志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

【ネタバレ有】『ウルトラマンレグロス』感想(付ファーストミッション)

※この記事中には作品の内容に関するネタバレを大いに含みます。初視聴の驚きや感動を体感したい方にはおススメしません。

 ウルトラギャラクシーファイトシリーズで新ウルトラマンとして登場したウルトラマングロス。とはいえレグロスは満を持して登場したわけではなく、いきなり囚われの身として現れ、解放されると誰も知らないキャラクターたちの回想とアブソリュートディアボロとの因縁を匂わせながらレオ兄弟と共闘するといういきなり「皆知ってるよな!?」というデビューを果たした。その時は「え?設定面だけで済みそうな回想に着ぐるみの実態が伴ってる?贅沢!」と「いや誰なんだ君ら…」という思いが同居していた。そして今度こそ、満を持して(?)『ウルトラマングロス』の配信となった。『運命の衝突』で仄めかされた過去がいよいよ見せられるのである。
 そういう『ウルトラマングロス』はやや特殊な位置付けの作品だ。ギャラクシーファイトシリーズでレグロスが初登場したことを思うと、これはギャラファイのスピンオフ作品とも言えるし、逆に『レグロス』の主役であるレグロスがギャラファイに出ることで他の主役と共演・共闘しているとも捉えられる。ただ、こういう新作に際して色々な仕掛けを施せるようになってきたことは、作品の可能性を広げるし、面白いとは思っている。相変わらず、『運命の衝突』からは1年開いてしまっているし、ギャラファイシリーズの次回作がさらに先になってしまいそうなのは懸念材料ではあるが…。

monsterspace.hateblo.jp

 そんな『ウルトラマングロス』だが実際はどうだったのか。『運命の衝突』に繋がっていくのでオチは読めていたが、その中でもキャラクターの魅力をきちんと見せてくる作品といった印象だ。以下、一点ずつ述べていきたい。

  • コスモ幻獣拳の師匠たち

 インストラクターフォロスとトゥバーン!奔放な兄と生真面目な弟とでそりが合わないが、二人ともレグロスを弟子として気に入っており、マグマ星人との戦いでは共闘する。「お前が俺に勝ったことがあったか?」「負けたこともないが?」というやり取りなど、もう全てがベタなのだが、直球すぎるのが清々しい。お姉さんポジションのスピカはタイツパンツから伸びる足がまぶしい…ではなくて、レグロスのヒロイン的な位置が良い(なおさらディアボロは許されない)。マスターアルーデはマグマ星人の艦隊を一撃で殲滅したり、ディアスの正体を見破って相打ちに持ち込むなど、本調子ではない中での格の高さが上手い。アルビオとファルードは個別のキャラクターはそこまでだが、アクションが面白い。一時間に満たない中でここまでキャラクターを立て、彼らが全滅することに感情移入させられたのは素直に大したもので、価値がある。「誰?」とか思っていたのが嘘みたいである。
 彼らについてはデザインライン自体も面白い。生の動物っぽさよりも仮面的な顔に民族衣装のような服装はこれまでのウルトラ宇宙人ではあまり見なかったものだ。これを戦隊キャラっぽいと評することも可能だろうが、ウルトラの歴史で言うとかつてウルトラ漫画で獣人のような見た目の宇宙人が出ていたことを思い出させる。そういえばすぐ下で触れるディアスも内山まもる漫画で出てきそうな要素を詰めた外見だ。ウルトラ銀河伝説とは別のラインでかつてのウルトラ漫画の実写化のような趣を醸し出しているのがコスモ幻獣拳の師匠たちとも言えるだろう。

  • ディアス

 姿が明かされた時からディアボロじゃんとばかり言われていた男。前編では真面目に修行に取り組んだり、レグロスとの良い兄弟弟子ぶりを見せていて「これが本当にディアボロなのか?」という一面もあったが、やっぱりディアボロでした。全部芝居だったわけだが、正体はディアボロという観点で見ると、前編からちょくちょくディアボロっぽい仕草を織り込んでいるのが面白い。こういったところはアクターの大村さんの演技力でしょうね。ただ、一つ気になったのは石田彰声にあんまり意味が感じられなかったところ。作り手としてはいかにもな裏切りボイスということなのかもしれないが…マスターアルーデが大塚明夫(オウシブラック)、ディアボロ小川輝晃(黒騎士)という君たち戦隊シリーズで牛の戦士じゃんというネタに比べると若干弱い。
 ディアスがこれで終わりなのはちょっともったいないので、実はディアス自体はディアボロの変装ではないところで実在していたとか、後々倒されそうになったディアボロがディアスの姿になって「お、俺はディアボロに乗っ取られていただけなんだ…」と同情を誘ったところをディアボロに戻って騙し討ちにしたり(鬼畜か?)、そういうギミックは今後に期待したい。

