志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

ウマ娘 プリティーダービー 5th EVENT ARENA TOUR GO BEYOND -GAZE-<DAY1> 感想

 ウマ娘のライブイベントには興味があったものの、基本的に首都圏の開催だと敷居を感じていた。しかし!5thイベントは首都圏以外、大阪にも来るということでこれはチャンスがあると期待が高まっていた。とは言え、実際にはどういう内容をやっているのかわかっていなかったわけで、名古屋公演を配信で1日買ってみることにした。ちょうど、チーム・カノープスがメインかつ開催場所も名古屋で大阪の前段階としてどうなるのか興味深かったからだ。まあ過去の経験からして配信というのは、生ライブよりも半分~3割くらいの体験しかできないのだが、最初なんだからそれくらいで感じをつかむのがちょうどいいのではという考えもあった。そういうわけで感想を綴っていきたい。

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山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世』(中公新書)の感想

 近年は畿内戦国史の研究進展が著しく…と毎度言っている気がするが、実際そうなのだから仕方ない。また、日本中世史ブームというのもあり、界隈での狭い話かと思いきや、徐々に世間的な注目も集まってきているようだ。今回発売され、紹介する山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世』が新書という形態で出来したのもこの風潮とは無縁ではあるまい。

 ところが、その一方で本書は近年の畿内戦国史の解像度の高まりともまた一線を画す。基本的な構成としては山田康弘氏の論稿「戦国期足利将軍存続の諸要因」(『日本史研究』672号、2018年)で示された枠組みや世界観をベースに『足利義稙』(戎光祥出版、2016年)・『足利義輝・義昭』(ミネルヴァ書房、2019年)で示された事象を再構成していくものとなっている。一方で、最新研究の反映という点はそれほどでもない。巻末の主要参考文献を見ると、山田氏の論稿や著書が多く並ぶ一方で、近年の幕府研究で挙げられているのは、谷口雄太『中世足利氏の血統と権威』(吉川弘文館、2019年)くらいである。他には現代政治学の著書も目立つ。
 本書は近年の研究が明らかにした事実を網羅し羅列していく内容ではないからだ。足利将軍や室町幕府が一般には「力の時代」というイメージも強い戦国時代に、なぜ滅亡しなかったか、存在意義を保っていたのかを明らかにする。しかして、その方法は現代の国際政治を支える力学を戦国期の日本列島にも適用していくというものを採る。それだけに現代に生きる読者にとって、戦国期将軍・幕府の存在意義というものは非常にわかりやすく示されていると言える。
 もっともこれだけでは政治理論に傾いてしまうので、内容としては味気ないものとなってしまう。そこで本書では、実際の史料の一節を引用して、戦国時代当時の認識や足利将軍の肉声や人脈を折に触れて象徴的に提示する。このおかげで、足利義尚・義稙・義澄・義晴・義輝・義昭らの人格が具体的に想起される。理論的な将軍・幕府の存在意義の展開という枠組みと、生身の将軍の人格への肉付けを上手に両立していてとても読みやすく、一般層にも勧められる内容を持っている。

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ウルトラヒーローズEXPOサマーフェスティバル2023の感想

 令和5年(2023)8月18日に池袋サンシャインシティで開催されたウルトラヒーローズEXPO2023サマーフェスティバルに行ってきました。今回は往路に新幹線を選んだところ、15日に台風で東海道は運休の上、16日・17日も何やかんや運休だったり遅れがあったり果たして行けるのか冷や冷やしましたが、何とか18日は無事だったのでほっとしました。私とウルトラヒーローの邂逅はやはり天の導き…

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 昨年は入れ替え制になってることを失念していて微妙に苦労した(?)んですが、今回は午前中は別の予定を入れてたのでセーフ。開演前から行列を作ってると、子供の声に混じって中国語が聞こえてきたのが、(たまたまかもしれませんが)以前との違いを感じました。初めてウルフェスに行った時は一定数の女性層に驚いたものでしたが、これからは日本のイベントでも中国人も一定数いるのがデフォルトになる、のかなあ?

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【ネタバレ有】『ウルトラマンレグロス』感想(付ファーストミッション)

※この記事中には作品の内容に関するネタバレを大いに含みます。初視聴の驚きや感動を体感したい方にはおススメしません。

 ウルトラギャラクシーファイトシリーズで新ウルトラマンとして登場したウルトラマングロス。とはいえレグロスは満を持して登場したわけではなく、いきなり囚われの身として現れ、解放されると誰も知らないキャラクターたちの回想とアブソリュートディアボロとの因縁を匂わせながらレオ兄弟と共闘するといういきなり「皆知ってるよな!?」というデビューを果たした。その時は「え?設定面だけで済みそうな回想に着ぐるみの実態が伴ってる?贅沢!」と「いや誰なんだ君ら…」という思いが同居していた。そして今度こそ、満を持して(?)『ウルトラマングロス』の配信となった。『運命の衝突』で仄めかされた過去がいよいよ見せられるのである。
 そういう『ウルトラマングロス』はやや特殊な位置付けの作品だ。ギャラクシーファイトシリーズでレグロスが初登場したことを思うと、これはギャラファイのスピンオフ作品とも言えるし、逆に『レグロス』の主役であるレグロスがギャラファイに出ることで他の主役と共演・共闘しているとも捉えられる。ただ、こういう新作に際して色々な仕掛けを施せるようになってきたことは、作品の可能性を広げるし、面白いとは思っている。相変わらず、『運命の衝突』からは1年開いてしまっているし、ギャラファイシリーズの次回作がさらに先になってしまいそうなのは懸念材料ではあるが…。

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新作ウルトラマンで新怪獣が増えるのは歓迎すべきことなのか?

