志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

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『ウルトラマンクロニクル ZERO&GEED』におけるウルティメイトフォースゼロ

 ウルトラマンのニュージェネレーションシリーズの第1作は『ウルトラマンギンガ』でしたが、突然『ギンガ』の放送が開始されたわけではありません。『ウルトラマン列伝』という過去シリーズの再放送と総集編をウルトラマンゼロがナビゲートするという番組があり、この中で3分番組ではありますが『ウルトラゼロファイト』という新作の放映を経て、『ウルトラマンギンガ』の放送に至ったわけです。と同時に『ウルトラマンギンガ』は『新ウルトラマン列伝』という番組内番組でもあり、夏季に6話、秋季に5話を放映するが、それ以外は従来の再放送や総集編で繋ぐという形式になりました。ニュージェネレーションシリーズはまさに列伝から生まれ育てられてきたわけですね。
 ニュージェネは『ウルトラマンオーブ』以降『新ウルトラマン列伝』の看板を外し、単独番組として成立することになります。とは言え、1年まるまる放送できる環境とはなっておらず、放映期間は半年となります。そのため、新作を放映しない残りの半年は過去作を用いて放映枠を確保するようになりました。これはあえて言いますとクロニクルシリーズですね。再放送・総集編主体というのは列伝と同じですが、番組でテーマを設定してしまうことに特徴があります。取り上げられるのは「何でもアリ」ではないということです。列伝と比べると寂しさもありますが、クロニクルも番組としては半年に過ぎないので致し方ないところはあります。
 もう一つの特色はクロニクルがその後の新作のある種伏線のようなものを盛り込んでいるということです。単なる再放送ではなく「繋ぎ」の新作として見て欲しいという思いが看取されます。
 令和2年(2020)のクロニクルシリーズはウルトラマンクロニクル ZERO&GEED』(以下『ウルクロ』)でした。
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 「ウルトラマンゼロ10周年記念」と銘打たれており、ゼロシリーズと『ウルトラマンジード』からセレクト再放送・総集編を作るものでした。新作『ウルトラマンZ』の主役ウルトラマンのゼットはゼロの弟子であり、ジードも『Z』に登場しますので、「繋ぎ」としての役割を担っていたわけですね。
 その一方で単独番組としての要素もあり、ジードこと朝倉リクとその相棒のペガがウルトラマンゼロが主催するビヨンド学園に通い、授業を受ける。授業の先生は変わったり、教室には他の生徒が現れたり…とコントが展開されたりもしました。
 ここまでが前置きです。本記事で触れたいのはそのビヨンド学園にウルトラマンゼロの仲間たち、ウルティメイトフォースゼロが現れたということです。まあ新番組予告で新規撮影の奴らはすでに映っていたし、ゼロシリーズからセレクト放映される以上触れないということはないのですが…それでもやや衝撃ではありました。その内実についてあれこれ述べていきましょう。

 まずこれまでの復習から。ウルティメイトフォースゼロがどのように成り立ち展開してきたのかについては『劇場版ウルトラマンジード』の折、ダラダラと認めましたのでそちらを参照いただくとして…
monsterspace.hateblo.jp

