志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

【ネタバレ有】『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』感想

※この記事中には映画の内容に関するネタバレを大いに含みます。初視聴の驚きや感動を体感したい方にはおススメしません。

 平成31年(2018)3月8日と10日に都合2回『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』を観て参りましたので、今年はブログもあることですし、感想をまとめてしまいたいと思います。とは言え、かなり冗長かつダラダラしたものになりますので、御容赦を。
 まず、この映画を観る前に何を期待していたのかを述べて行きます。ハードルがどこらへんなのかということですね。
 今回の映画はあまり前情報は多くありませんでした。これはあまり出せる情報がなかったんでしょうね。例えば、例年だとあのウルトラマンや怪獣が出る、どの技を使う、タイプチェンジはするのか、ラスボス怪獣の力とは…等々を月毎に解禁していくわけですが、これが今回はとても貧弱でした。ウルトラマンジード・朝倉リクやウルトラマングルーブ、ウルトラマントレギアの登場も初報でわかっていましたし、ジード以外の客演ウルトラマンはいませんでした。スネークダークネスは解説がネタバレになってしまうような怪獣ですし(と言うかソフビのタグで正体バレしていた)、トレギアは後述しますが明かす情報が何もありませんでした。ウルトラウーマングリージョも登場自体は特筆することではありますが、能力や立ち位置は未知数です。
 そうした中で何かを期待すると言っても限られたものになってきます。映画ならではの要素がとても限られているわけですね。私の期待としては、だいたい以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • ウルトラマンR/B』最終章としてふさわしいものになっているのか

 『ウルトラマンR/B』の現時点における最終作品であることを思えば、まず当然ですね。ただし、私は『ウルトラマンR/B』のTVシリーズには今一つノリきれませんでした。まあそれはともかくとして、ギャグを交えた独特の緩いノリや兄弟のキャラ造型、属性技の使い分けなどは『R/B』の長所であると思ってますので、映画でもそこは伸ばしてほしいところです。
 一方で特筆される前情報としては、カツミの進路の問題があります。「君はウルトラマンか、湊カツミか?」という台詞もあり、カツミが何らかの決断を下すのは間違いなく、それが妥当なものか、そこに至る経緯は納得できるのか、カツミのその意志で以て『R/B』の物語が閉じられるに値するものなのか、そういった点が映画のストーリーにおけるハードルとなります。

 私は『ウルトラマンジード』は好きですし、劇場版を経て朝倉リク・ウルトラマンジードは真のヒーローとしての履修を終えたと思っています。今回リクは先輩として出るわけですし、彼の物語は血縁に呪われたものでもありました。そうしたリクが家族をテーマとするR/B組に入って、いい化学反応は生まれるのか。
 キャラクターの問題としては、リクがストーリー上でいかなる役割を果たすのか、登場する意味はあるのかが焦点です。また、ヒーローとしては各フュージョンライズはどれだけの出番があり、どこまで活躍できるのか。ウルティメイトファイナルは2度目の出番であり、各フュージョンライズの上位互換なところもあるので、使い分けや登場などにも注意したいですね。

  • CGを交えた特撮はどうか

 予告を見て驚いた部分です。それまでに特撮的に明らかにパッとしないなと思ってたのですが、CGを使う空中戦をやる、だと…。ウルトラマンがCGで描かれるのは『ウルトラマンサーガ』が最後で、空中戦もやったとなると『大決戦!超ウルトラ8兄弟』にまで遡ります。まあその後も『大怪獣ラッシュ』や『ウルトラマンゼロAnother Battle』などでCGを使った戦いはやっていましたが、本編に帰って来るのは実に久しぶりです。ニュージェネレーションシリーズでは空中戦でも着ぐるみを使って演出するなど腐心していましたが、その上で描かれるCG空中戦はどのようなものになるのか。そもそも大画面で見られるほどのクオリティなのか、単に10年前の劣化演出になるのではないか、新しい表現性はあるのかなど未知数の部分でした。

 漠然とまとめてしまうと、とりあえずこの映画が作品として生まれたことは今後に少しでもプラスになれば良いな…程度のことです。低いのか高いのかよくわからないハードルだなオイ。

