『ウルトラマンブレーザー』は新規怪獣というものを明確に売りにしたウルトラマンだった。ニュージェネレーションウルトラマンでは着ぐるみの使い回しが多く、ここまで新規怪獣率が高いのはかなり久々だ。もっとも放送前はそれに対する不安を記事に認めたりもしたが…。
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ただし、一方的に危惧してるだけで終わりはアンフェアだろう。せっかく怪獣をドバドバ出してくれたことだし、あまり長くは語れないけれども個人的にどうだったかまとめていきたい。
宇宙甲殻怪獣バザンガ
「ファースト・ウェイブ」たる記念すべき『ブレーザー』第1話怪獣がバザンガだ。バザンガだがどこから語って良いやらレベルで第1話怪獣として完璧と言っていい。王道怪獣のようでいて、甲殻系のフォルムで「個性」を主張してくるし、技やギミックの手数の多さ、防衛隊では対処しきれない説得力、野人のようなブレーザーとの対峙、わかりやすい能力のメリット・デメリット、そして弱点…ケチを付ける気など毛頭ないが、仮に付けようとしても付ける部分などどこにもなかった。個人的に一押しなのはメインカラーが赤なのがグッと来る。惜しさがあるとしたら『ブレーザー』作中で再登場がなかった(ザンギル回で幻影は現れたが)くらいか。しかし宇宙怪獣というバックボーンもあるし、これからも色々なウルトラマンと戦っていってほしい存在である。
深海怪獣ゲードス
ニュージェネでお魚系新怪獣といえば『オーブ』にマガジャッパがいたが、マガジャッパがどちらかと言うと臭さで個性をアピールしていたのと比べると、ゲードスの生態はまさしく海棲生物のもの。十二分に魚を怪獣化したデザインもさることながら、触角が伸びるギミックがありソフビで再現可能なのもうれしい。カマボコ工場を襲ったり、江戸時代にも出現したり、最期はスパイラルブレードで塩焼きにされるなどの愛嬌があるのもうれしいところ。
23式特殊戦術機甲獣アースガロン
『Z』でセブンガーが大受けして以来、ウルトラシリーズでも人間側の戦力としての巨大ロボットはすっかり定着した感がある。『ブレーザー』でのアースガロンもその系譜に属する存在で、超正統派なメカ怪獣と来た!それでいて目には愛嬌があって、これまでの巨大ロボットの総決算めいた部分さえある。見てくれに関しては放送前にいきなり満点を叩きだして期待しかなかった。ところが、実際の出番はとにかく渋い!活躍していないわけではなく、ちゃんと活躍はしているのだがブレーザーのアシスト的な部分が多い。後半になるにつれ強化もされていくし、怪獣撃破だって一応はあるのだが、イルーゴは所詮デカい怪獣の一部分だし、ズグガンは等身大サイズに無双しただけなので勝ちにカタルシスがない。とにかく気持ち良くないとでも言おうか、アースガロン目線でスカッとするような大活躍はついぞなかった。
まあワイはとりあえずアースガロンくんがカッコよく怪獣を倒してくれれば最低ハードルは楽々クリアとなります
— 志末与志 (@shima_126) 2023年4月20日