 上記記事では「そのうちまた出番あったらいいな~」的に締めましたが、『劇場版ウルトラマンジード』後のウルティメイトフォースゼロは特筆できる出番があったわけではありません。ウルトラマンゼロ自体は『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』や『ウルトラマンタイガ』第23話などに登場しましたが、どちらでもウルティメイトフォースゼロの「現在」にはノータッチ。まあ『劇場版ウルトラマンジード』で出たばっかりですし、ゼロ自身どこまで出すのかという問題もあり*1、これは不満と言うほどのものではなかったのですが、ウルティメイトフォースゼロ視点からすると何も生まれてないとは言えるでしょう。
 ただし、これは公式な映像作品の話であり、ウルトラマンフェスティバル2018のライブステージに画面越しに全員登場したり、ひらかたパークのウルフェスではウルトラマンゼロとグレンファイヤーの掛け合いが音声ガイドとして導入されたりもありました。ウルトラマンゼロは人気ヒーローですし、大友向けのグッズも定期的に出ていますが、そのラインナップでもウルティメイトフォースゼロの存在は常連として馴染んできています。この流れ自体は『ウルトラマンゼロTHE CHRONILE』の際の定番ソフビ化から続く一連のものと認識していますが、かなり顔としては馴染んできたのではないでしょうか。
 こうした状況から見ると、『ウルクロ』におけるウルティメイトフォースゼロの登場はまさに満を持してとでも言いますか、存在感を増したところへの起爆剤的効果も見込んでも不思議ではなかったはずです。それでは実際どうだったのか、まずは経過を振り返って行きましょう。
 先述した通り、新番組予告にはウルティメイトフォースゼロが全員集結している新規撮影がありましたので、どこかでこの映像が使われる=出番があることは把握できました。しかし、それがどのようなものなのか。単なるイメージ映像なのか、誰がどこまで喋るのか*2という点は観るまでわからないわけです。
 初放送の1月11日はかなり驚きました。まず、本命のゼロが出て来ない。いきなりグレンファイヤーが先生役で登場しました。さらに予告では2話の先生がミラーナイト!この時点ではミラーナイトが喋るのは確定的ではなかったですが、グレンファイヤーだけでなくウルティメイトフォースゼロのメンバーで先生役を持ち回って行くのは単純に夢が広がる心地でした。奴ら何だかんだでピンでの経験がそこまでなかったので…。
 第2話と第3話は『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』の再編集でしたが、実際にミラーナイトがやって来て解説を加えてくれました。ちゃんと緑川光ボイスです。アツいですね。予告では4話からはジャンボットが先生となるということで今後のローテーションに期待が高まります。
 しかし、何とここで躓きが発生します。4話の先生役で現れたのはグレンファイヤー。4~8話は『ウルトラマンサーガ』の5週分割だったのですが、ジャンボットが先生役だったのは5話と6話のみ、4話と7話はグレンファイヤーが、9話からはウルトラマンゼロが先生を務めるというかなり変則的な編成になりました。な、何で…?
 さらに9話からはウルトラマンゼロが満を持して先生役に収まったこともあり、その後ウルティメイトフォースゼロは先生としては登場しませんでした。7話ラストでグレンファイヤーのもとにゼロ以外のメンバーが揃い「来週もウルティメイトフォースゼロから誰か来るよ」と言って終わり。まさかこんなセリフが最後の出番になるとは…(来週以降誰も来なかった)。ゼロが来られなかった理由も今一つわからないままですし、何だったのか的な思いを抱き始めます。
 『ウルクロ』は『ウルトラマンサーガ』後は『ウルトラゼロファイト』、『劇場版ウルトラマンジード』を経て『ウルトラマンジード』TVシリーズを再編集放映していくことになりますが…ここでとりあえず各ヒーローについて『ウルクロ』での出番をまとめておきましょう。

  • グレンファイヤー

 1話、4話、7話に登場。ただの関智一本人度合が高めなキャラクターではあり、ミラーやジャンを思うに今回はこれが幸いしたかも。ウルティメイトフォースゼロやウルトラマンダイナ、コスモスの紹介パートも担当していたが、グレンはこれまででも列伝などでそういう出番は多かったので、今回は別のメンバーに譲ってあげてほしかった気も。ペガ役の潘めぐみさんともどもオタ気質なのでダイナやコスモスの紹介でBGMや主題歌ネタを振りまいたのは良かったですね。

ウルトラヒーローシリーズ 37 グレンファイヤー

ウルトラヒーローシリーズ 37 グレンファイヤー

  • 発売日: 2017/04/08
  • メディア: おもちゃ&ホビー

  • ミラーナイト

 2話、3話、7話(姿のみ)に登場。演じる緑川光さんはミラーナイトを自分好みと言ってくださるので好感度は高い。ただし、今回のミラーナイトには若干の違和感があった。ミラーナイトは決して常にです・ます調のキャラクターではないのだが、『ウルクロ』での音声は常にだ調の台詞であったからだ。間違いか?と言うとそうとも言い切れないのであるが、そこまで固かったっけ?と感じてしまうものではあった。ミラーナイトが一人で喋っているのは新鮮であるし、ゼロをリスペクトしている姿勢も良かったが、微妙なノりきれなさは覚えた。
 なお、今回はスーツアクタークレジットを見るに力丸佳大さんがミラーナイトを演じていたようで、そのおかげか一挙一動はかなりハマっていた。ミラーナイトの動作の肝は手で明確な表情を作りつつ、優雅さを持って動かすことにあると思っているが、そこへ注力できるのはナビゲーターの役得ではあろう。