ウルトラ怪獣シリーズ 101ウルトラマントレギア

ウルトラ怪獣シリーズ 101ウルトラマントレギア

  • 発売日: 2019/02/02
  • メディア: おもちゃ&ホビー

 それではストーリーを追いつつ、ここが良かった、ここが気になったという点を論って行きます。
 いきなりカツ兄=ロッソの頭がビルに逆さまに突っ込むという場面から始まります。突っ込んできたウルトラマンの頭を奥に非難する人々がいるのがインパクトもあります(これたぶん絶対誰か死んでるよな)。ブルが「あちゃ~」と反応する横にはウルトラマンジードもおり、「え?最初からいるの?」。ここからカツミの回想で1日前に時間が遡って行きます。
 ウルトラマンの映画ではオープニングがバトルから始まる作品も多く、今作もその例に漏れませんが、最初に戦いを見せてその後回想的に遡って行くという構成は『R/B』1話でもあり、いつものお決まりパターンを『R/B』に馴染ませた処理なんではないでしょうか。
 さて、日常パート。「アサヒもイサミも夢に向かって頑張ってるし、俺も頑張らないと!でも何を頑張ればいいんだ?」というカツミくんは「夢と言えば戸井の奴何やってんのかな…?」と高校の同級生を尋ねます。しかし、戸井くんは夢破れ、メタルな格好が似合わないヒキニートと化していました。カツ兄ガックシ。直接関係ないですが、戸井のお母さんの息子への態度、カツミが尋ねてきたら部屋に向かって「カツミくんが来たわよー!」だったり、ケーキ付で飲み物を部屋に運んで来たりと、息子をまるで小学生か何かと思ってます。そらグレるわ。
 戸井家を後にしたカツミには父ウシオから連絡が。何かと駆け付けると、アサヒがモテると聞いた一家はアサヒを尾行中。ファルコン1Tシャツで揃え、意味のない不審な尾行を敢行しています。乗り気じゃないのに、Tシャツはちゃんと着てたり、「行きます」と一応言ったりするカツ兄はいつも通り真面目でいいですね。
 で、アサヒに男が近づくのを見て、たまらず突撃するわけですが、その男と言うのが何と朝倉リク!すげえご都合主義偶然だな。
 リク「影を探してます」
 ウシオ「ポエマーみたいなこと言いやがって!」(←あんたに言われたくない)

 そこへベムスターガンQのベムQコンビが登場!湊兄弟とリクは変身すべく現場に向かいますが、お互いウルトラマンであることを知らず、隠し合っているので居合わせた最初の変身は気まずく未遂で終わります。気を取り直してルーブ兄弟登場!…って何かもう一人(ジード)いるんですけどー!
 この初共演の謎のノリ…戦隊のVSシリーズがどこかでやってた気もしますが、ウルトラでは新鮮な演出で、本来異なる作品同士が混ざる醍醐味のようなものは確かにあります。

