志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

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ウルトラマンゼノン論―颯爽登場で終わったウルトラマンは未来をつかみとれるのか

 ウルトラマンゼノンとは『ウルトラマンマックス』第13話「ゼットンの娘」において、マックスに続くもう1人のウルトラマンとして登場したウルトラマンである。しかし、『ウルトラマンマックス』は原点回帰を強く志すシリーズであったため、ゼノンはマックスに次ぐサブ戦士としての活躍が期待されたものの13話以来再登場を果たすことなく、『マックス』の最終回を迎えてしまった。最終回には一応登場はしたが、最後の戦いには加わらず、地球から去るマックスを宇宙で出迎えるだけであった。ゼノンは歴代ウルトラマンの中でも最も活躍が少ないウルトラマンになってしまったのである。
 なぜ、ゼノンは華々しく登場しながらこのようなことになってしまったのか、今後ゼノンが活躍する機会はあるのだろうか?

 ウルトラマンゼノンは『ウルトラマンマックス』第13話「ゼットンの娘」で登場したが、この回で新武器マックスギャラクシーが登場することもあり、ゼノンの登場は放送前の早い段階から告知はされていた。
 公式サイト(hicbc.com:最強!最速!!ウルトラマンマックス)によれば

ウルトラマンマックスのピンチに突然現れ、最新武器「マックスギャラクシー」の召喚能力をウルトラマンマックスに授けた、謎のウルトラマン
必殺技は「ゼノニウムカノン」
身長:47メートル
体重:3万6000トン
出身地:M78星雲のどこか

である。「謎のウルトラマン」などと紹介されているが、出身地からゼノンもマックスと同郷のウルトラマンであると思われる。それにしても「謎のウルトラマン」という表記からは、具体的なことは何も考えてない臭がプンプンしますね。身長と体重はマックスより1メートル、1000トンずつ小さく、マックスよりは基礎体力が劣るような印象を受ける。
 さて、そのゼノンが初登場した『マックス』13話である。
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 ゼノンのスーツアクターを務めたのはフランス出身のケフィ・アブリック氏!映画『仮面ライダー響鬼7人の戦鬼』では仮面ライダー凍鬼のスーツアクターも務めた国際派アクションマンだ。
 さらに『マックス』はオープニング映像の最後に登場怪獣の名前が紹介されるのだが…
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 何と今回は2段構えになっており、「変身怪人ゼットン星人 宇宙恐竜ゼットン 登場」の次に「ウルトラマンゼノン 登場」が出る!文句なしに期待を煽るカッコいい演出であり、この回はあの「宇宙恐竜ゼットン」がウルトラシリーズで久々に復活する回だが*1ウルトラマンゼノンの登場もまた大きなトピックであることを示しているのである。
 では、ゼノンの初登場を見て行こう。
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 ゼットン怪獣の猛攻を受け、必殺技マクシウムカノンもゼットンシャッターという鉄壁によって退けられたウルトラマンマックス…このまま初代ウルトラマンのように倒されてしまうのか…
 しかし、そこへ!
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 赤い火の玉が飛来した!中から現れたのは…
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 ウルトラマンゼノン!
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 ゼノンはファイティングポーズを取り、倒れているマックスに代わってゼットン怪獣と戦い始める。
 ゼノンの声を演じているのは龍谷修武氏!ウルトラシリーズでは他にウルトラマンジャスティスや『大怪獣バトル』のメトロン星人の声を演じている。個人的な話だが、私はゼノンの声は爽やかな声だと思い込んでいたので、映像でエフェクトのかかった野太い声を聞いた時は驚いた。
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 ゼノンの腕をゼットン怪獣の腕が止めるが、押し切るゼノン!ゼノンのパワーを感じる場面である。
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 力比べに勝った腕の勢いままに足を蹴り上げキック!ゼノンの体術レベルの高さは随所に見られる*2
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 ゼットンに殴られ、その勢いのまま回転し倒れるゼノン!だが、ゼノンは負けない!
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 キックを加え、ゼットン怪獣の攻撃を華麗な側転で避けると、飛び蹴りを浴びせる!素晴らしいアクション!
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 ゼットン怪獣を痛めつけトドメとばかりに必殺技。ゼノニウムカノン!どうでもいいが、モーションもエフェクトもウルトラマンティガのゼペリオン光線の色変えのようにも見える…
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 しかし、ゼノニウムカノンは鉄壁ゼットンシャッターによって防がれてしまう。マックスはマクシウムカノンを浴びせ続け、ゼットンシャッターにヒビを入れたところで力尽きていたが、ゼノンはゼノニウムカノンが力不足と見るや…
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 左手から波動を放ち、虚空から「何か」を召喚する!
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 さらに右手から光線を撃つと、「何か」は形がはっきりしはじめた。新武器マックスギャラクシーである!
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!?
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 しかし、マックスギャラクシーを召喚し、後は来るだけというところでゼットン怪獣がゼノンを攻撃!武器召喚中に攻撃はお約束破りだぞ!
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 ゼノンがゼットン怪獣の猛攻を受けており、行先を失ったマックスギャラクシーは、力を失ってゼノンとゼットン怪獣の戦いを見ているだけだったウルトラマンマックスの右腕に宿っていく。
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 その間もゼノンはゼットン怪獣の攻撃を受け、思い切りよく吹っ飛んでいく。
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 キャプでは伝わりにくいが、マックスにマックスギャラクシーが宿ったことを見たゼノンは「えっ!?」とでも言ってそうなリアクション。マックスギャラクシーがマックスに宿ったことは明らかに「想定外」とでも言いたげである。
 マックスギャラクシーを入手したマックスはギャラクシーカノンを放ち、ゼットン怪獣を撃破!その後、ゼノンと顔を合わせ、カメラはゼノンのビームランプに収斂して行く。
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 マックスがカイトと話す時によく使う空間。
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マックス「ウルトラマンゼノン」
ゼノン「正体不明の宇宙戦闘機が地球に来ている」
マックス「宇宙戦闘機?」
ゼノン「敵は4機だ。地球を頼む」

