志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

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『ウルトラマンデッカー』第4話「破壊獣覚醒」感想

 『ウルトラマンデッカー』は予想通りと言うべきか、ティガをフィーチャーした『トリガー』に続いてダイナを意識する作品になっている。ということは、『トリガー』でゴルザとメルバが合体したゴルバーやガタノゾーアをオマージュしたメガロゾーア、あるいはガゾートやキリエロイドといったティガ怪獣の復活があったように、ダイナ要素の入った怪獣の登場やダイナ怪獣の復活が見込めるということである。果たして『デッカー』でも第1話からダイナの宇宙球体スフィアとは似て非なるスフィアが登場し、スフィア合成獣としてスフィアザウルスが登場、第3話ではゴモラにスフィアが取りついてスフィアゴモラになるという昭和怪獣を使い回しているからこその夢のコラボ(?)的新怪獣も現れた。
 そしてそして、ダイナ怪獣の復活が第4話にやってきた。選ばれたのはモンスアーガー!
 モンスアーガー!
 このチョイスは…感無量だ。

 モンスアーガーは『ウルトラマンダイナ』第11話「幻の遊星」に登場した怪獣だ。とある異星文明によってメラニー遊星への侵入者を排除するようプログラムされた生体兵器としての怪獣で、手を合わせて放つ「赤色破壊光弾」を必殺技とする。防御力も非常に高いが、後頭部にある青い部分が弱点。作中でもダイナを苦しめたが、モンスアーガーに滅ぼされたファビラス星人が連れていたハネジローが弱点を教えたため、ストロングタイプのストロングボムが後頭部に直撃し倒された。
 モンスアーガーは生体兵器というが、外見は怪獣スタイルの王道を行く。顔もトカゲ顔で、平成三部作怪獣では少なめな黒目持ち。背中を中心にトゲがあり、シルエットを力強くしている。一方で真っ赤なカラーリングやそれと対照的なクリアブルーな後頭部はモンスアーガーが自然界の産物ではないことを示している。王道の中にぎゅっとモンスアーガーを特徴づけるらしさが詰まったデザインであり、他のダイナ怪獣は王道が地味に埋没しがちな中モンスアーガーが目を引く存在であることを確かに印象付けるのである。
 モンスアーガーが登場したダイナ11話も個人的にはウルトラマンらしさが詰まった話でレベルが高い。スーパーGUTSが調査に訪れたメラニー遊星は一見すると自然あふれた平和な星に見えるが、それは全てまやかしであり、来訪者をモンスアーガーに殲滅させるための仕掛けなのであった。単純化すると、調査に行ったら怪獣がいたのでウルトラマンが怪獣を倒しつつ脱出した、というだけの話なのだが、未知の場所に行くということ自体がセンス・オブ・ワンダーだし、それが実はトラップというのも宇宙の奥深さを感じられる。単純さの中に仕掛けがあり、未知への感情を煽りつつ、ウルトラマンと怪獣のダイナミックなバトル(わかりやすい弱点で逆転するのも見逃せない)!これぞ醍醐味であろう。

 ところでダイナでモンスアーガーが登場したのは11話だけではなく、第31話「死闘!ダイナVSダイナ」にもモンスアーガーⅡが登場している。グレゴール人が第4メラニー遊星からモンスアーガーを鹵獲し、独自の改造を加えた個体だ。独自の改造というのはモンスアーガーの弱点であるブルーの後頭部が金属板で覆われていて弱点をフォローしている部分。他にも口から火炎を吐いたり、色合いがやや地味になっていたりという違いもある。しかし作中での役回りとしてはウルトラマンダイナに挑戦してきたグレゴール人がデモンストレーションのために倒したかませ犬であった。
 その一方で「第4メラニー遊星」のような出身地であるメラニー遊星が複数存在するかのような設定や、生体兵器として改造可能という設定、かませ犬にされたことでただ強いだけではないある種の格落ちといった部分もモンスアーガーの新たな要素となった。
 モンスアーガーの映像作品での出番はこれだけだったが、モンスアーガーは当時からソフビ化され、ウルトラソフビシリーズが平成25年(2013)の『ウルトラマンギンガ』を機にリニューアルされるまで定番にい続けた。そのおかげで『大怪獣バトルULTRA MONSTERS』ではCGポリゴンが存在していなかったにも関わらず、新規ポリゴンが作成されて参戦を果たしている。モンスアーガーは間違いなくウルトラ怪獣全体で見ても人気を獲得しており、ダイナ怪獣の中ではトップレベルに人気があったと言えるだろう。

