「しゃーねーなあ、付き合ってやるよ」「え!?もしかしてゼロたちも合体を!?」からのこれ。しかもびっくりしたせいかトライストリウムは劣勢ですからね。これが…これがウルティメイトフォースゼロ…。
そうした中現れるのはゼロダークネス。ゼロダークネスはゼロの「恐怖」が具現化した姿であった。ゼロダークネスは「恐怖」を再現するべくウルティメイトフォースゼロとトライスクワッドを襲う!ちなみにBGMがジード版でゼロ相手に手を突き刺すのもジードでの戦いの再現になっていて、ジードを踏まえた「恐怖」になっているっぽいですね。ゼロダークネスによってグレン、ミラー、タイタス、フーマが退場し、ゼロの心が折れかけるもタイガは「俺の仲間はあんなことで負けたりしない!」と叫び、自らと同じく偉大な父を持ちながら自分の道を進むゼロに憧れがあったことを告白、「ウルトラマンゼロならこんな試練、乗り越えていくでしょう!?」と叱咤する。しかし劣勢のタイガにゼロダークネスがトドメを刺そうとしたその時!ギガバトルナイザーを食い止めたゼロがゼロダークネスに一発かまし反撃ターンへ。「今この瞬間だけは、俺とお前でウルトラ兄弟だ!」そして消えていったグレンたちも復活!ゼロダークネスが召喚した怪獣軍団との乱戦へ突入する!前半の戦いでお互いの力を認め合っていたグレン・タイタス、ミラー・フーマの合体戦法が炸裂し、グレン・タイタス・フーマでハイタッチすると、3人はミラーナイトのタッチ待ちへ。少し逡巡するミラーナイトだったが、ここはノって3連続タッチ。このノリ!
そしてゼロダークネスとの最終決戦。「恐怖を具現化できるなら希望も具現化できるはず!」とタイガはニュージェネレーションヒーローズの力を具現化し、ここにレイガとゼロビヨンドが揃い踏み!おおお?ニュージェネ全員じゃないと出せないレイガをそうやって出してくるか!こういうことができるのはライブのまさしくライブ感ですごい。
戦いが終わり、「そういやよお、結局お宝って何だったんだ?」「宝か…俺は見つけたぜ。最高の宝をな」(タイガの肩に手を置く)。うむむむむ。ベタすぎるけど、ゼロを兄のように慕うタイガと「ウルトラ兄弟」の流れを見せられたら何も言えねえ…。
ところが遺跡の背景が割れてベリアルの目が映り…にて前編は終了!そして次回予告へ…って次回予告あるんだ。凝ってるなあ。
- 後編 決戦!惑星エスメラルダ!
マイティベースに帰還したゼロ、グレン、ミラーたち。出迎えるモロボシくんだった(どうでもいいけどライブだとピグモンも普通に等身大になっちゃうね。グレンの肩を揉むモロボシくんとかここでしか見られねえ~~)が、ジャン兄弟は未だ帰還しておらず、そこへ惑星エスメラルダのラピスが助けを求めてくる。エスメラルダは襲撃されジャン兄弟が迎撃するも、メンテナンス中なこともあって十分に戦えないとのこと。そのためウルティメイトフォースゼロはエスメラルダへ急行する!
駆け付けたところでは、エスメラルダを襲撃した宇宙人がリムエレキングを捕らえており、戦闘に突入。エレキングを奪還すると、エレキングはゼロに懐いたようである。このリムエレキングは王家に伝わる特別なエメラル鉱石を飲み込んでしまい大きなエネルギーを持っているとのこと。そこへ現れたのはジャン兄弟だったが…「「抹殺」」との掛け声とともにゼロたちを襲ってくる!ここでゼロたちはフェードアウト、お姉さんはリムエレキングの力で地球と交信し、お馴染みのウルトラヒーロー応援を説明する。
場面が変わってジャン兄弟に押されがちなゼロたち。そして黒幕として現れるベリアル…もといゼロダークネスから解放された恐怖のみの「テラーベリアル」。「お前はジードに倒されて死んだはずだ!」と『ジード』を前提にしてくれてるのは当たり前だけどほっとするところ。ゼロたちは結局押され気味で、ラピスお姉さんが応援の音頭を取ってくれる。
さて、ゼロたちを追い詰めたベリアルは「最期に言いたいことがあれば聞いてやる…」と嘯くがゼロたちは「最期の瞬間まで俺はお前をぶっ倒すつもりでいるからよお…」「たとえこの身が滅びようとお前に屈したりはしない!」とあきらめない。ベリアルは「やはりお前たちの心を折ることはできんな…」。劣勢だけど心は折れないし、ベリアルもそれを織り込み済みなやり取りにコクがありすぎる!テラーベリアルはエスメラルダのエネルギーを独占し光の国への侵攻を表明。やることは本家と同じである。少しフライングになるが、テラーベリアルはこの直後にジャン兄弟にラピス&エレキングを襲わせてその離反を招く切っ掛けを作るなど、ゼロファイトと似たような轍を踏む。台詞もゼロファイトほぼそのまんまなものもあったりして、あまり独創性というものがない。これはテラーベリアルが所詮ウルティメイトフォースゼロが想起する「恐怖」としてのベリアルだから、その範疇からは出ないということなのだろう。だから強いし、ファンサービス的な再演だってできるけど、新しい何かはあまり起こらない。そういう意味では心を折ることができないと最初から思ってるのは当然と言えば当然なんだ。
さて、先述の通り、ベリアルはジャン兄弟にラピスお姉さんを襲わせるが、兄弟ともに動きがぎこちなくなりはじめる。「そうだよな…お前らが守るべき存在を撃てるわけがねえ」。業を煮やしたベリアルはジャン兄弟を葬ろうとするがそれをゼロたちが庇い、爆散するも…。エレキングに会場の皆がウルトラチャージを行い…思いが届きウルティメイトフォースゼロ復活!