 そういうわけで冒頭のシーンに移行します。頭が抜けないロッソを傍に、ブルとジードの連携は完璧です。いるよね、こういう兄貴には平気で迷惑かけるのに、余所行きだと大人しい上に成果を挙げる弟…。ベムQコンビと言いましたが、本当に『ウルトラゼロファイト』のベムQコンビと同じベムスターが吸収してガンQが発射ァー!」浅沼晋太郎の声)戦法を取って来ます。ビルから頭引っこ抜いたロッソとブルがトドメを刺そうとした時、ジードはガンQの中にペガがいることに気付きます。事情を知ったロッソとブルはアクアとウインドにチェンジ、ベムQコンビの性質を利用してペガを救い出します。憂いがなくなったジードもソリッドバーニングにフュージョンライズ、ベムQコンビ同時に光線をぶち込むことで撃破します。ソリッドバーニングはいつもの噴射プシャーもやりますが、すぐにストライクブーストを撃って大勝利。もうちょっと何かやってくれよ。
 人間に戻った3人は互いにウルトラマンであることを知ることになります。「君もウルトラマン?」で話が成り立つのは、両作品とも複数人ウルトラマンがいる世界観なのが大きく、便利なものですね。リクとペガは湊家に迎えられ、皆ですき焼きを囲みます。すき焼きが美味そう。てか美味かったんだろ!その後ペガのダーク・ゾーンに一同驚愕…!を挟んでリクとアサヒの会話になります(以下概略)。
 リク「家族っていいもんだね」
 アサヒ「リクさんの家族は?」
 リク「うちは父親がベリアルって言って極悪人なんだ」
 アサヒ「実は私も血縁的な意味では家族ではないんです。でも家族の絆ってとっても大きくて私を受け入れてくれたんです!」
 …?
 いやこれ会話成り立ってなくない?
 実の父親は悪い奴でした→家族の絆はすごい!って何かのフォローになってるか?よく理解できませんでした。
 そもそもリクってもうベリアルを「父親」として受け入れつつ決別しているし(最終回)、血縁じゃなく仲間たちが大事なんだというのもさんざんやったじゃないですか。作劇の中ではアサヒはそうしたことを知らないので仕方ないこともありますが、アサヒに諭されることなんて本来的には何もないんですよね。ここは逆に、アサヒは実は自分が血縁的な家族でないことに悩んでいて、リクが自分の体験からエールを送って後押しする方が自然で、リクの先輩ぶりもアピールできたのではないでしょうか。リクの見せ場であるだけに、もやもやしてしまったのは惜しいところです。
 翌朝のテレビではウルトラマン批判一色となり、カツミの「夢はないけど、とりあえずウルトラマンやってます」という態度にダメージを与えて来ます。狙いはわかりますが、ただただ不快なシーンです。別に後々、彼らがウルトラマン応援する掌返しがあるわけじゃないしねえ…。ウルトラマンに守ってもらってるくせに好き勝手言いやがって。
 より自分に自信が持てなくなったカツミはふらっと戸井をまた訪ねます。しかし、戸井は会ってもくれません。カツミは唐突に「夢は翼が生えているんじゃない。夢には足が生えているんだ」とポエムを喋り出します。大意としては「夢は持ってればそれを原動力にどこまでも叶えられるものじゃないんだ。夢を持ちつつ地道に努力するのが何より大切なんだ」でしょうが、正直初見では「何言ってんだこいつ」としかなりません(未公開シーンでは前振りとなる戸井の台詞が存在していた)。戸井もそう思ったのか、カツミを拒絶。カツミの顔がくしゃくしゃっとなったのに合わせて「あー、泣いちゃったー」と観客の子供がつぶやいたのが聞こえて来てちょっと笑ってしまった。
 タイミングが前後しますが、戸井にはすでにウルトラマントレギアの魔の手が伸びていました。「君の夢は何だ?」と問いつつ、戸井を唆すトレギア。この段階でのトレギアはPC画面から手だけ出して挑発的言辞を繰り返すだけなので、手の芝居が多く、欲望を助長するのと合わせて、『仮面ライダーオーズ』のアンクっぽいなと思ったり。
 自分の夢が何だかわからないわ、夢を追ってる男と思ってた戸井はいつの間にかニートになってるわ、ウルトラマンとして活躍しても不当に叩かれるわで八方塞となったカツミがやり場のない感情をぶつけていると、またもトレギアが出て来ます。「君には二つの道がある。湊カツミとして生きる道、ウルトラマンとして生きる道だ」などとトレギアは言いますが、君話聞いてた?レベルの詭弁にちょっとびっくりしてしまいます。カツミが悩んでるポイントを微妙に外していますね。結局「このままほっといたらピグモン死にますよ」というどこかの星を見せつけられ、カツミはロッソに変身してメカゴモラを倒しに行きます。これ、惻隠の情があるかどうかって話で、2つの選択肢と何も関係ないな?