 上記だけでもまたモンスアーガーを見たいという思いに至るには十分だが、私の熱望は昨今のウルトラマンシリーズの事情を勘案してという面もある。『ウルトラマンギンガ』以降のウルトラマンシリーズ、厳密にいえば『大怪獣バトル』からだが、1作品において新規で用意できる着ぐるみの数が制限されているのである。ニュージェネレーションシリーズ初期はせいぜい数体だったのが、徐々に拡充し『トリガー』では闇の3巨人を除いてもゴルバー、メトロン星人マルゥル、トリガーダーク、キリエロイド、バニラ、アボラス、メガロゾーアの7体が新造された。デスドラゴやメカムサシンなど改造元とはだいぶ印象が変わった着ぐるみ改造怪獣もいるのでもう少し新怪獣の印象は強いが、それでも25話分の登場怪獣にバラエティを持たせるのに新規怪獣が間に合っているとは言い難い。当然のように既存の着ぐるみを再利用していくことが求められることになる。昨今のウルトラ怪獣は何度も再利用されることが最初から見込まれていると見るべきなのだ。
 ただし、再利用というのは格落ちでもある。当然再登場するからにはもはや見知った怪獣なのであり、その挙動1つ1つへの新鮮さはもはやない。もちろん一個のキャラクターとして扱われ、新たな一面を見せてくれるのが望ましいし、実際にそのように演出される怪獣も多いが、新怪獣のかませ犬になったり、ウルトラマンの活躍を見せるための体よく瞬殺されることも珍しくはない。群れのようになって個性を失ってしまうこともある。こうした格落ちは一概にそれが悪いとも言えない(新怪獣やウルトラマンを印象付けるという大目的が成功しているのならそれは意味があるからだ)が、例えば既存のシリーズではボス級であった怪獣が再登場にあたってそういう扱いだと納得しきれない感情が残るのも事実である(『オーブ』や『タイガ』では扱い自体は悪くなくても序盤に過去の強敵怪獣が集中して再登場したせいで、後半でそうでもない怪獣に苦戦したりすると序盤の強敵が下げられているような感慨を持つこともあった)。
 また、ニュージェネならではの懸念として指摘されている問題としては、召喚怪獣問題がある。『オーブ』~『R/B』に顕著であったが、ウルトラマンと戦う怪獣は人間が演じるヴィランがコレクションアイテムを使って召喚した怪獣であったり、自身が変身した怪獣であったりした。否応なく怪獣の自然物としての側面は弱まるし、単なる素材だとそもそも生物感も薄れる。私としてはそこまでこの問題を憂慮してはいないが、制作側も問題とは思っているらしく『タイガ』以降は手を変え品を変え怪獣が単なる召喚アイテムに落ちないように演出に手を加えている。言わばこれも一種の格落ちとは言える。
 田口清隆監督は近年のウルトラマンシリーズでも怪獣にこだわりを持つ監督であることが知られるが、自身が創出したラスボス怪獣であるグリーザとマガタノオロチが再登場して格落ちするのは嫌だったらしく、マガタノオロチはさっさとゲネガーグという新怪獣に改造して再登場の可能性を絶ったし、グリーザも『Z』での再登場は自身が演出してしかもそれが最後の再登場にするよう図っている。自身が生み出した怪獣に思い入れを持っている以上当然の感情と行為と思うが、実際問題としていちいち強敵怪獣にこういう処置をしていくわけにもいかない。
 つまり、現代のウルトラマンシリーズの新規怪獣として望ましいのは、設定上再登場の可能性を残すことができ、強敵にも、無双されていく対象にもなれて、どちらにも違和感が薄く納得できるような怪獣ということになるだろう(田口清隆監督の怪獣で言うとデマーガやセグメゲルあたりが相当するだろう)。

