志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

『ウルトラマンゼロ&ニュージェネレーションヒーローズ大全科』レビューと感想

 ウルトラマンゼロ&ニュージェネレーションヒーローズ大全科』秋田書店)は8月20日月曜日発売です!
 …のはずが、予約特典のブロマイド付きのものを予約したら、8月17日には発送され、発売日の2日前である18日には届きました。なぜなのかはよくわかっていませんが、一足先に読むことが出来ましたので、このムックには色々と思うところもあり、記事としてまとめてみることに致します。

 さて、いきなりですがこのムックが画期的であるのはどの点にあると思われますか?
 それはずばりウルトラマンゼロをテーマにしたムックであるということです!
 ウルトラマンゼロは平成21年(2009)の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』において鮮烈なデビューを果たし、現時点での最新映画『劇場版ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』でも活躍し、この期間を断続的に活躍し続けているウルトラマンです。一方でゼロは主役の新作TVシリーズがなく、主役期間中も新作の制作が色々な媒体で行われ、その後は複数のウルトラシリーズを横断的に登場を続けているのもあって、充分な人気を獲得しているにも関わらず、これがあればゼロがわかるというようなものに恵まれていませんでした。ゼロのムック自体は超全集シリーズなどで出ていましたが、超全集は単体の作品に関するムックであるため、シリーズ全体を見通せない欠点がありました。
 また、昨年の平成29年(2017)はウルトラセブン生誕50周年ということもあり、多くのムックが発売されました。

ウルトラセブン 完全解析ファイル (別冊宝島 2577)

ウルトラセブン 完全解析ファイル (別冊宝島 2577)

 流石は日本が誇るヒーロー、ウルトラセブンといったところでしょうか。しかし、これらのムックには過去の40周年、45周年の時のムックとは違った構成のものもありました。TVシリーズの『ウルトラセブン』全49話を紹介し、当時のスタッフや出演者へのインタビューを掲載するなどが通常のウルトラセブンのムックとしてあるべきなのだろうと思われます。余力があれば、平成ウルトラセブンシリーズや『ULTRASEVEN X』に触れられることもあるでしょう。ウルトラセブン50周年のムックでは、それらの外伝シリーズに加え、ウルトラマンゼロの特集記事が掲載されているものも多く見られました。ウルトラセブンの名を借りて、ウルトラマンゼロのシリーズを横断する活躍をまとめたムックが実現したとも言えるでしょう。
 今回の『ウルトラマンゼロ&ニュージェネレーション大全科』はウルトラセブンの名を借りることがないムックであり、前年からの流れに位置付けることもできるでしょう。「ゼロのムックが出た」これだけでも秋田書店には大感謝ですね*1

 前置きが長くなりましたが、もう少し前置きがあります。私がこのムックに何を期待していたかです。まとめると以下のようになります。

  • ウルトラマンゼロシリーズをまとめた資料性はどの程度か:「シリーズをまとめる意義」というのは単純にそれを「一つの物語」として見せるのもそうですが、ウルトラマンゼロをはじめ、ベリアルやウルティメイトフォースゼロのヒーローたちは作品毎に新しい武装、新しい技、新しい設定が追加されていっており、既存の超全集などではそれらを一手にまとめるということが出来ていませんでした。シリーズを横断的に扱えるのなら、そこらへんをちゃんとまとめられるのではないかという期待です。また、単純にこれまで存在はしつつも、表に出ることがなかったスチール写真なども魅力的に思え、どの程度あるのかというのも期待でした。
  • ウルトラマンゼロのシリーズ」をどう規定しているのか:発売前のサンプル画像で『うーさーのその日暮らし』にウルティメイトフォースゼロが客演したところまで扱っているのがわかり、「そこまでやるのか」と衝撃でした。ウルトラマンゼロが一般化していった契機として『ウルトラマン列伝』の放送は無視できず、『列伝』の中ではゼロシリーズに絡むような総集編もあり、またゲームの『大怪獣ラッシュ』でウルティメイトフォースゼロとベリアル軍が戦ったこともありました。「ゼロシリーズ」と一口に言ってもどこまでをフォローできるのかは編者の裁量です。
  • ニュージェネレーションヒーローズのページはどこまであるのか:このムックをずっと「ゼロのムック」と呼んでいますが、正確には『ウルトラマンゼロ&ニュージェネレーションヒーローズ大全科』です。ただ、表紙でも「ニュージェネレーションヒーローズ」は特殊ロゴではなく目立ちません。また、紹介でもウルトラマンゼロがメインテーマであることが読み取れ、ニュージェネレーションヒーローズ要素はオマケだと推察できます。ではそれはどの程度なのか、『ウルトラマンギンガ』にはジャンナインが出ていますが、関係性は整理されるのか、その点も楽しみなところでした。