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 手短にすぎる会話を終え、ゼノンは赤い球体になって去って行く。ちなみにこの後カイトがチームDASHとの会話で話したところによると、ゼノンは「宇宙戦闘機は追跡の途中で消えた」ということも伝えていた模様。先述のマックスとの会話では一切触れられていないのに一体どこで伝えたんだろう。なお、この会話の中ではカイトがうっかりウルトラマンゼノンと発言し、「誰?」という空気が一瞬漂うが、ミズキ隊員が「マックスを助けてくれた宇宙の勇者ね」と引き受けてくれる。宇宙の勇者…いい響きだ…
 ゼノンが伝えた消えた宇宙戦闘機を巡り、『マックス』13話「ゼットンの娘」は14話「恋するキングジョー」に続いて行くことになるが、14話ではゼノンが出ないので割愛する。
 以上がゼノンの初登場と初陣であるが…どうなんだろうこれは。
 いいところと悪いところははっきりしている。いいところはもちろん、マックス以上にパワフルかつ大振りなアクションを見せたことである。特にマックスとの対比で言うと、ゼットン怪獣の怪力に押されやや劣勢だったマックスに比べると、明確にパワーで勝りほぼ対等にやり合ったのは第一印象としてはとても良い。ゼットンシャッターに遮られたゼノニウムカノンを早々にあきらめ、マックスギャラクシーを召喚した判断力もマクシウムカノンを撃ち続けたマックスの態度とは好対照とも言える。今後もマックスを助けに現れ、共闘したとしても引け目を感じることは全くない。そう思わせるような戦いぶりを短い時間の中でもじゅうぶんアピールできていた。
 悪いところは…、マックスギャラクシー召喚後の無様ぶりである。というか、放送前は「マックスギャラクシーをマックスに授ける」と書いていたはずだったが、この演出だと全然授けてないんですが?*3どう贔屓目に見ても自分が使うために召喚しようとしたら邪魔が入り他人に勝手に使われたようにしか見えない。大振りなアクションはゼノンの魅力と書いたが、ゼットン怪獣に吹っ飛ばされたり、マックスギャラクシーを入手したマックスへの大袈裟なリアクションなどは逆に笑いを喚起さえする。しかもこの後ゼノンは失地挽回せず、マックスとの会話に入ってしまうため、視聴者への印象はむしろ悪い方で固定されてしまう危うさもある。
 ただ、これはあくまで初陣であることに注意したい。『マックス』にはまだ2クールもお話が残されており、ゼノンが活躍する余地はじゅうぶんあるのだ。ウルトラマンゼノンの戦いは始まったばかりだ!