 というわけでモンスアーガーなのである。モンスアーガーは上述したようにわかりやすい強みと弱点があるし、メラニー遊星自体が複数あることが示唆され、すでにグレゴール人にかませ犬にされた「実績」もある。そもそもが生体兵器なので、召喚アイテム扱いされても設定上の違和感も少ない。1話のメイン怪獣から、大量に量産品が出現し無双対象まで何でも出来る。その上デザインもカッコよく、過去にソフビがロングセラーであったことを思えば、平成三部作怪獣を代表する新しい顔になれることも期待できる。現代のウルトラマンシリーズにうってつけな上、好きな怪獣が人気者になれるチャンス。ここを逃してはならないのだ。そう思っていたところに『デッカー』におけるダイナ怪獣復活第1号に選ばれたのだから的を射た感覚しかなかったのがおわかりいただけるだろう。

 それでは実際に『デッカー』第4話にて実に24年ぶりに再登場を果たしたモンスアーガーはどのような扱いだったのだろうか。ウルトラマンデッカーに変身するアスミ・カナタはシミュレーション中に失敗し、失敗を気合で乗り切ると「ハネジロー」ことHANE2にのたまうが、ハネジローからは非科学的と否定されてしまう。
 そんな中温泉街・ユノハナ町では温泉掘削中に突如謎のブルーの巨大カプセルが出現する。ユノハナ町ではスフィアの影響かお湯が出なくなったので、かつて大明神が降臨したという阿賀神社の森に掘削ドリルを入れたらしい。ハネジローの分析ではカプセルは地球外のもので1300年前から地中に埋まっていたらしい。
 そうしたところ、カプセルが鳴動し破壊獣モンスアーガーが出現する!

 町を破壊し始めたモンスアーガーに対してガッツファルコンとガッツホークが出撃する!しかしモンスアーガーの表皮は硬く決定打を与えることはできない。カナタはガッツファルコンとガッツホークの合体を提案するが、ハネジローは希望的観測では出来ないと退ける。そんな中サワ副隊長はカプセルから発信されていた言語を解析、それはメラニー遊星からのモンスアーガーのセールストークであった。怒ったカナタはガッツファルコンでモンスアーガーに攻撃を仕掛けるが、モンスアーガーの光弾によってガッツファルコンは被弾、カナタはウルトラマンデッカーに変身する!
 デッカーはカプセルのトークを黙らせた後、モンスアーガーに挑むがモンスアーガーは強くストロングタイプになっても押され気味。ハネジローは後頭部が弱点と解析するが、デッカーが後頭部を攻撃しようとすると金属板が出現し攻撃は防がれてしまった。手詰まりとなる中ハネジローは勝利の確率を高めるべく、独自に作戦を立てデッカーの力も借りてガッツファルコンとガッツホークのガッツグリフォンへの合体を敢行。デッカーは猫だましの要領でモンスアーガーの気を反らせて後頭部のガードを解かせると、かかと落としで一撃を食らわせ、そこへガッツグリフォングリフォンタロンビームを撃ちこみモンスアーガーを撃破した。結果的にカナタとハネジローも打ち解け、町長がお湯の復活に喜ぶ中GUTS-SELECTたちは町を後にするのだった。
 番組後の「カナタのウルトラディメンジョンナビ」ではモンスアーガーのカードが紹介された。身長・体重はモンスアーガー初代に準拠しており「迷惑な奴」とまとめられてしまった。

 拙い文章ではあまりこの話の魅力を伝えきれている気がしないが、カナタとハネジローの気が合うようなそうでもないような関係性やガッツグリフォン初登場というギミック、町おこしや自然開発からの怪獣出現という王道をコミカルに正統派にまとめている。特に堀内正美さん演じるユノハナ町の町長はお湯が出ないのに苦しみ鎮守の森を開発したり、ラストでデッカーを町おこしに使おうと明らかに目論んでいたり客観的に書くとかなり俗物だが、あまりそうは感じさせないカラリとした人物に仕上がっていて(ここは脚本の中野貴雄氏のセンスだと思う)、実はあまり市井の人物が出て来ない今回において「市民」の僅少を感じさせない存在感を持つ。それでいて『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』出演時の小ネタを入れたりしていて、往年のファンへの目くばせもいやらしくなく上手い。