 要点が少ない割に長くなりましたが、こんなところでしょうか。で、実際にどうだったかと言いますと

  • ゼロシリーズの資料性は残念ながら希薄:発売前にウルトラマンゼロビヨンドの技を全て紹介するページが公開されていたので期待していたんですが、何とベリアルやウルティメイトフォースゼロどころか当のウルトラマンゼロすら断片的にしか紹介がされません。ゼロシリーズの紹介はビジュアルでストーリーを追い続ける格好になっており、その中でベリアルやウルティメイトフォースゼロなどは登場した時点で三面図や身長・体重設定、キャラ紹介などが簡単に触れられるのみです。技についてもストーリーの節々で使ったものがその都度紹介され、「シリーズとしてまとめる」利点と私が思っていたものは残念ながらありませんでした。ジャンナインなどは最近ウルトラサインが判明したため、サインが掲載されるのではないかという期待もあったのですが…、また次の機会ですね。
  • ゼロシリーズとして扱うのは本編映像作品のみ:『大怪獣ラッシュ』は最初から望み薄と思っていましたが、『ウルトラマン列伝』も全く扱っていません。構成上『ウルトラゼロファイト』から直に『ウルトラマンジード』に繫げており(ベリアル復活から直に宇宙崩壊の構成になっているのはインパクトあってそれは良かったです)、『映画監督坂本浩一全仕事』で坂本浩一監督が語られていたように『ウルトラファイトオーブ』で『ゼロファイト』後のストーリーが整理された結果、『ウルトラマン列伝』関係の話は「なかったこと」になったため、ムックでも触れなかったのでしょうか?(この理由は単なる類推ですので、他に理由があるのかもしれません)であるとしても、拾われなかったのは惜しい気持ちが強いですね。
  • ニュージェネレーションヒーローズの資料としてはコンパクトながらまとめられている:ニュージェネレーションヒーローズのページは60頁ほどあります。内容が大充実しているわけではありませんが、シリーズ紹介やキャラクター、登場怪獣を網羅するなど押さえるところは押さえています。各ウルトラマンの技を網羅しているのもうれしいところですね。それをゼロシリーズの方でやれよ。

 何だか文句ばっかり言ってるように見えますが、それでもなお私はこのムックに満足しています。ゼロシリーズの資料本としては期待を裏切られたのですが、ストーリービジュアルブックとしての完成度の高さ、カッコよさはピカイチだと確実に言えます。
 買って読むまで私はこのムックに誤解がありまして、こういう本だとは思わなかったという部分があるわけです。それは何かと言うと、このムックは全176頁なのですが、最初の100頁はスチール写真と本編キャプ画像によるゼロシリーズのストーリーを追いかける部分でその後60頁でニュージェネ資料集、残りで後藤正行さんや岩田栄慶さんのインタビュー記事や簡単なデザインアートを掲載するという構成です。ムックの半分強はストーリービジュアルブックでとして成り立っているという点ですね。
 このストーリービジュアルブックぶりが素晴らしい!目で見るものだから文字で完全に表現できないのがもどかしい!初出と思しきスチールと本編の台詞*2によって彩られるストーリーは本編映像以上に雄弁です。私は『キラーザビートスター』の最終ページ、上からウルトラ兄弟、バット星人、ウルティメイトフォースゼロの別々の画像を合成したページが好きですね。
 後藤正行氏はウルトラマンゼロのデザイナー、岩田栄慶氏はウルトラマンゼロスーツアクターを務められたお方です。二人のインタビューを掲載するのはもちろんよろしいのですが(後藤氏のインタビューがあるのにデザインアートが1ページ、ゼロとベリアル関係だけで済まされたのも悲しかった)、後藤氏はもとより、岩田氏も『ジード』以降はインタビュー記事がそこそこありますので、厳しいことを言うなら目新しさが欲しかったですね。個人的な希望を語るなら、長年ウルトラマンゼロを演じつつもこうしたムックには御無沙汰な宮野真守氏であるとか、坂本浩一氏・アベユーイチ氏・おかひでき氏のようなゼロシリーズを撮られた監督にゼロやベリアル観を聞くとか…まあ企画には通る通らないありますので勝手な意見なのは承知しております。
 結論を言えば、ゼロシリーズ資料集ページがあれば完璧だったというところでしょうか。とは言え、ゼロファンにとってゼロシリーズをカッコよく追憶するためのものとしては3000円を払う値打ちはあると言えます。来年はウルトラマンゼロが登場して10周年、ウルトラマンベリアルにとってはダークネスヒールズの展開も控えており(どこまでどれだけやれるかはわかりませんが)、ゼロのテーマにした新しいムックが出る可能性は大いにあります。不満点はそっちに持ち越しにして*3まずは純粋に祝い楽しむのも乙なのではないでしょうか。

*1:流れ上、「ゼロ単体のムック」とばかり言っていますが、ニュージェネレーションヒーローズを総じて扱ったムックとしても恐らく初めてで画期であると言えます

*2:ここでウルトラマンの台詞が大幅に引用されることそのものはゼロシリーズの成果の一つです

*3:不満点言ってるの私だけじゃん。自己暗示的一節