 7月から始まるウルトラマンブレーザーはそれまでの列伝・クロニクル系番組『ウルトラマンニュージェネレーションスターズ』がニュージェネ10周年ということでニュージェネウルトラマンをフィーチャーしたことや、『トリガー』→『デッカー』と続いた平成三部作リブートの流れとは打って変わって、過去シリーズをあまり意識していないように見える雰囲気を漂わせている。もちろん実際に放送されてみたら違ったということも多々あるだろうが、ウルトラマンブレーザーだけを見ても、過去のウルトラマンの縁者であったりその力で変身することはなさそうだし、現状ではタイプチェンジする気配もない。ニュージェネウルトラマンがシリーズの一部であることを強く意識し、また玩具展開の関係上過去のウルトラマンや怪獣の力を用いていたことからすると、急にそのような装いを外してきた印象を受ける。
 中でもすでに確定的なことは、新規怪獣がすでに多いことだ。ここは目玉として意識されているようで6月12日のプレミア発表会でも14体もの怪獣が登壇し、ガラモン、ガヴァドンA、カナン星人、デマーガ以外は全て新顔であった。この段階でここまで新規怪獣が多いのはニュージェネ史上空前で間違いない。『ブレーザー』は新規怪獣の登場に注力している、とは確実に言えるだろう。
 新規怪獣の充実―これへの反応は好意的なものしか見ない。ニュージェネシリーズでは着ぐるみの使い回しが常態化しており、『マックス』以前のウルトラマンは新しい話には新怪獣が出るのが基本だった。そういった「あった過去」へ復旧しているのを具体的に提示されたことは好意的な反応と無関係ではあるまい。しかしながら、水差しや無粋は承知の上で、これは本当に良いことなのかということはこのタイミングだからこそ語っていきたいと思う。危惧を先取りしておくと「あるべき未来」である。

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『機動戦士ガンダム 水星の魔女』感想

 ガンダムには元々興味があったわけではない。子供の頃はテレビマガジン派だったので、ロボットとしての容姿は知っていたが、子供時分にはシリーズを視聴することはなかったし、視聴習慣が付かなかったので20歳を迎えても基本的に観たことは全くなかった。そんな私にとって転機になったのはコンパチヒーローシリーズの復活だ。コンパチヒーローとはウルトラマン仮面ライダーガンダムが共演するゲームシリーズで、80年代に隆盛したがその後途絶えていた。厳密に言うと平成4年生まれの私とも接点はないのだが、10年代にリバイバルで復活したことは個人的にも大きいものがあった。何かと言えば、私のメインフィールドとも言うべきウルトラマンはその頃コンシューマーゲームの流れが途絶えており、仮面ライダーガンダムとの共演であっても、コンシューマー媒体でゲームが出るのは画期的だったのだ。特に当時ウルトラマンを引っ張っていたのはゼロで、ゼロをプレイアブルにしてメインキャラとして扱える媒体は今でも当時復活したコンパチシリーズが強い。そうして購入した『ローストヒーローズ2』で20代中盤にして初めてガンダムと触れ合うことになった。そこからガンダムにのめり込むことになり、一部の映画や平成三部作、『ガンダム00』を履修してとりあえずいっぱしのガンダムファンを名乗るに至った。
 こうなると当然ながら、リアルタイムで展開するガンダムにも興味を持つことになる。そうして初リアルタイム作品となったのが『鉄血のオルフェンズ』だ。しかし、『鉄血のオルフェンズ』は最終的に主人公の陣営が全滅エンドを迎えてしまい、それまで観てきたガンダムからも落差があったことから、有体に言えばショックを受けてしまった。終わってみればそういう物語だったと納得はできるのだが、子供はやっぱり子供で世界を変えられませんでしたというオチはあんまりではなかろうか。
 そのトラウマを引っ張っていたため『水星の魔女』とも当初は距離を置いていた。しかし、伝え聞く限りではどうも評判が良い。そこで、アマプラでの配信を利用しておっかけおっかけ、1期最終話(12話)までにリアルタイムに追いついた。そして、本日2期も最終回を迎えた。『水星の魔女』は今後も展開があるかもしれないが、とりあえずTVシリーズは完結したので感想記事を認めようとする次第である。

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「千勝」は誰の子か?―丹波守護代家内藤氏継承再考

 先ごろ『戦国武将列伝 畿内編【下】』が出版された。以前述べたようにこうした本が出ること自体が画期的だったが、それ以上に各執筆者がここぞとばかりにあまり知られていない史料や独自の解釈を開陳していき、その画期性は想定以上だ。そうした中で一つ気になったものとして、丹波守護代家内藤氏の家督継承の解釈がある。「松永長頼」を執筆されたのは飛鳥井拓氏であるが、飛鳥井氏はその項にて、内藤国貞の死を契機に浮上した丹波守護代家内藤氏の後継問題について「女系男子である長頼の息を立てたところで解決するとは考えにくい」とし、内藤氏の家督に就いた千勝を国貞の遺児と位置付けたのである。
 内藤氏の当主や系譜の問題については、近年馬部隆弘氏が整理されており、馬部氏は千勝を長頼の子と位置付けている。すなわち、飛鳥井氏は馬部氏の研究を引用しながらもそれとは相反する解釈を新しく提示したことになる。個人的には馬部説に慣れてしまっていたので、それを受けつつも従来説を採った飛鳥井説には新鮮さと当惑とがある。飛鳥井説は松永長頼と内藤貞勝(千勝が成人した姿とされる)が親子ではないことから、永禄初期の若狭・丹後もまきこんだ戦争について、長頼と貞勝の対立関係まで提示しているが、本記事ではそれはさておき、問題の基幹となる一次史料を読み直すことで、この長頼と千勝の関係について考えていきたい。

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