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 しかし、ウルトラマンゼノンの次なる戦いは始まらないまま、半年が過ぎようとしていた…。ゼノンが次に視聴者の前に姿を現したのは何と、最終回である第39話「つかみとれ!未来」であった。
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 オープニングのスーツアクタークレジットにケフィ・アブリック氏の名前が見えたため、わかる人には今回ゼノンが登場することは予測できた。ちなみに今回は放送前に「ゼノンも登場!」といった宣伝やネタバレは全くなく、登場怪獣紹介の後の「ウルトラマンゼノン 登場」もなかった。13話と違い、ゼノンが出るかどうかなどトピックでも何でもないことが窺える。
 ストーリーは最終回らしく、力を失ったウルトラマンが人間の作戦によって復活し、最強の敵を倒すという王道ストーリーである。しかし、このストーリーの中ではゼノンは全く出なかった。
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 そして身体が限界を迎えたウルトラマンマックスはカイトと分離して別れを告げ、夕陽に向かって飛び立っていく…
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 地球を離れ宇宙空間で待っていたのは…
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 ウルトラマンゼノン!!!
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 地球を去ったマックスを出迎えたゼノンはマックスとともに飛び去って行くのでした*4。おしまい
 …え?出番これだけ?
 マックス最終回は前述の通り、人間がウルトラマンを救い戦う話であったのでゼノンがその中に登場する余地はなかった。ゼノンが出ないのはストーリー上致し方なかったのだが、それでも最後に宇宙空間でマックスを出迎えたことにより、同僚であるマックスと地球人類が最大のピンチに陥る中、宇宙空間から見ているだけというとんでもない印象を与える出番となってしまった*5
 そしてここまでが『ウルトラマンマックス』に登場したウルトラマンゼノンの全てであった(そりゃ今回が最終回だし)。
 なぜこのようなことになってしまったのだろうか。具体的に言えば、ゼノンはなぜ『マックス』14~38話まで一回も出ず、最終回でさえこのような出番に終わってしまったのか、である。
 理由としてはまず、『ウルトラマンマックス』は一話完結主体、怪獣主役のウルトラシリーズとしては伝統的・王道な作品スタイルを取っていたことが挙げられる。このスタイルの中ではウルトラマンはお話の最後に怪獣を倒す役割を持ち、それ以上の存在ではない。実際、ウルトラマンマックスが言葉を発した、すなわちキャラクターとしてお話の中で動いたのも第30話「勇気を胸に」など少ない話数に限られる。要するに怪獣を倒すのはマックス一人で充分であり、二人目のウルトラマンはそもそも存在する必要性がない。ゼノンは13話で登場したが、ここで登場必要性があったのは新武器マックスギャラクシーの登場に説得性を持たせるためであった。しかし、ゼノンが登場に至るまでにゾフィーやメロス*6の登場が検討されていたように、この役割はどうしても新ウルトラマンでなくてはならないというわけでもなかった。その程度の役割を新ウルトラマンに担わせたことが不幸の始まりだったと言えよう。
 さらに言えば、ゼノンは公式サイトで「謎のウルトラマン」と書かれたように、キャラクターを膨らませる設定らしい設定がなかった。マックスの仲間ではあるが、単なる同僚なのか、何か共通する体験を持つ親友なのか。クールなのか、熱さを持っているのか、どこか抜けているのか。キャラ設定としてはどれも基本的な事柄であるにも関わらず、今なおゼノンはどれもはっきりしないのである。これでは、スタッフの誰かがゼノンをお話で使ってみようかとはなかなかならない。とは言え、基本的にウルトラマンにはそういう、ある種「通俗的」なキャラ設定はされなかったものである*7。マックスもそのような設定は希薄である。しかし、マックスなどの「主役ウルトラマン」は前述の通り、怪獣を倒していれば毎回の出番は担保されるからそれで充分なわけである。ゼノンはそうはいかない。何かしらの取っ掛かりがなければ使われない(それまでのウルトラマンにおけるサブ戦士を見ても「上司」「親」「兄弟」など関係性を規定し、お話の中で動かせる属性はちゃんと持っていることが証左でもある)。そして、事実使われなかったのである。

ウルトラマンマックス 10 [DVD]