ウルトラ怪獣シリーズ 75 メカゴモラ

ウルトラ怪獣シリーズ 75 メカゴモラ

  • 発売日: 2017/03/25
  • メディア: おもちゃ&ホビー

 ロッソはメカゴモラを倒します。ちなみにこのメカゴモラ、生命を探知して根絶やしにする機能を持つ特殊個体らしいです。何てヤバい機体なんだ…ってそれギャラクトロンじゃん。ギルバリスが滅んでも野良ギャラクトロンは健在(として今後も出せる)アピールにもなるし、前作要素という点もあるし、メカゴモラに設定追加するよりはギャラクトロン起用した方が自然だったのでは?ギャラクトロンはもう見飽きたって?TVシリーズですでに戦ったことがある上に『オーブ』以前から出まくってるメカゴモラの方がよっぽどか見飽きてるわい!
 メカゴモラを倒したロッソはなぜか変身解除し、そこへ戸井が出現。お前ウルトラマンロッソだったのか…次は俺が相手だとばかりにスネークダークネスに変身し、カツミに勝負を仕掛けます。カツミはロッソに再び変身(インターバルは?)し、スネークダークネスと戦います。「何も持ってないと言ってたけど、ウルトラマンじゃねーか!全部持ってるじゃねーか!」とのたまう戸井はちゃんとテレビを見てほしい。頑張って怪獣倒しても市民から文句付けられるだけだぞ。ウルトラマンは全ての生命を救うんだろうが!」も、そんな概念だっけ?そもそもそうだとなぜお前は信じてるの?と疑問が浮かびます。まあここらへん台詞に意味があるというより、煽るために煽る台詞なのかもしれません。しかし、ロッソ(カツミ)は意味のない口撃をダイレクトに食らい敗北、惑星に取り残されてしまいます。
 場面が変わって地球、カツミがいなくなったのを探すイサミ、リク、アサヒ。そこへスネークダークネスが出現、イサミとリクは「ジーッとしてても染めあげろ!」と変身して戦い始めます。トレギアはカツミに対して、この映像を送ります。ブルとジードはルーブスラッガーとスマッシュビームブレードの同時攻撃でスネークダークネスを攻撃、スネークダークネスは爆散したかに見えます。トレギアはここで映像を打ち切り、2人が戸井を殺してしまったとカツミに思い込ませます。一方スネークダークネスは倒されておらず、ジード、ブル、アサヒが変身したグルジオレギーナを苦しめます。ここでトレギアはビルのTV画面から登場し、「ロッソがいないとお前らは何も出来ないなあ?」と煽ります。現実を自分のファクターを通じて見せることで、感情操作を行うマスゴミか己は。

ウルトラ怪獣DXスネークダークネス

ウルトラ怪獣DXスネークダークネス

  • 発売日: 2019/02/02
  • メディア: おもちゃ&ホビー

 結局、ブル、ジード、グルジオレギーナは敗れ、スネークダークネスは綾香市を蹂躙します。政府はこれに対し、ミサイル攻撃を行いますが、全然怯みません。暴れる怪獣に政府が策を講じるのはリアルではありますが、TVシリーズではほとんど仕事してなかったし、要らなかったのでは…。前のテレビの中でもウルトラマンが歩くだけでもインフラが被害を~という台詞がありましたが、どこまでがリアルなのかという線引きが微妙になって来ます。ちなみに官房長官を演じているのは野口雅弘さんでした。ウルトラではお久しぶりですね。
 カツミが見つからないのは地球にいないのでは?という可能性に思い当たった湊家の人々は、ペガのダーク・ゾーンを利用することを思い立ちます。何とかカツミと連絡を取れた湊ミオはカツミがいる惑星を特定し、次元転送装置を使ってカツミを救い出します。ネタ要素かと思ったトランシーバーの生かし方が上手でしたね(カツミ、戸井家に行く時も持ってたの…)。どうでもいいですが、メカゴモラの出現、3つの太陽、次元転送による移動と『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』っぽいと思って見てましたが、狙っては…偶然だろうなあ。
 カツミが帰ってきたので、カツミはスネークダークネスの正体が戸井と説明して協力を仰ぎます。そうしてカツミ、イサミ、アサヒ、リクは三度変身し、スネークダークネスに挑みます。ジードのインターバルは…って気もしますが、カツミもだいぶ飢えてたし、1日経ってたんだろう、たぶん。今度はルーブ、ジード、グルジオレギーナという組み合わせになります。するとスネークダークネスの前にトレギアが実体化します。戦いの中、ジードはロイヤルメガマスターとなり、映画予算でCGを使ってマントをビラビラさせますが、すぐにやられてプリミティブに戻ります。前作と扱いが何も変わってねえ!
 戦いが劣勢になったので、ロッソ・ブルはグルジオレギーナに「女の子なんだから逃げろ」とただの前振り台詞を言い始めます。やられても変身解除するだけで傷物になるわけではないし、そもそもそんなのが理由なら最初から戦わせるな。アサヒは「性別なんて関係ないんです!誰かを救いたいという気持ちがあれば!」と返しますが、もはやノリツッコミの世界ではないでしょうか。アサヒの殊勝な願いに美剣サキも力を貸してくれ、ウルトラウーマングリージョが爆誕!他の3人を回復させて新たな戦いを挑みます。