  • アクション面

 今回は本当にカンフーリスペクトで体術を基本にした戦いがほとんどだ。これはウルトラマンの中でもかなり特異なことである。ウルトラマンは格闘術にも長けているが、必殺技は光線で一度の戦いで技を次々披露することも珍しくない。実際、坂本監督のウルトラマンでのアクションで個人的に醍醐味を感じているのも、流れるようなアクションの中に自然に光線技を組み込んでいく部分が大きい。こういった部分は戦隊やライダーではできないので、ウルトラマンの特性を最大限生かしているように感じられるのだ。なので、今回の交戦技自体が存在しないウルトラマンのアクションというのは、これまでなかったことではあるが、可能性を開いたのか、生かすべき長所を消してしまったのかは判断しにくい。もっとも拳法ウルトラマンであるレオでさえ実は光線技も多彩なので、長いシリーズの中体術だけで戦う作品が出来したのも意義があることではあろう。…でもやっぱ光線技はウルトラマンの肝でもあるので、体術メインにしてもウルトラマンならではの部分は大事にしてほしいよなあ…。

 そしてウルトラマングロス ファーストミッション』。こちらの時系列は『運命の衝突』、そして『トリガー』15話後となる。全体で20分弱なので時間的にはあっさりめだが、この中でレグロスのギャラクシーレスキューフォース加入、海外ウルトラマンたち活躍、リブットの帰還、そしてレイブラッドの暗躍…とやることをきっちり詰め込んでいる。正直言うと、ただ一つの話が長かった『運命の衝突』よりも3部構成で1つの話は3~4話にまとまっていた『大いなる陰謀』の方が見やすかったので、今後ギャラファイやその派生シリーズが続くにしても今回の『レグロス』『ファーストミッション』方式の方でやってほしい思いはある。
 それはともかく、実際に観て「へええ!?」となったのは敵のメンツ。まさかダリーが巨大化してウルトラマンと戦うとは…(巨大化させた意味あった???)。リブットかと思ったらにせウルトラマンだったとか、レグロスの相手がシャドー(!)だとか面白いマッチアップを見せてもらった。海外ウルトラマンも『大いなる陰謀』とは違ったアクションでまた活躍が見られて何よりだ。ここは上で書いたように『レグロス』で不満な部分をきちっと埋め合わせ…ってレグロスお前光線技使えるんじゃねーか!何だか騙された気分だ(『レオ』当時も急に光線技使いだしたレオはこんな感じだったのだろうか)。
 そして、『レグロス』では完全に過去の話だったが『ファーストミッション』はレイブラッドの復活という、おそらく今後に向けた大きなネタが仕込まれた。レイブラッドがアーリーベリアルと合流するのか、はたまたギャラファイにレイモン参戦があるのかなどどう作用するのか気になる…(ダリーの謎の巨大化もレイモン巨大化への前振りなのかもしれない)。だから数ヶ月以内にはギャラファイ4弾目のPVくらいは見たいよな!
 あと細かい話だが、ベリアルに負けた雪辱をお前(レイブラッド)に返す!するパワードや、復活させられたギエロン星獣に同情的なセリフが挟まったり、急にかつて賛否両論になった演出や再登場にフォローを入れてきたのは意外だった。こんな細かいことをする意欲があるのなら、次回作でいきなりゼアス周りの演出もフォロー入るかもしれないですね…。

まとめ

 オリジナル登場人物だらけで展開する30分×前後編な『レグロス』、共演編ながら20分にぎゅっと内容を詰めエピローグでもありプロローグでもある『ファーストミッション』。ギャラファイシリーズが生み出したものとしては、ギャラファイの旨味もそれぞれ別の方向に伸ばし、作品の可能性を開拓したと言って間違いない。シリーズの今後は未知数だが、レグロスにはまだまだ可能性が広がっている(出自の謎、ディアボロとの因縁、GRFとしての活動、レオ兄弟との繋がり、スピカくらいは復活していいんじゃねえの!?エトセトラ…)し、こういう作品が作られていってほしいですね。
 …。
 ………。
 みたいなレグロスだけを見ているようなまとめで終われなかったので書くぞ。上のを翻訳すると、ウルティメイトフォースゼロでオリジナルキャラ出して話作れるだろとか、援軍枠でウルティメイトフォースゼロ出せるよね?そういう作品作って?となります。また新しい物語を紡いだり、カッコよく戦ったり、そういう場面を新作として見るのをまだあきらめたくないじゃないですか!頼むぞ!
 ………。
 …。
 言えたので満足しました。現在優先されるべきはまだ出てほやほや…では今回でなくなったかな。TVシリーズで言うと中盤くらいに差し掛かったレグロスなので、レグロスの物語を積み上げていってほしいですね。このウルトラマンが紡いでいくドラマの先にどのような未来が待っているのか、目が離せない(ので早く次の展開の情報出してほしい)。