 そして話の中心には間違いなくモンスアーガーがいる。今作のモンスアーガーはメラニー遊星出身という設定はダイナから受け継いでいる一方で地球に出現した。その間隔を埋めるのが怪獣の実演による通信販売という設定だ。これも新設定なのだが、デモンストレーションに使われるというのは『ダイナ』でもグレゴール人がそう用いていたし、メラニー遊星も複数あるのでそういう路線を辿ったメラニー遊星の存在も否定できない。通信販売という日常に近いゆるさはニュージェネレーションの味を感じるし、『デッカー』ならではの設定追加と言える。
 能力としては必殺技の「赤色破壊光弾」は健在で、今回も手を合わせて放っていた。一方で『ダイナ』ではゲームでの光弾エフェクトをそのまま形にしたようなある意味素朴な光弾であったのが、今回は火炎弾のようになり原典とは趣が異なっている。また、後頭部を攻撃しようとすると半自動で防御用の金属板が現れるのはデフォルトで弱点をフォローしている。ちなみに金属板の造形はⅡと同じ。Ⅱはグレゴール人が改造したという設定だったが、金属板はもともとのモンスアーガーの機能の1つだったのかもしれない。
 作中の扱いとしてはとにかく強かった。格闘戦ではストロングタイプを圧倒し、表皮に通常攻撃は通じない。ブルーの後頭部を狙うしか倒す手段はなかった。最終的に新登場のガッツグリフォンに倒されたという点で言えば、Ⅱのかませ犬属性を正統に継承したとも言える。
 また、辻本監督の十八番、怪獣の目などを動かして怪獣をより生物として、そしてキャラクターとして演出するのはモンスアーガーでも健在で、登場時に目を動かしたり、デッカーに目つぶしをされた時のリアクションなどは生物兵器の「生物」の側面が強く出ていた。ウルトラ怪獣につきものの愛嬌を上手に出している、コミカルさであり、モンスアーガーに好印象を持ってくれる人もこの演出で増えたに違いない。

 当然と言えば当然だがモンスアーガーは『デッカー』4話に合わせてソフビも発売された。定番シリーズへの復帰は『ギンガ』でのソフビシリーズリニューアル以来となるので9年ぶりとなる。


 足の指などの塗装は省略されているが、メインカラーの赤が成型色として主張しているため全体の印象は捉えている。可動箇所は腕と尻尾のみだがブンドドには足るだろう。

 ところで立体で見た方がわかりやすいので、ここまで言及していなかったが、今回のモンスアーガーはダイナとは造形が異なっている。旧ソフビと並べてみよう。


 最もわかりやすいのはダイナ版では背中のトゲが2列のみであったのが、デッカー版ではトゲ1つ1つが小さくなり、また中央にトゲの並びが増えたことだろう。
 また、よく見ると足の造形も違う。ダイナ版はトゲが目立っているが、デッカー版はアーマーのような処理の上に突起があるような感じになっている。
 このような造形の違いがどうして生じたのかは不明である。デッカー版の方が丸山浩デザインに近いという説もあるが、デザイン画では背中はそもそも描かれていないので、背中に関してはデッカーの独自処理ということになる。造形上の都合が何かあったのか、この点はスタッフの証言に期待したい。

 長々と語ってきたが、今回のモンスアーガーは…100点満点だろう。ダイナ版そのままではないにせよ、ダイナを意識したニュージェネである『デッカー』で今復活を遂げたモンスアーガーとしては正統かつ破格だったと断じても過大評価ではあるまい。弱点のある強い怪獣という特徴を十二分に演出していたし、ストーリー自体も王道かつコミカルでウルトラマンシリーズ全体で見ても誰にでもおススメできる一篇でモンスアーガー布教にも都合が良い。さらにメラニー遊星からの通信販売という設定が現れたことで今後の再登場や亜種の登場も容易になった。上述したようにモンスアーガーは明確な弱点持ちの強豪なので、今後ボスクラスで強化体が現れても、廉価版モンスアーガー生産工場でウルトラマンに無双されても良い。そういう振れ幅を作ることが出来た。
 モンスアーガーの未来は間違いなく明るい。何が来ても受け止めてみせる。そういう怪獣として再評価されたと言うべきだろう。