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 『ウルトラマンマックス』放送終了後、昭和ウルトラシリーズの続編である『ウルトラマンメビウス』が始まったが、世界観が違うこともあり、マックスも、そしてもちろんゼノンも出番はなかった。以来、不遇をかこっていたウルトラマンゼノン(とマックス)であったが、ついに転機が訪れた。
 平成21年(2009)公開の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』への出演が決定したのである!特報にゼノンの姿を確認したウルトラファンは驚愕し、あまりの事態に「これはゼノンではなく、メビウスの見間違えではないか?」と言う者まで出る始末であった。しかし、そこに映っていたのは間違いなくゼノンであった。この特報ではマックスの姿はなく、マックスに先駆けて映画出演が決まるというゼノンにとっては狂喜乱舞の事態であった(その後、マックスの登場もちゃんと明かされた)。
 脱獄したウルトラマンベリアルを止めるべく、戦う光の国のウルトラマンたち!
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 大画面で戦うゼノンとマックスの雄姿!(どうでもいいけど、ゼノンの方が目立ってない?)
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 ネオスとセブン21がベリアルを押さえ戦う中、ゼノンは足を高く上げるキックを披露…するが、当たってねえ!
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 しかし、ベリアルのキックを受け…
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 思いっきり吹っ飛んでいく…
 ファイティングポーズや打点の高いキック、吹っ飛びの思い切りの良さと、光の国のワン・オブ・ゼムでありながらも、きちんとゼノンのこれまでの戦いぶりを敷衍した演出に感動を覚えないゼノンファンはいなかったことだろう。
 しかし…
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 この映画でもゼノンらはベリアル相手に退けられプラズマスパークのコアを奪われてしまい、凍りついてしまうのだった…。ゼノンが初勝利を果たすことはなかった
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 ウルトラマンゼロらがベリアルを倒し、プラズマスパークが復旧すると復活する光の国のウルトラマンたち。ゼノンはマックスの肩に手を載せ、マックスと頷き合っており関係性が垣間見える。
 ウルトラマンゼノンの銀幕デビューは「光の国のその他」という扱いから出るものではなかったが、「忘れられていなかった」「光の国の一員と認められた」*8という成果は一応あった。

 だが、ゼノンの戦いはこれで終わりではなかった。『ウルトラ銀河伝説』の続編である映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』への出演も決定!図らずもこの映画ではノアとメビウスも登場しており、ハイコンセプトウルトラマン*9全員が(直接の共演はないものの)登場することとなった。さらに『てれびくん』2011年1月号によれば、ウルトラマンたちがダークロプス軍団と戦うという。ゼノンが初勝利するチャンスがようやく訪れたのである。
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 ゼノンとマックスは序盤、別の宇宙に旅立つウルトラマンゼロにエネルギーを与える場面でもモブトラマンに混じり姿を見せた。
 そして、終盤カイザーベリアルが送り込んだ100万体のダークロプスが光の国を襲う!
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 光の国のウルトラマンたちが飛び立ち、光線を放つ!…あれ?ゼノンとマックスは…いないね…
 そして場面は、アナザースペースにおけるウルトラマンゼロとその仲間たち(ウルティメイトフォースゼロ)の戦いに移って行った…。アナザースペースでの勝利の後、石坂浩二氏のナレーションが入る。

ベリアルが送り込んだ大軍団もウルトラ戦士たちの活躍で壊滅。こうして宇宙の平和は守られたのである

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 こっちの引き上げていくカットでは、ゼノンとマックスがちゃんといる*10。でももう戦い終わってるじゃん。
 これはつまりどういうことか…
 何とゼノンともどもウルトラマンたちがダークロプス軍団を撃退していくシーンは撮影されたものの、編集段階でカットされたのである!*11
 ゼノンの初勝利が映像で描かれることは結局なかったのだ!*12
 …
 そして平成も終わろうとする30年現在この映画が、ゼノンが登場する最後の映像作品となった。