 ウルトラマンたち「1人より4人の方が強い!」
 トレギア「孤独の方が強いぞ(スネークダークネスとの合体光線)」
 グリージョ「グリージョバリア!(単体技)」
 トレギア「(防御されて)チッ…」
 この流れはギャグか何かなのか。

 戦いは続きますが、そこへ戸井のお母さんが息子を探して迷い出て来ます。ジードはお母さんを庇って変身解除、息子を求める声に事情を知るリクは激高し「この声が聞こえないのか!」と叫びます。スネークダークネスの戸井にも声が聞こえ、正気に戻りかけます。これを見たトレギアは「いつまでこんな家族の話見なきゃいけねーんだよ」と『R/B』全否定かと言わんばかりの台詞を吐き、戸井を闇で包んでしまいます。闇で強化されたスネークダークネスはさらに強く、湊兄妹たちも「もうダメだ」モードに入ってしまいます。見かねたリクは「あきらめんなよ!」「家族の絆は大きなものじゃなかったのか!」と激励、戸井のお母さんをウシオに預けた後、ウルティメイトファイナルとなって再び戦います。
 ジードの激励を受けた湊兄妹は「絆を諦めない!それが家族!」と思い直すとマコトクリスタルが現れ、トリオで変身 ウルトラマングルーブ。グルーブ&ジードはCGを駆使した大バトルを展開した末にトレギアとスネークダークネスを倒します。ただ、「Hands」が流れるまでBGMが地味すぎるというか、最終決戦の盛り上げ感が足りてない気が。「GEEDの証」もどこかで使ってほしかったし、なんならずっと「Hands」が流れても良かったんですけどねー。ウルティメイトファイナルのレッキングノバは映像作品初登場でしたね。レッキングバーストみたいに発射前に回ってほしかったけど。中に戸井がいるのに、グルーブコウリンショットを放つ容赦のなさには笑ってしまいましたが、グルービウム光線はザナディウム光線やコズミューム光線のような中の人を傷つけない効果があるようです。万能光線か。