放送前には↑のようなことも言っていて実際『ブレーザー』は色々とハードルは越えてくる作品だったのだが、まさか一番楽勝だろうと思っていたアースガロン部分のハードルを越えて来なかったのは悪い意味で驚きだ。見てくれで満点という破格さも、本編ではそこまで活躍しないからこそのフォロー策にまで思えてきてしまう。まあそこは邪推だが「俺は主役じゃない」と正統派怪獣メカな部分がミスマッチなまま終わったのは不満と言うよりもったいない。『アースガロンファイト』ー!早く来てくれー!(追記:映画では活躍できたのでそれなりに溜飲が下がりました)
甲虫怪獣タガヌラー
カブトムシのようなタガメのようなカマキリのような色んな昆虫の特徴をとにかく混ぜましたという容貌。ウルトラ怪獣の昆虫怪獣ここにありという怪獣だ。昆虫怪獣もニュージェネではなかなか出られなかったのでこういう存在が出て来てくれてうれしい。その一方で、タガヌラーは高エネルギーをため込んでいて、表面は熱いわ、デカ太ビームは撃つわ、大爆発の危険性があるわ、昆虫怪獣に似つかわしくない(?)生態を持つ。こういう特徴や弱点や攻略法がはっきりしている怪獣は好みだ。過去にモンスアーガーでも触れた部分だが、こういう相手は苦戦してもいいしサクッと攻略しても腑に落ちるからだ。昆虫怪獣という性質上、複数登場してもいい(実際その後に別個体が出現した)わけで、今後のシリーズを超えた再登場にも期待してきたい1体である。
軟体怪獣レヴィーラ
何だこれは…。こんなエログロ系のウルトラ怪獣は久々に見たが、4話連続で新怪獣を出せるからこその懐の深さか。一見するとクリーチャー然なのはウルトラ怪獣らしくないが、着ぐるみであることによる電飾の点滅や、ぐにゃぐにゃさとナックルウォーク、液状化を実写特撮で表現するなど伝統的な「ウルトラ怪獣」だからこその表現がなされていて一個の怪獣として止揚されていくような出来栄えがあった。
山怪獣ドルゴ
山そのものが怪獣という発想自体はそこまで珍しくなく、近年ではアニメとはいえ『SSSS.GRIDMAN』のゴーヤベックが印象深い。ニュージェネウルトラマンでも若干違うが最終的に山になったホオリンガ(『ウルトラマンX』)もいた。そういう意味画はドルゴは『ウルトラマン』のオープニングの影絵にいそうな佇まいもあってそれほど特徴的ではない…ところに背中からメガショットが生えている。SKaRDが実験用にメガショットを設置した山が実は怪獣であり、ドルゴはメガショットを自前の武装として使う(自在に操れるわけではないのだが)のだ。ウルトラ怪獣にはこういう生身とメカを組み合わせた怪獣は少なく、山という大自然に人為的な武器が「改造」でもない形で付属しているとなると空前ではないだろうか。初代マン怪獣然とした風貌ながら装備がSKaRDのものもあってちゃんと現代の「ブレーザー怪獣」として成り立っているのがポイント高いですよね。
オーロラ怪人カナン星人
『ブレーザー』における復活一番手がまさかのカナン星人。また、『ブレーザー』世界では初登場の宇宙人となる。『ブレーザー』世界だから宇宙人の存在も重く扱われるし、キャラクターも硬派…かと思いきや、宇宙人であることはヤスノブのリアクション以降軽く流された上、カナン星人本人もコミカルと言うかネタキャラっぽいところもあり、意外と面白い感じだった。…いややってることは「宇宙人がアースガロンを乗っ取って侵略に転用しようとした」という防衛隊的にはかなりシリアスな事件のはずなんですけど、一話完結的に処理していいやつだったのかこれ!?
