志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

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『ウルトラマンデッカー』総合感想

 去年の今頃に『ウルトラマントリガー』の総評を書く中で、新作は「NEW GENERATION DYNA」になるのではという予想をしたが、実際に『ウルトラマンデッカー』は『ウルトラマンダイナ』を強く意識する作品であった。『トリガー』が引いた引き金を『デッカー』がどのように受け継ぎ、また後に繋げようとしているのか、備忘的にまとめておきたい。

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ウルトラマンダイナ』と『ウルトラマンデッカー』

 『ウルトラマンデッカー』には結局『トリガー』と異なり「NEW GENERATIN DYNA」なる副題が付くことはなかった。しかしだからと言って『ウルトラマンダイナ』と関わりがないわけではなく、所々にダイナ要素を反映していた。デッカーのデザインはダイナを意識したものだし、敵怪獣はダイナ怪獣だったりダイナ怪獣も想起させるもので、終盤にはダイナ本人の客演・共闘もあった。こうした取り込みは、表面的には前作『トリガー』における『ティガ』要素の採り入れと同じで、『デッカー』もまた「NEW GENERATIN DYNA」であったと言える。
 個人的にはやはりモンスアーガーが着ぐるみ新造を引っ提げて登場したことは見逃せない。別の記事で熱く語ったのでここでは繰り返さないが、今後もコンスタントに再登場を重ねてほしい。他にダイナ怪獣がそのまま出た例としてはスフィアやグレゴール人、ゾンボーグ兵などがある。実はこいつらはいずれも『ダイナ』当時品なようで物持ちいいですね。


 他にダイナ怪獣のリバイバル新怪獣としてはネオメガスやテラフェイザーがいる。ネオメガスはネオザルス、テラフェイザーはデスフェイサーを元ネタにしている。ネオメガスは流石に改造元のグルジオの容貌が残っていたが、それが逆に冒涜さの演出になっていたりして…。

 スフィア合成獣は昭和怪獣にクリスタル付ければ出せるぜ!と予想していたが、予想に違わずスフィアゴモラ、スフィアレッドキング、スフィアメガロゾーアなどが登場した。新しいスフィアの怪獣としてはスフィアザウルス、スフィアジオモス、マザースフィアザウルスが登場。かつてのスフィア合成獣がネオを冠名にしていたことを思うと、「スフィア~」というネーミングは野暮ったさもあるが、致し方ないところか。特にスフィアザウルスは何度も登場したが、腕にボリュームがある怪獣だったおかげで、1話怪獣にも関わらず程よい強敵感を維持できたのは良い怪獣を作れたと感じる。

 もう1体くらいダイナ怪獣の復活を見たかった気分もあるが、スフィア怪獣のおかげか『トリガー』のような「NEW GENERATIN TIGA」なのに昭和怪獣多くね?な感慨もなく、ハネジローの存在もあって画面のダイナ要素が少なくなることはなかった。ここは『ダイナ』ファンとしては安堵したところでもある。
 そしてウルトラマンダイナの客演。ダイナは『ウルトラ銀河伝説』以来、TV最終回で行方不明になった本人の出番が多く、変身するアスカ・シンの出番も伴っていたことに特徴があった。しかし、今回の客演はそれらに比べると控えめと言うか、アスカの出番がないどころか声すら発しなかった。ダイナはあくまで未来で戦う別のウルトラマンで、デッカーとの共闘もたまたま時間を超えるワームホールが空いてそこを通ってきただけ。こういうがっつりと、ではない、本当に助っ人的な客演は近年では珍しい。その一方でダイナは明らかにメッセージを発しており、ファイティングスタイルもダイナらしいものになっていた。たとえアスカが出なくともダイナはダイナであった。個人的には、TVシリーズ初期の体がスケルトン状(死語)になる変身バンクやタイプチェンジバンクを再現してくれたのはとてもうれしかったです(ミラクルタイプへのチェンジバンクもあれば完璧だった…まあミラクルタイプは10勇士でもやったと言えばやったが…)。

 その一方でストーリー自体は『ダイナ』をなぞったわけではない。火星開拓の話なんてなかったし、デッカーは基本的に地球で戦った。今回のヴィラン枠のアガムスはテラフェイザーを操ったが、モネラ星人とは何の関係もない。スフィアによって閉ざされた地球の閉塞感でネオフロンティアスピリットなど発露のしようもなかった。その一方で、1話完結を基調にしていたのはかつての平成ウルトラマンを思い起こす部分ではあった。
 とりあえずは『デッカー』の『ダイナ』要素をここで一旦〆ておくことにしよう。