 (ジードのレッキングノバを受けてやられる)トレギア「これが家族の力か…勉強になったぞー!」
 (グルービウム光線でスネークダークネスを撃破した)グルーブ「見たか!これが真の家族の力だ!」
 この応酬も噛み合ってないぞ。
 さて、この特撮シーンですが、いやはや驚きました。『ウルトラマンサーガ』以来久々にCGを使ったバトルがあるということで、予想としてはこれまでのようにCGシーンだけバリバリCG空間のCGムービーが展開するのではと思っていました。確かに今作でもグルーブとトレギアしか映っていない場面などCGムービー感が強いところも多くあります。一方でミニチュア特撮での破壊シーンにグルーブを合成したり、着ぐるみであるジードやスネークダークネスともやり合ったりと、CGをCGとして描くよりも、ミニチュア特撮の延長上にシームレスに存在するCGを意識しているように見えました。ミニチュアとCGが別物であるわけでも、どちらかがどちらかの補完であるわけでもなく、同じベクトルの中に共存していると言いますか。次回作以降どう動かしていくものなのか、期待したいですね。
 ウルトラマングルーブも全シーンCGモデルでした(たぶん)。モデルとしてはちょっとリアル人体から離れた理想形じみていて、自然ではなかったですね。3人合体の異形さをアピールするのなら正解だとは思いますが。尻肉がむっちりしてたのばかり印象に残りました。あと、変身時のグングンカットをCGでやるのはゼアスやティガの頃から本質的なセンスは進歩していない気がします。
 敵は倒されたので、後はエピローグに入ります。根本的問題は解決してない気がしますが、戸井は母親と再会し抱き合います(夢は取り戻せたのか?)。リクとペガも次元転送装置を使って元の世界(サイドスペース)に帰ります。リク・ペガとTシャツの絡みはもっとやるかなと思ってましたので、しれっと着てるのを見せるだけなのは意外でしたね。ちゃんとお土産をもらえたのは前作要素か?
 で、結局カツ兄の夢の話ってどうなったの?序盤の落書きが商品化されると受けたため、カツミはデザイナーになろうと思い立ち、ウシオの伝手でミラノに修行に行くことになった。野球じゃないのか…と思ったが、確かにカツ兄、本当は野球がやりたかったなんて一言も言ってなかったし、正しい…のか?ウルトラ世界では、30代半ばからプロ入りして、チームを優勝に導いたすごい奴もいるんだよなあ(あれは基準にならんでしょ)。
 ただ、最後の独白調ナレーションもそうですが、カツミの答えは「何が正解かはわからない、前に進むしかない」ということなんですよね。「野球がやりたかったのに出来なかった」みたいな具体的な喪失感よりも、「青春」がないという漠然とした思いが基調になってるのではないでしょうか。デザイナー修行というのも、絶対なりたい!という話ではなくて、とりあえずやってみたいの延長上にあるのでは。世の常識から言うと、10年くらい遅いけどね、その10年は家族のために犠牲にした10年だからね、仕方ないね。もしかしたら、10年後くらいにカツ兄がその時のウルトラマンに客演した時には、カツ兄は売れない劇団員になっていて「ウルトラマンロッソの力はいらないのか?」と吹っ掛ける奴になってるかもしれない。でもそれも夢が何か探してあがいた結果ならいいんじゃないか、そういう可能性を示す結論と言えるのではないでしょうか。
 兄弟2人が綾香市を出て別の道を行くことで、綾香市の兄弟ウルトラマンの物語だった『ウルトラマンR/B』は完結する。『タロウ』や『レオ』みたいな、ケジメを重視したさっぱりした終わり方でした。主題歌の「ヒカリノキズナ」もウルトラマンらしい爽やかで熱い曲調で良かったです。

「…何だ?まだ見ていたのか?」

ウルトラ怪獣シリーズEX ペガ

ウルトラ怪獣シリーズEX ペガ

  • 発売日: 2019/02/02
  • メディア: おもちゃ&ホビー


 補足を兼ねて、各キャラクター評。

 何と言ったらいいのか悩む立ち位置。と言うのはほぼ全編出ずっぱりな上に、先輩ムーブも発動し、濱田龍臣くんの熱演もあって見応えもあるのは間違いないんですよ。ただ、『R/B』要素である家族との絡みはそれでいいのか?と納得できないのと、カツミの夢の話にも関わらないし、敵がジードと関係あるのかもわからないし、ストーリー上に存在する意義が確かじゃないまま出続けているという感覚が拭えないところはあります。いやもちろん出てくれてとても良かったとは思います。
(追記・何でこんな出る意味があるかあやふやだと思ってしまうのか、さらに考えてみたのですが、トレギアとの因縁が機能しないまま戦っているのが大きいのではないかと思いました。リクとペガを浚い、ジードにペガを倒させようとしたのはトレギアです。ただ、リクもペガもその他の登場人物も皆そのことには気付いていないんですよね。ここでリクがトレギアに「よくもあの時ペガを倒させようとしたな!」と一言でも言っていれば因縁が成り立つわけで、だいぶ違っていたし、リクの仲間想いの面がいい意味で描かれていたのではないでしょうか。)
 ジードについては言いたいことは「技をちゃんと使え」、これに尽きます。今回ジードは全形態が出ますが、とりあえずのプリミティブと最終決戦用のウルティメイトファイナル以外、出ただけで、この形態だから何か出来る、やれるのだというのがなく、ただ出しただけという印象が強いです。マグニフィセントやロイヤルメガマスターは本当に出てやられるだけです。同じ扱いにしろ、何か小技でも使えばうれしいですし、効かなくても強敵アピールにはなるわけで、工夫が足りないと言わざるを得ません。これは最終決戦のウルティメイトファイナルにも言え、ずっと戦ってますが、特筆できる技の使用はレッキングノバだけでした*1。ギガファイナライザーはずっとただの鈍器扱い、ギガスラストくらい使っても罰は当たらないって!
 ペガ以外の仲間は存在すら匂わせられませんでしたが、トレギアに浚われた際の背景に天文台が出たのは、ジードの世界観をさらりと見せる処理としては良かったです。