↑実はこのソフビ、体の金色塗装箇所をミスっている…。
天弓怪獣ニジカガチ
アニミズムの権化としての「怪獣」として現れたのがニジカガチ!そのためかゴモラ的な王道怪獣フォルムの上に民俗的な文様が乗るという生物としての生態のある怪獣からは距離のある独特な外見。そしてそれが途方もない能力や強さに説得性を与えている。『ブレーザー』最初のボス怪獣にふさわしい佇まいと言える。一方で「御目見」に能力的なギミックは伴ってなかったり、あまりに強すぎるのは可愛げがなかったかもしれない。本質的に倒されない存在というのは理解できるのだが、「ウルトラマン」である以上は何がしかの攻略法があってこその「強い怪獣」だとも思うので。レインボー光輪についてもブレーザーがどうやってストーンを入手できたのかが描かれないのでそこのカタルシスは薄かったように思う。そういう意味では後に登場した怨霊態は「除霊」という攻め方をしてくれたので安心できたところはあったかもしれない。
宇宙怪人セミ人間・隕石怪獣ガラモン
セミ人間はセミ女、ガラモンはガモランやガラQといった形での再登場はこれまであったものの、そのままの形での再登場はかなり久々となる。地球侵略のためのエージェントという位置付けは変わらないが、音楽に惹かれてバンドを結成したセミ人間たちというのは、ニュージェネ的新解釈で面白く、愛する音楽を守るために終幕を用意するのも味があった。
ガラモンは『ウルトラQ』では複数個体や超巨大での登場もあったが、今回はウルトラマンと同サイズ。というかウルトラマンと戦うのも地味に初めてで、突起のある表皮が非常に硬いことが判明した。こういうのはウルトラマンに出られたからの部分だし、チルソナイトソードにも繋がっていて良いですね。
溶鉄怪獣デマーガ・溶鉄怪獣ベビーデマーガ
デマーガは『ウルトラマンX』1話にて新ウルトラマンには新怪獣を印象付けた名怪獣だ。その一方で、その後の出番はニュージェネでも多かったものの、それらではあまり怪獣らしさはなかったと言うか、いかにも昭和怪獣然とした風貌のせいか、ワン・オブ昭和怪獣的に「個性」が埋没してしまったきらいがある。『ブレーザー』は怪獣推しであることだし、今回久々に怪獣としての生態が見られるのではないか…と密かに期待するところ大であった。では実際にはどうだったのかと言うと、うーん…。ベビーデマーガは外見的にはデマーガとそこまで変わり映えしなかったし、赤ちゃんが都合よく等身大というのは怪獣の生態として見るにはあまりにお話や制作の事情に寄せているきらいがある。最期に地下深くに封印されるのはゴジラっぽかったけど、『ブレーザー』のデマーガで見たかったのはそういう画ではなかったかなあ。デマーガ、恵まれてるんだか恵まれてないんだかよくわからない怪獣である。
宇宙電磁怪獣ゲバルガ
シルエットとしてはベムスタータイプの怪獣だが、お腹を中心に三つの目が腹に付いているのがユーモラスなような、不気味なような絶妙さを醸し出している。腹周りにキバがちりばめられ、体全体が大きな口にも見える。地球の生き物のパーツがありながら絶対に地球生物ではなさそうな外見はまさしく「宇宙怪獣」にふさわしい。これでいて能力が電磁系なのも電子機器が氾濫する現代ならではの脅威さを描いている。…と見てくれや設定が満点な割に実際の印象としては「雑に強い」が先行してしまった。野人であるブレーザーに対してはヘンテコな見た目や電磁妨害は直接関係ないのに、ボス怪獣をやらされるので、盛られた能力に微妙に説得力を感じられなかった。能力に焦点を据えた1話完結の怪獣なら満足すぎるヤツだったと思うので、今後のシリーズでもっとお気軽に出てくれたらちょうどいいかもしれない。
月光怪獣デルタンダル
完全空中戦特化フォルムという思い切った怪獣。こういう着ぐるみ的にも変わり種を出せるのはまさしく『ブレーザー』の僥倖と言えるだろう。空中戦特化なので空中戦を満点でやりましたというだけでも潔くカッコイイ怪獣だったが、抜け殻なども見せてくれて生態面でも面白かった。