 こうして、ウルトラマンゼノンは登場10周年も何事もなく過ぎ去り、マックスが『ウルトラマンX』に客演して活躍する中、特にフィーチャーもされなかった。
 ゼノンにこれから先活躍がもらえるチャンスはあるのだろうか?
 再登場を果たすには、何よりこの作品のこの場面にはゼノンが必要だ!ということが不可欠である。
 しかし、ゼノンは不幸にしてどういうシークエンスであればゼノンが必要なのか?という取っ掛かりがほぼなきに等しい(これは偏にマックスの同僚以上の設定を持たせなかった『マックス』スタッフの責任と言える)。
 ゼノンの設定は完全にマックスに依存していると言っていいが、その肝腎のマックスもTVシリーズの1話完結色が強いせいで、客演に足る強烈な個性には乏しい(これは『マックス』が人間と怪獣を主役にしたことの証左であり何ら恥ずべきことではない)*13。ゼノンが必要ならば、それは同時にマックスも必要とする。『ウルトラ銀河伝説』や『ゼロ THE MOVIE』出演の文法もこのようなものであっただろう。
 ゼノンが美味しい再登場を果たすには、既存の設定を生かすよりも何らかの新しい側面の開発が必要だと言える。どうせメビウスと似ているのがネタになるなら親戚だったという設定にするとか、実はアストラとマブダチとか…。『ウルトラマンX』第14話で宇宙商人としてマーキンド星人がポッと再登場を果たしたところなどを見ると、アナザースペースで暮らすゼロにセブンからの贈り物を届ける運び屋として出るのもいいかもしれない(すみません、これは冗談です)。
 とは言え、今更ゼノンにそんなリソースを割くことがあるのかというのは非常に疑問である。ゼノンは歴代ウルトラマンと比べて特に人気があるとは言えない(これまでの扱いからして当然と言えよう)。そんなキャラクターを10年以上経ってフィーチャーすることにどういう意味があるのか。熱意を持って説明することが出来るだろうか(私には出来ません)。よっぽどのゼノンファンが製作スタッフにいれば、まだ機会もあるかもしれないが、そんなことがあればまさしく「第三番惑星の奇跡」レベルの出来事である。期待はしたいが、報われることを望むのは出来ないだろう(これまでもゼノンはイベントやショーにたまに出ているので、ピンポイントで素晴らしいキャラ付けをされている可能性はある。見知ってる方がいれば情報求む)。
 結果、ゼノンは初登場が不幸だったことにより、その後も不幸の十字架を背負い続けることになった。デザインがカッコいいだけに惜しいことである。ここまで読んでくれた人は今後ゼノンのことを少しくらいは気にかけてやってほしいものである。「最後まであきらめず、不可能を可能にする、それがウルトラマンだ!」
f:id:hitofutamushima:20180810182024p:plain<最後まで他人のネタかよ…






補論 ウルトラマンゼノンの商品化
 ウルトラマンゼノンは出番も活躍時期も少ないが、商品化数自体は極少というわけでもない。
 まず、定番のソフビ人形!ウルトラマンマックス』放送当時に「ウルトラヒーローシリーズ2005」にて17センチサイズのソフビ人形が発売*14。このソフビ人形は平成21年(2009)の「ウルトラヒーローシリーズ」にてナンバー35で定番入りを果たしている。このソフビ人形はデザイン画から原型を製作したと思われ、実際のスーツにある頭部背面のヒレの形状を完全再現していない難がある。「ウルトラヒーローシリーズ」は平成25年(2013)の『ウルトラマンギンガ』放送に合わせ、ソフビのサイズごとリニューアルされてしまい、その後ゼノンの14センチサイズでのソフビ化は日本では実現していない。「日本では」というのは中国では売られているということである。ゼノンファンの有志は輸入するのもいいかもしれない(今後日本で売られる可能性は低い)。
 なお、食玩のいわゆる「対決セット」のソフビ人形でもゼノンは商品化されている。「プレイヒーローVS ウルトラマン対決セット 来襲!!最強の敵編」でウルトラマンゼノンVSゼットンという組み合わせで売られた。「対決セット」シリーズは長寿シリーズで一部のウルトラマンや怪獣は再販もされるが、ゼノンに関してはこの一度しか商品化がなく貴重である。
 ガシャポンではこれもまた『マックス』放送当時の「HGウルトラマン46 新たなる力編」において、右腕を掲げるウルトラマンの定番登場ポーズで立体化されている。ただし、この時期のHGウルトラマンシリーズはアニメ風の造型が不評の時期でゼノンのフィギュアとしてもクオリティは必ずしも高くなかった。
 食玩においては前述した「対決セット」以外にも、リアルかつ安価ミニサイズのフィギュアシリーズ「ハイパーディティール ウルトラマンマックス」にもゼノンがラインナップされた。このシリーズは本来5種類くらいのラインナップでウルトラマンを中心に商品化するシリーズだが、『マックス』にはウルトラマンが二人しかいなかったため、エレキングレッドキングゼットンといった怪獣たちも同時に商品化された。そうであるので、なおさらゼノンはスルーできなかったと言えよう。ゼノンはゼノニウムカノンのポーズで立体化され、造形のクオリティは高かったが、コスト削減のためかマックスと目の色が同じ黄色で塗られてしまい、違和感は拭えないものになってしまった。
 また、指人形でも商品化されている。
 以上は、いずれも放送当時の商品化であり、その後のゼノンは商品化から遠ざかった。少ない例外が「マスコレウルトラマン 光の巨人コレクションVol.4」で全12種のうち一つとしてゼノンの生首マスクが商品化された。だが、このシリーズはほぼ全てのウルトラマンのマスクを商品化できており、Vol.4は最終弾であった。ゼノンは最後まで後回しにされたとも言える。
 これらがゼノンの商品化の概ね全てである。当時のカードダスとかガム付属のカードやシールなどでゼノンが商品化されていたかもしれないが、正直そこまで調べる熱意と気力はなかったので割愛する。何というか、どの商品でも微妙に惜しさがあるのがゼノンらしい(酷い)と言えないこともないのかもしれない。