「大丈夫かよ~?ヤキトリ~」
「すまない、もう大丈夫だ」
「君たちの光が僕たちを元に戻してくれた。礼を言う」
「信じてましたよ、2人とも」
ベリアルは怪獣を復活させる!
「ちぇ~、めんどくせえなあ。おい、ヤキトリ兄弟、迷惑かけたぶんきっちり働けよ!」
「言われるまでもない。奴に操られていたとはいえ皆に銃口を向けてしまった」
「その怒りで電子頭脳がオーバーヒート気味だ」
「ならば奴に見せつけましょう。正義の心とともに!」
いやー「怒りで電子頭脳がオーバーヒート気味」!こんなカッコいい台詞あります!?(ジャンボットに銃口があるのかは置いておこう…*2)
そして乱戦が始まる!よく見たらミラーナイトはベリアルと戦ってて、ベリ銀以来の因縁を地味に昇華している!ミラーナイトとジャンボットの共闘!エスメラルダコンビなのに映像作品ではそこまで絡みがなかったやつだ!ジャンはグレンとのタッチで日頃の恨みなのか吹っ飛ばしていく。続いてグレンとナインの共闘。ジャンナインは重たそうなのにぐりぐり動く!その上に相手を見ずにジャンキャノン!こんなキレッキレなナインは初めてくらいに見て眼福だ…。ゼロを支えつつ他の4人は必殺技を放ち怪獣たちを撃破!ところでライブでダブルジャンナックルはちょっと無理がないか?
ゼロはワイルドバーストになってベリアルと対峙。ワイルドバーストでベリアルと戦ったり、ウルティメイトフォースゼロで並び立つのは、ゼロが初期デザインのままだったらIFの現実化という点で結構面白い。個人的に銀河伝説時点ではゼロは赤一色でも良くない?と思っていたのが、ベリ銀で他のヒーローと並ぶと青があった方がいいなと考えたので、実際にそうなるとどう見えるのかが体験できて良かった。赤一色でグレンたちと並ぶと、ゼロのウルトラセブンぶりがだいぶ露わになりますね。
ところが、ベリアルはリムエレキングを吸収、エメラル鉱石のエネルギーによってベリアルアトロシアスへと覚醒。ウルティメイトフォースゼロを追い詰めるが、ベリアル内部でリムエレキングは抵抗。これを見たウルティメイトフォースゼロはゼロにエネルギーを集中、「ウルティメイトオーバーラッピング」を行って、ゼロはシャイニングウルティメイトゼロになり、アトロシアスを撃破する!
戦いが終わり、助け出したリムエレキングを抱きながら登場するウルティメイトフォースゼロたち。エレキングを「英雄」と呼ぶのは「小さな英雄」オマージュですかね。ここでまたもやゼロの名付けが爆発!「アンヌちゃん」や「アマギくん」などの名付けを連発し、ダメ出しを食らう流れ。
「みんな!今日は本当にありがとな。みんなの声はいつだって俺たちに勇気と力を与えてくれる!」
「そしてその声はとても尊いものなのだ」
「この先も君たちには光を信じ続けてほしい」
「挫けそうな時でも皆さんなら乗り越えていけるはずです!」
「それでもちょっと助けが必要な時はいつでも呼んでくれ!」
「ああ!俺たちはずっとみんなを見守り続けていく仲間―」
「「「「「ウルティメイトフォースゼロだ!!!!!」」」」」
グレンファイヤー
関智一なのに今回そこまでグレンが目立ってない!過去のフリーダムさを思うと物足りない気もするが、皆で目立ってると考えるとこれがいいバランスなのかもしれない。そこまでアドリブ爆発でもなかったが、フーマの提案からの自然な「ウルトラファイトー、レディィィゴーッ!」はドストレートすぎてGガンダムだとパッと気付かなかった。
ミラーナイト
今回ミラーナイトのスーツアクターは力丸佳大さん!つまりオリジナルアクターです。それだけあって動きの本物感は抜群!楽にしてる時のエロティックな気怠い感じや、人差し指が特徴的な指や手の動きなど…。キャラクターとしても自然にグレンやフーマに喧嘩を売る言動をしたり、こういうナチュラル煽りしてもスッと入ってくるのが懐の深さよな。
ジャンボット
戦いがやたら泥臭いと言うか、体全体でぶつかっていく感じ。ライブだと光線技は背景への合成になるし、今回はバトルアックスも使わなかったので、豪快さの演出が生身系になってしまったか。ゼロファイトと同じで美味しい台詞は弟に持っていかれていた印象がある。トライスクワッドとの共演もなく、キャラの面白さをさらに見せていくのは「次」になるのかなあ。
ジャンナイン