後には巨大怪獣としてデルタンダルBも登場した。こちらも別段悪いわけではなかったが、超巨大なのはブルードゲバルガもいたし、ソフビは小さい方しか出ていないのでブンドドで再現できないのがアイデアとしては難があったような気がする。
二次元怪獣ガヴァドン(A)
ガヴァドン(A)!?こいつって再登場可能…いやウルトラマンと戦える存在なのか!?しかしガヴァドン(A)はそれこそ田口清隆監督肝煎りの復活怪獣…どう料理できるのかお手並み拝見である。…結果としては、やはりガヴァドン(A)を再登場させるのには無理があっただろう。他の怪獣の落書きに比べるとシンプルすぎるし、オリジナルのガヴァドンがシンプル落書きから「怪獣らしさ」を入れ込むことでAからBに変容したことからすると、デザインがAのままであることにあまり意味もなく、こういった点はとにかくガヴァドン(A)を出したいという思いが先行しすぎたように思う。一方で落書きをただ大きくして行ったり、落書きを食べたりといった表現は画面を彩るアイデアとして面白かった。ウルトラマンとの戦いもただ弾力があるだけでだいぶ苦戦させていて他では見ることのできない戦いだったろう。まあ全編(A)の存在感だけで成り立ったような画面ではあったが、「怪獣が中心にいる」一つの形として良かったのではないだろうか。
幻視怪獣モグージョン
こんなん絶対おれが好きなやつじゃん!と放送前に思った割には弾けなかったという感想。『帰ってきたウルトラマン』あたりにいそうな風貌に、掌に触手があってアクターの手はそっちの方にあるという「いそうでいなさそうな現代的昭和怪獣」なのはアイデアとしても面白いんだが…。見た目が呑気そうななのに能力は幻視でしかもめちゃくちゃ強いという意外性にちょっと振りすぎたせいかもしれない。ブレーザーとの戦いだってエミ目線で生身のエミがブレーザーボコる方が印象に残るもんな。能力や演出が面白すぎた結果、第一印象と乖離してしまってピンと来なかったのかも。総集編でゲードスと掛け合いしてた方が「らしい」よねこいつは。
宇宙侍ザンギル
いきなりなんだがザンギルが登場する「さすらいのザンギル」はあんまり好きな話ではない。かつて倒した怪獣が復活する!からの謎の牢人めいた人物の導入からすると、徐々に謎を解き明かす話かと思うじゃん?開始10分で当のザンギルが全部真相(?)を喋ってしまって、物語というものは全くありませんでした…。そういう意味では『ブレーザー』には珍しくウルトラマンらしからぬ話運びではあったと思う。それはともかく、だからこそお話としてはザンギルのキャラクターに全振りしている。もはや特撮ではベテランと言える唐橋充が演じるだけでも存在感はムンムンとしているし、とにかく辻本監督の撮りたい・やりたいエッセンスというものが目白押しだ!そして思い出す感慨―そうだよな、クリエイターがやりたいことがあってそれに完璧に沿う形だからこそ「新怪獣」というものが出せるんだ。そんな単純な原理をザンギルは思い出させてくれた。だから、お話としての評価は必ずしも高くないものの、こういう「新怪獣だから出来る」を十二分に見せてくれたのは「面白い」ものではあった。
汚染獣イルーゴ
地下からぬっと長い首と竜のような顔が伸びてくるタイプの怪獣。スーツアクター表記があってちょっと驚いたが、場面によってはアクターが腕だけ入れて動かしているかららしい。時期的に『タローマン』の森の掟やガンダムヘッドを思い出す。着ぐるみ怪獣と比べると地味かもしれないが、目的が逆テラフォーミングという性質もブレーザーやアースガロンとの絡みも人型相手ではない面白さがあって気に入っている。惜しむらくはその性質上、立体化が難しくソフビ化もされていないこと(一応ブルードゲバルガに付いていると言えば付いているが…)。適当にいっぱいフィールドに生やしてブンドドさせたかった…!