 美剣サキ(グリージョ)の過酷な過去を知ると、アサヒあんな簡単にウルトラマンの仲間入りしていいのか?という感情は拭えないですね。女性キャラはまたメイン戦士じゃないのかよという声もありますが、アサヒの思想を汲んで回復・防御重視なのは一応真っ当ですし、今後の役割に期待したいところでもあります(そもそも出番あるか?)。ただ、そこまで活躍できてるわけでもなく、グルーブへの合体要員の枠を出ていないのも否めない。結果的に綾香市のウルトラマン、グリージョだけになってしまったけど、今後怪獣が出たらグリージョが戦うのか?

 映画公開のちょっと前に「これからは怪獣が追いやられ、敵もウルトラマン化していくのではないか。トレギアにウルトラマンである意味はあるのか?なければ、トレギアこそがその傾向の端緒ではないか」みたいな議論がありましたが、ここらへんの危惧を全てウナギのようにスルリと抜けてしまうようなキャラでした。まず、トレギア本人が自分はウルトラマンとは言わないし、ウルトラマンと呼ばれることもない。「お前はウルトラマンじゃない!」と言われることもなければ、「ウルトラマンとは何か」定義付けを迫るわけでもない。メタ的にはウルトラマンである意味は確かにないが、作劇の中でもそもそもウルトラマン扱いされないという、まさに掴みどころがない。
 トレギアにあるのは外見と人格だけで、キャラの背景は全くありません。近年で言うと『オーブ』に出た時のギャラクトロンみたいな感じです。今後どんどん使いまわして行き、その中で背景を詰めて行く…そういうつもりのキャラに見えます。しかし、「~星人」扱いだと「また~星人かよ」と思われそうだから、「ウルトラマン」を冠させて永久性を担保させる、と。
 トレギアはベリアルは直球の悪だったとすると、明らかに変化球です。暗躍する愉快犯みたいな。ただ、こういうキャラを使いまわしていくと考える時、少し危惧もあります。どこまでやれば倒されることになるのかという問題です。今作でもすでに劇中では普通に倒されたように見えながら、しれっと「また会おう」のように〆ています。今後もこのようにスルスル逃げられて、言わば「痛い目に会う」体験を回避していくのなら、継続視聴者こそ煮え切らなくなってきます(その点ベリアルは出るたびにちゃんと負けてるのが上手なところです)。今後の使いようには注意したいですね。
 作中におけるトレギアは実はTVシリーズにおける諸悪の根源でもありますが、作中のキャラは全員たぶんそれに気付いていないのが巧妙でもあります。

まとめ

 最初に期待点とハードルの話をしましたので、それに沿って評価したいと思いますが、難しいな…。明確に良かったぞ!と言えるのはCGくらいですね。他は一応やってはいまして、そういう意味では及第点ではあるんですが、どの点も「もっとちゃんとやれたやろ」という感じです。わけのわからない喩えになりますが、肉を裁く時に包丁を入れるところは良かったし、ちゃんと切れてはいるが、包丁は鈍らだった、そんな感じの作品です。

 『劇場版ウルトラマンR/B』、『ウルトラマンギンガ』1話~6話説

  • 論理がふわっとしてる
  • グロめの腕が暗躍してる
  • メタルな兄ちゃんが怪獣になって暴れてる
  • 夢を持つかどうかではなく継続性の問題にする
  • グルーブがスネークダークネス、ジードがトレギアを倒すのはギンガがバルキー星人、ジャンナインがティガダークを倒したパロディ

 ほぼほぼこじつけだけど、今年から新時代に突入することを思えば、ニュージェネレーションシリーズも『R/B』で最後ではないかという思いもあり、『ギンガ』から始まったオチがここならある意味綺麗なのではないでしょうか(ホントかよ)。
 一方でCGとミニチュア特撮の融合や明らかに引っ張るつもりのトレギアなど、この作品が起点となっていくであろう要素もあり、鮮やかさには欠けますが、時代の転換点としての作品でもあるのかなと感じています。

*1:一応変なスラッシュ光線みたいなのも使ってはいた