ジャンナインは相変わらずアトラクション用の着ぐるみがなく、スーツとしては映像作品用の本物である。そんな着ぐるみももう13年もので長く使われているものだ。しかもその着ぐるみでキビキビ動くんだからすごいよ。
ウルトラマンゼロ
ニュージェネレーションヒーローズとの絡みでは先輩・リーダーとしてのゼロが押し出されているのに対して、ウルティメイトフォースゼロだと対等な悪友感が出て、個人的には片意地を全く張らない自然体なゼロが好き。ただ、今回はゼロの心が折れかけたところでタイガが叱咤したり、タイタス・フーマとグレン・ミラーが対等にやりあったりすることで、2つの性格を上手に融合していた感じ。しかし、イベントの最後、去り際に「じゃあな」で「きゃーーーー」と声が上がるあたり、本当に罪な男だなこいつ…。
まとめ
どうにもウルティメイトフォースゼロと言うと、現役時代にゼロ作品のレギュラーポジションを獲得しきれなかったこともあって、ちょっと出ないと忘れ去られがちというか、近年は逆にゼロ単体での出番も多いので「あれ?ウルティメイトフォースゼロはどうしてるの?」と思われつつ流されがちで、なかなかウルトラの「現在」に食い込めていなかった気がする。『ウルクロ ゼロ&ジード』は不完全燃焼だったし、Zのボイスドラマで出番があったのはグレンとナインだけだし、小説もゼロファイト~ジードの間の当時から見ても過去時空の話でしたからね。そこへ急にトライスクワッドとの超自然な共演でジャブを入れられて、ワイルドバーストからのシャイニングウルティメイトゼロで「ウルティメイトオーバーラッピング」やったり、直接出ていなくても俺たちはウルトラの「現在」展開にちゃんといるぜ!してきて、急にこんなことやられたらびっくりするだろ!もっとやってくれていいんだぞ!
一方でライブという場でリムエレキングをモロボシくんに次ぐ新入りのように扱ってしまったのは、当面「正史」ではウルティメイトフォースゼロやらないよと言われているような気もする。いやいやいや、この内容とクオリティをもう見られないようにするつもりですか?ソフト化…しませんか?同じ内容のノベライズでもいいぞ!この時何があったのかをもう体験できないのは惜しいでしょ。惜しいと言えば配信で見てると画面から外れていくところでわちゃわちゃやっていたりするのがちょっと見えて、くぅーそっちも映してほしいぜ。
個別の要素で言うと、音楽のチョイスもなかなか。ゼロシリーズ自体がバラエティに富んでいて作品ごとに音楽の趣も異なり、列伝やクロニクルで歌を積み上げていき…の果てに色々あるのだが、今回はウルティメイトフォースゼロ主役なので「運命のしずく」を基軸にしつつ、洗脳ジャン兄弟のキラーザビートスター、トライスクワッドとのわちゃわちゃでサーガ、ベリアルの恐怖でジードからといいとこ取りかつ、グッと雰囲気を持ってくる曲揃い。このバラエティ感こそがゼロシリーズの良さですわ。
後は見たいものとそれに至る擦り合わせのバランスも良かった。ライブだとどうしてもやりたいこと優先で、そういうものを楽しむものでもあったりするのだが、今回は個々の展開に不自然さがない。復活したベリアルはあくまでゼロたちの「恐怖」なのでジード最終回を経たキャラ付けにしなくて良いし、ジャン兄弟が洗脳されるのもメンテナンス中を襲われたという理由付けがあり、盤石な状態なら負けなかったはずというフォローができる。レイガ&ゼロビヨンドVSゼロダークネス、シャイニングウルティメイトゼロVSベリアルアトロシアスも新鮮なマッチアップだが、レイガもアトロシアスも理屈がちゃんとあって出てくるもんな。
何はともあれ、結構久々な新鮮な供給だった。ゼロ15周年は始まったばかり。まだまだ色々な仕掛けがあってくれて良いので期待はしていきたいですね。
加えて、今回トライスクワッドとの共演で一つのやってほしい方向性が見えたような気がする。理想を言えばウルティメイトフォースゼロだけでいろんな話を見たいところではあるのだが、現状なかなか難しいだろう。それよりも現役のウルトラマンともっと積極的に共演していくことでキャラのコクというか新しい一面をもっと開拓できるんじゃないか…。そちらの方がギャラクシーファイトやリブット、レグロスといった近年の展開とも相性良さそうだし、何より「現在」に存在感があると体感できるので。