宇宙汚染超獣ブルードゲバルガ
ゲバルガの感想で「雑に強い」という印象を述べたが、「雑に強い」部分をさらにパワーアップさせたのがブルードゲバルガだ!150メートルという超巨大サイズ!デザイン共通項がないイルーゴをゲバルガにそのまま生えさせた造型!イルーゴ一発でチルソナイトソードを撃破する圧倒的強さ!しかし最終形態(ファードランアーマー)に倒されるべくして倒されるポジション!これくらいボス怪獣演出側面で開き直っちゃったらもう「雑」は誉め言葉だろう。「ゲバルガさん今回はこういう役です」「これ全部俺がやるの!?まあこれが出来るのも俺だけかあ!」という楽屋ボイスが聞こえてくるような趣があって、「登竜門お疲れさん」と声をかけてやりたい怪獣だ。
炎竜怪獣ファードラン
ファードランアーマーのために出てきた存在…で終わってしまう怪獣。ちなみに玩具ではチルソナイトソードとの合体の都合上ディテールが色々あるが、劇中では完全にCGで表現されディテールらしいものはほとんど見えない。ブレーザーの相棒と事前に言われていてアースガロンとポジションを食い合うのではないかと危惧していたが、ほとんどバンク映像のみの登場しかなかったので相棒ポジが被るなんてことはなかった。ニュージェネでも相棒がタイプチェンジの力になるのはビクトリーやモンスアーマーなどの事例がありベリアロクなどはキャラクターもあって作中でもゼットらを振り回すなどの面白い出番も多かったが、ファードランは本当に何もなくただただもったいない。せめてデルタンダル相手なら空中戦の一角を担うとかあっても良かったと思うのだが…。
地底甲獣ズグガン
虫怪獣2体目。幼体と成体で多少デザインが違うのも虫というものに対するタガヌラーとは別のアプローチで面白い(とか言っていたら映画でタガヌラーにも幼体が出てしまった…)。生態としては人里に降りてくる熊というか、人間目線では間違いなく害獣だが、ズグガンはズグガンで生きるため・種族のためにやっているのであり、最期は弱点を突くのだがそれも仲間への呼びかけを利用するという、ズグガン目線で見るとこれほど残酷なものはないというもの。やり切れなさもあるものの、それらを飲み込んでこいつらには全滅してもらうというエゴでもあり、大人の判断でもあり、そういうものを魅せる怪獣の生態だった。
デザイン的にはブレーザー怪獣は昭和怪獣のエッセンスが多い中、ズグガンだけは近年怪獣っぽく、それでいて前傾姿勢な単純な二足怪獣ではない。あんまり昭和怪獣っぽさばっかりでもなという気持ちもあるので、平成以降っぽい怪獣はもっと欲しかったが、タガヌラーを経ての虫でありクリーチャーでありウルトラ怪獣であるという懐の深さは『ブレーザー』怪獣の世界を広くしてくれた。
どくろ怪獣レッドキング・冷凍怪獣ギガス
ここまで来るならドラコも連れて来れば良かったのにと思うメンツだが、『ブレーザー』では宇宙怪獣が特別なポジションなので是非もなし。登場回の「ソンポヒーロー」は損保会社の人がストーリーのメインなので、レッドキング・ギガスともあまりこの怪獣だからという出番ではない。一方で、街を破壊する怪獣・ブレーザー&アースガロンとタッグ戦を展開というのもあって、「敵役としての怪獣」としては満点の出番。こうしたポジションとしてレッドキングとギガスはまさに適役だった。この怪獣はどんな奴なのか?と言うのももちろん大事だけれども、ソフビでブンドドしたら楽しいも怪獣が持つ魅力なのだ。
宇宙爆弾怪獣ヴァラロン
爆弾をまき散らして爆発させるボンバーマンタイプの怪獣。なかなか厄介…と思っていたら爆弾は地球怪獣のおやつになることで無効化された…。いや…何で???「うおおお!地球怪獣の生態が役に立ったあああ!」よりもまず先に何で食べられるのか説明が必要なのではと感じてあまりノれなかった。
それはともかくヴァラロンがTVシリーズのいわゆるラスボス怪獣ということになるわけだが、外見も強さも大ボスというほどではなかった。もちろん強豪には違いないし、生命力だってずぶといものがあったが、主人のV99が撤退後は、割合普通にブレーザーにボコられて倒されるので。いや「普通」と言うと語弊しかないのだが、過去のニュージェネ最終決戦で起こった特別な演出に比べるとブレーザー光線は迫力に欠けると言うか、ようやくウルトラマンの「普通」をやったに過ぎないから、ヴァラロンが「特別」に倒されるに足る怪獣にもあまり見えないのだ。つまるところ、ゲバルガほど「雑に強い」感想もないが、中ボス怪獣が無理矢理ラスボス怪獣をやらされているような哀愁がある。
