志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

室町幕府

山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世』(中公新書)の感想

近年は畿内戦国史の研究進展が著しく…と毎度言っている気がするが、実際そうなのだから仕方ない。また、日本中世史ブームというのもあり、界隈での狭い話かと思いきや、徐々に世間的な注目も集まってきているようだ。今回発売され、紹介する山田康弘『足利将…

天野忠幸編『戦国武将列伝7 畿内編【上】』(戎光祥出版)感想

戦国史研究。戦国時代は日本の歴史上人気が高い時代の一つだ。摂関藤原氏や執権北条氏を誰一人知らないような者でも、戦国武将を一人も知らないのはまずあり得ないと言っていいほど、現代に生きている者にとって戦国時代のコンテンツは日常にある。中世から…

木下昌規『足利義輝と三好一族―崩壊間際の室町幕府』(中世武士選書・戎光祥出版)の感想

昨年、木下昌規先生は『足利義晴と畿内動乱―分裂した将軍家』を上梓された。その時は「義晴で一冊が出るとはすごいなあ。でも義晴の死後や評価について書かれていないなあ」などと思ったものだったが…。後から思うと迂闊だった。まさか足利義輝本を用意され…

亀田俊和・杉山一弥編『南北朝武将列伝 北朝編』(戎光祥出版)の感想

戎光祥出版では『室町幕府将軍列伝』、『室町・戦国天皇列伝』と過去に列伝本が2冊上梓されていた(他にもマンガで読むシリーズで信長家臣列伝、徳川家臣列伝もある)。もっとも将軍や天皇であれば、過去にも似たような本はあった(近年では『室町幕府全将軍…

木下昌規『足利義晴と畿内動乱―分裂した将軍家』(中世武士選書・戎光祥出版)の感想

近年の畿内戦国史研究は目覚ましい成果が上げられているが、当然ながら室町幕府研究もその一角を形成している。ではその実像はどうであったのか、という点は最近『戦国期足利将軍研究の最前線』が出たので、これまでの通説を見ながら最新像を手堅く、それで…

黒嶋敏『天下人と二人の将軍:信長と足利義輝・義昭』(平凡社)の感想

ここ10年ほど畿内戦国史を彩る風景はだいぶ様変わりしている。信長上洛以前の権力(室町幕府・細川京兆家・六角氏・畠山氏・三好氏)の実態解明が進んだことで織田信長の上洛、あるいは織田政権の成立を画期と見なす時代観は大きく動揺し、再考を迫られてい…

山田康弘『足利義輝・義昭 天下諸侍、御主に候』(ミネルヴァ書房)の感想

『足利義輝・義昭』に何を見出したいと思っていたのか いやあ出ましたね。山田康弘先生による『足利義輝・義昭』!もう発売から2ヶ月経っておいて「出ましたね」も何もないのですが、著者といい題材といいいつ読んでも「出たな!」という重みがある。足利義…

永禄13年(元亀元年・1570)織田信長が上洛を求めた諸大名勢力について

元亀元年(1570)に行われた織田信長の朝倉義景攻めは信長の人生を語る上で外せないイベントの一つである。と言っても、朝倉攻めそのものが画期と言うよりも、この最中に織田信長の同盟者であった浅井長政が信長より離反し、以降織田信長は長期にわたって、…

村井祐樹『六角定頼 武門の棟梁、天下を平定す』(ミネルヴァ書房)の感想

発売されるとわかった時から話題騒然だった本です。何せ、六角氏は室町時代・戦国時代に侮れない勢力を誇りながら、この手の比較的一般向けの評伝を欠いていたからですね。タイトルは六角定頼ですが、実際には章を割いて、前2代の高頼・氏綱、後2代の義賢・…

4人の足利義氏―貴種足利氏が持つ権威と反権威

「何と!足利義氏は4人いた!」 「なななな何だってーーー!!!!」 となる人は多くないと思う。一般人なら「そもそも足利義氏って誰だよ」と一蹴されてしまいそうである。本質的には知識マウント以外の何物でもない記事だが、「4人もいたのか、知らない○人…

「1565年6月19日付フロイス書簡」に見る永禄の変

さて、先ごろ『フロイス日本史』に見る永禄の変への道 - 志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』という記事を製作し、永禄の変への経過について何があったのか、考察を加えた(この記事の前提ともなるので、是非ともお読みいただきたい)。その時は『フロイス…

足利義輝側近・一色藤長と三好氏

去年『戦国遺文 三好氏編』の補遺ページをざっと見ていたら、ある書状が目に入ってきた。固より古文書など読めるわけがないが、「石力」「入魂」「(一色藤長)」などの文字が見え、どうやら石成友通と一色藤長が親しい関係にあるらしいことは何とか読み取れ…

『フロイス日本史』に見る永禄の変への道

永禄の変とは永禄8年(1565)5月19日、室町幕府将軍足利義輝が三好義継、松永久通、三好長逸らの襲撃を受け殺害された事件である。戦国時代の足利将軍は影が薄い存在のようにも捉えられがちだが、この事件は織田信長上洛のきっかけとなっただけに知名度も高…