ウルトラマントリガー』と『ウルトラマンデッカー』

 『ウルトラマンデッカー』にはもう1つの重要な側面がある。『トリガー』の正統な続編であったことだ。制服や装備は変わったが、防衛チームのGUTSセレクトも続投を果たしており、これはシリーズでも初めてとなる。また、『トリガー』の主人公であったマナカ・ケンゴは何と計6話も登場し、デッカーとトリガーは何度も共闘した。『デッカー』に与えられたミッションとしては『トリガー』の防衛チームを使い回すことで、世界観を継続するかどうかは裁量であったようだが、結果的には『ティガ』→『ダイナ』同様の道をたどったことになる。
 ただし、『トリガー』はかなり灰汁の強いシリーズでもあった。結局どういう理路だったのかよくわからない演出も多かった(ここらへん説明してくれるはずの超全集はどこ…?)し、一部のキャラクターはリアリズムというよりわかりやすさに振りすぎていて濃い。普通に続編にするだけだと『トリガー』のカラーに乗っ取られてしまう。実際に8話はカルミラを復活させるという『トリガー』最終回を覆したこともあり、かなり『トリガー』みの強い1本となった。『デッカー』では『トリガー』をどう処理するべきなのか?『デッカー』の回答は便利すぎるアキトらは基本的に火星に隔離して接触を断ち(それでもスフィアのカード作るとかヤバいことしてたけど…)、『トリガー』要素はほぼケンゴ1人に絞らせた(ユナやGUTSセレクトの装備、ウルトラデュアルソードなども『トリガー』要素ではあるが)。
 そして『デッカー』でのケンゴが異様な頼もしさを持つ先輩として映えたことは、ケンゴというキャラクターをより地に足の着いたものにしていった。振り返れば『トリガー』最終回でケンゴはエタニティ・コアを鎮めるため眠りについていた。その眠りを解いて再び活躍させるというのはどういうことなのか?これは『エピソードZ』からの流れもあるが、ウルトラマンであり光であり闇であり人であるケンゴを「人」として再定義していった、そういうケンゴが『デッカー』でのケンゴになった。もちろん今後の作品にも出しやすくするという現実的な側面もあろうが、『トリガー』の先として『デッカー』があることで、「人である」側面に『トリガー』で示し得なかった回答を肉付けしていったのはキャラクターの充実としては非常に大きいものとなった。
 結果的に『デッカー』は『トリガー』の胡乱とした部分を堅実に再構成していくことになった。そしてそれはかなり実のあることであったと言えよう。

そして今『ウルトラマンデッカー』

 かつて私はかつてのシリーズを擦っていくことに志の高さを見出せないと述べたことがある。ニュージェネティガ→ニュージェネダイナ→ニュージェネガイアと続いていくだろうことが、シリーズに実りをもたらすのだろうかと。この危惧はとりあえず『デッカー』では回避されたと思う。『ダイナ』と『トリガー』という別の要素を取り込みながらそれに乗っ取られることなく、コロナ禍のメタファーとでも言うべき閉塞した地球、それへの逆恨みの感情、これらとどう付き合い昇華していけるのか、きちんとした自我を以て答えた。質の高い1話完結を基調とするTVシリーズがまた出来るとも思っていなかった(もちろんそれと引き換えに失ったものもあるが)。『デッカー』はまさに今だからこそやれるウルトラマンに間違いなくなった。「いい作品」が作られたのである。
 その一方で、『デッカー』がシリーズの中で何を残せるのかという点は疑問がないわけではない。防衛チームやニュージェネ×平成ウルトラマンといった要素は『Z』や『トリガー』から受け継いだバトンであるし、『ダイナ』や『トリガー』要素の料理が上手かったのもそれ自体は今後にバトンを渡せるものでもない(今後10年以内に新しい『ダイナ』リブート作品や『デッカー』とは異なる『トリガー』続編が作られる可能性は低いので)。また、これは『ティガ』について述べたこともあるが、原点に返るということはそれに代わる個性が希薄になるということでもある。『デッカー』自体はそこまで遺産を残していないのである。あえて言えば『デッカー』が何を残せたのかは、次のウルトラマンが『デッカー』から何を受け取るのか、あるいは受け取らないのかによってはっきりする。次回作が『デッカー』から受け継いだものが何になるのか、それが「いい作品」や志とどう関わっていくのか、引き続き見守っていきたい。

 そして気になるのはもう1つ。今年のクロニクル番組はウルトラマンニュージェネレーションスターズ』であり『ウルトラマンクロニクルG』とはならなかった。商品展開を見ても押されているのはニュージェネレーションウルトラマンたちでガイアの影は全くない。どうも今年からの新ウルトラマンはニュージェネガイアとはならなさそうである。ニュージェネ10周年を大体的に推していくものになるのだろうか(ってどんなだそれ!?)。
 個人的にはやはりTDGでセットという思いがあるので、ダイナまでやってガイアやらないの!?ガイア怪獣のソフビは!?と思ってしまう(志の話とは全く別の問題で)のだが、いかに考えるべきか。今年はニュージェネ10周年でこの機会は二度とないのは事実だ。そのように考えると、平成三部作は9月放送開始だったこともあって、25周年というのはむしろ年初ではなく年末にかけてかかっていくことに気付かされる。つまり、来年ガイア25周年&ニュージェネガイア展開をやるのではなかろうか。ニュージェネTDGという流れはガイアが終わったら次どうするのという問題があったが、こうすれば絶え間なく展開することが可能になる。
 すなわち、予想としては以下のようになっていくのではないか。
2023年…ニュージェネ10周年
2024年…ガイア25周年
2025年…ゼロ15周年
2026年…コスモス25周年
 こうすればとりあえず今後数年は毎年記念展開で続けていけることになる。いや別に記念展開を望んでいるわけではないのだが、ガイア怪獣もコスモス怪獣もちゃんとフォローしてほしいじゃないですか。