怪獣総評
まずはちょっと客観的っぽく。全体的にバラエティ感があり、似たような怪獣出しやがって~という感慨はそこまでなかった。強いて言えばタガヌラーとズグガンの昆虫要素くらいで、植物怪獣がいないのが若干気になったが、それこそタガヌラーやレヴィーラ、デルタンダル、イルーゴといった怪獣は出す数が限られていた過去のニュージェネ新規怪獣ではなかなかお目にかかれない顔だ。こういう懐の深さを感じられたのはまさに新規怪獣多めの恩恵と言って間違いない。
一方でブレーザー怪獣の特徴としては何の変哲もない怪獣が多いことも挙げられる。過去のニュージェネ新規怪獣は節目のボス怪獣が多めなこともあり、ウルトラマンサイドと因縁があったり、合体怪獣であったり、使い回すためには一風捻らなければならない境遇が多かった。ブレーザー怪獣は自然に存在する怪獣が多く、V99が使役する宇宙怪獣もV99の正体自体が出て来ないので、どの程度オリジナルなのかもわからない。別の宇宙の地球にいるかどうかわからないのはレヴィーラと個人に紐づけられたザンギルくらいだろう。そういう意味では、今後も再登場上等で創造されていると言えるだろう。
商業的価値についてはよくわからない。初報段階ではウルトラ怪獣アドバンスや通常ソフビでもギミック付と怪獣を売っていくことを期待させたが、怪獣アドバンスは結局4体しか出なかったし、ソフビのギミックもゲードスくらいだった。『ニュージェネスターズ』が始まると商品展開もほぼ過去のウルトラマンに移行してしまい、新作怪獣ソフビさえあまり出ていない現状*1なので、怪獣を押していく商品展開が継続するのかは何とも言えない。
ここからは個人的な感想に移るが、各怪獣感想の流れを見てもわかるように、どうも序盤に盛り上がりすぎて後半怪獣はそこまで…といった感じ。序盤で怪獣に関する手数を多く出したのは良いが、その後はそのアイデアを追い越すような怪獣は出なかった。もっともこれは中盤以降にチルソナイトソードやファードランアーマーなどブレーザーの販促にまつわる要素が増えてきたのもある。各評ではヤケクソに褒めたが、ブルードゲバルガなどは端的にこの被害者とも言えるだろう。また、再登場怪獣については改めてその怪獣を掘り下げるよりもストーリー面に注力する方針に見え、それがハマった回もあったがデマーガはもっと違う形での活躍を見たかったのが本音でもある。そういった意味では本作でさえ、怪獣に関しては決して自由ではなかったのかもしれない。
「『ブレーザー』怪獣は現代的怪獣を示せるのか?」というテーマはどうだろう。ブレーザーの新怪獣が色々と魅力を見せてくれたことは申し分ないが…結局現代的ってどういうことなんだろう。個人的には辻本監督回の怪獣は昭和怪獣風味に偏りすぎていて、全体のバランスを崩してしまっている印象がある。私は平成ウルトラ世代なので、ズグガンみたいな怪獣がもう少しいればピンと来ていただろうなと思うが…。その一方で、ブレーザー怪獣は恐らく次作品以降も何度も何度も場合によっては10年後だって再登場があることが見込まれる怪獣たちだ。今後の再登場では『ブレーザー』での初登場以上に輝くことだってあるかもしれない。それはブレーザー怪獣が『ブレーザー』からは脱臭されていくことになるのと同時に、この頃のウルトラマンにはこういう奴がいたよなというイメージを形作っていく。個人的にブレーザー怪獣が「現代的」とは言い切れない思いがあるものの、ブレーザー怪獣は「ブレーザー怪獣」ではなくなることで「現代」を代表する怪獣になっていく未来がある。「現代」→ブレーザー怪獣じゃなく、ブレーザー怪獣→「現代」なのだ。何だか頓智で化かされたような気分だな…。
そういうわけでせっかく記事にしたのに矛盾するようだが、ブレーザー怪獣は単体では評価しきれなかった。今後数多のウルトラ怪獣とともに揉まれていく中でどういうヤツらだったかが浮き彫りになっていくだろう。
*1:何ならクロニクル期の怪獣ソフビ展開は『トリガー』や『デッカー』のが頑張ってた気が…