*1:今でこそゼットン登場に有難味はないが、ゼットンウルトラシリーズ登場は『ウルトラマンパワード』以来11年ぶりだったのである

*2:この点だけでもゼノンのスーツアクターにアブリック氏を起用したのは大正解と言わざるを得ない

*3:今でも公式の紹介文では「マックスにマックスギャラクシーを授けた」などと書かれることが多いが、映像を見る限り誤った情報である

*4:ゼノンはメビウスと初代マン型でありながら身体は赤を主体に銀のラインが入っているなどの共通点があるため、メビウスが番組バトンタッチに現れた演出だという幸せな誤解をした視聴者もいた。実際ゼノンは画面に鮮明に映る時間が短く、ここまでほとんど登場しなかったためそう思ってしまうのに妥当性があるのが悲しい

*5:もっともゼノンが助けに入っていればそれはそれで空気が読めていないので詰んでいる

*6:内山まもる氏の古典名作ウルトラマン漫画『ザ・ウルトラマン』に登場するオリジナルウルトラマン

*7:過去形であることに留意されたい

*8:マックスとゼノンが光の国の出身と明示されるのはこの映画からである

*9:ウルトラマンネクサス』、『ウルトラマンマックス』、『ウルトラマンメビウス』の3シリーズを総合する呼び名。DVD-BOX発売時に名付けられたがあまり定着しているとは言い難い

*10:絵コンテ集でも該当シーンには「マックス、ゼノンあり」とメモ書きされていてここで忘れないように意識はしていたらしい

*11:『ゼロTHE MOVIE』ブルーレイBOXの特典である未公開映像では、合成の途中で製作が放棄された「ウルトラマンたちがダークロプス軍団を撃退していくシーン」を見ることができる

*12:結果的に『ウルトラ銀河伝説』よりも実りがない登場になった

*13:マックスが個性的じゃないってそんなことないだろと思われそうなので、重ねて説明しておくがここでいう「客演に足る個性」は強さを見せつけるとか面白いリアクションをするとかそういうことではない。『ウルトラマンX』での客演を例にとれば、ゼロの客演は「鎧を纏うウルトラマン」という共通性、ギンガやビクトリーの客演はスパークドールズや過去のウルトラマンの知識からの怪獣との共存を示す役割、ネクサスの客演はそれまでの客演の流れを受け「副隊長」をフィーチャーするという『X』の主人公である大地とエックスに積極的に関わる属性があった。マックスにはそのような属性に乏しく『X』の客演もマックスを付け狙うスラン星人を媒介にして成し遂げた言わば属性としては「二次的」なものであった。この差異がここでいう「客演に足る個性」があるかということである

*14:ちなみにこのコラムタイトルにもなっている「颯爽登場」はこの時ソフビ人形の外箱に書いてあったもの。マックスは「最強最速」と書かれていた