ウルトラヒーローシリーズ 38 ミラーナイト

ウルトラヒーローシリーズ 38 ミラーナイト

  • 発売日: 2017/04/08
  • メディア: おもちゃ&ホビー

  • ジャンボット

 5話、6話、7話(姿のみ)に登場。神谷浩史声込みでナビゲーターとなったのは列伝・クロニクル史上初めてではあった。が、ミラーナイト以上に「本当にそれで合ってる?」感は強い。「~さ」と喋るジャンボットなんてこれまで(厳密にはショーやライブまで目配せできているわけではないが)なかったのではないか。さらに神谷浩史さんが声を当ててくれたのは画期的ではあったものの、声の出し方がすごく爽やかで(類例を探すと『SDガンダムフォース』のキャプテンガンダムが近い)ジャンボット本来の堅物っぽさはあまりなかった。4話に来る予告があったのに結局来なかったり目に見えないところでごちゃごちゃしていたのだろうか。
 動作としては『ウルトラマンサーガ』を語ったあと思いを馳せるカットがあったり、セミヤとセミカの告白シーンで拍手するシーンなどが印象に残りましたね。

ウルトラヒーローシリーズ 39 ジャンボット

ウルトラヒーローシリーズ 39 ジャンボット

  • 発売日: 2017/04/08
  • メディア: おもちゃ&ホビー

  • ジャンナイン

 7話(姿のみ)に登場。…ナインだけ先生やってねえ!ナイン役の入野自由さんのスケジュールが確保できなかったとかだろうか。ジャンナインは『ウルトラマンギンガ』に登場もしているとは言え、ウルティメイトフォースの中では追加戦士ポジションで映画初登場の奴らと比べると若干格落ちしてるので、尚更こうした格差は設けないでほしかった(前期OPでもナインのみ個別のシーンがなかった)。なお、『ウルクロ』ではゼロシリーズの中では『キラーザビートスター』のみ全く映像が流れなかった。確かに『キラーザビートスター』は映像として派手ではないし、ナインの紹介は『ゼロファイト』だけで間に合うのもそれはそうなのだが、何となくツいてないなあ…という感想にはなってしまう。

ウルトラヒーローシリーズ 12 ジャンナイン

ウルトラヒーローシリーズ 12 ジャンナイン

  • 発売日: 2013/06/29
  • メディア: おもちゃ&ホビー

 以上のようにピンでナビゲーターを務めるという画期性はあったものの、それに見合う出番であったかと言うと疑問なしとはしません。まあ今やフランクなウルトラマンゼロもナビゲーター当初の『ウルトラマン列伝』1クール目は堅かったですからね。元からフリーダムな関智一グレンファイヤーと比べると、緑川ミラーや神谷ジャンはナビゲーターとして弾ける前に出番が終わってしまったと言えるかもしれないです(掛け合いと比べてどこまでアドリブを飛ばせるのかなども感覚が必要でしょうしね)。
 ちなみに列伝・クロニクルシリーズでは池田遼さんや足木淳一郎さんが構成を務めることが多かったのですが、『ウルクロ』では伊藤公志さんが多く構成を務めています。こうしたところもミラーやジャンの台詞のちょっとした違和感に影響した可能性はあります。
 そういうわけで『ウルクロ』の番組としての当否はともかく(私はゼロもジードも好きなので毎週観られたのは楽しいことでした)、ウルティメイトフォースゼロのファン視点からすると「やってくれたのはうれしいけど、やった内容には全然満足できない」という感想になります。ジャンナインにも先生として来てほしかったですし、これはまあ想像ではありますが、4話がジャンボット先生を予告していたのを思うとどうしても、『サーガ』は本来4・5話をジャンボット、6・7話をジャンナインが先生やるはずだったのではないか等の疑念も拭えない。番組としては同じでもゼロと他のウルティメイトフォースゼロのメンバーに直接的な絡みがなかったのも初めてではないですかね。ただ、それがキャラクターとしてのコクに繋がっているかと言うとそうでもなく評価として難の方に傾くかな。
 しかし、完全にウルティメイトフォースゼロの存在が捨象されたわけではなく、『劇場版ウルトラマンR/B』を紹介した22話では話を初めて聞くゼロが「ウルティメイトフォースの奴らへの土産話にもなりそうだ」、『ウルトラマンZ』へ向けてZの力となるウルトラヒーローを紹介した23話(最終回)ではゼロが「今」はウルティメイトフォースゼロと共に戦っていることを語り(流れたレギオノイドとの戦いの映像は『新ウルトラマン列伝』の時のもの)「この番組を見てくれた君たちは当然知ってるよな!」など、最後の2話で触れてくれました。すごくさらっとしていますが、正直言うとピンでナビゲに来てくれるよりもこっちの方が実りは大きいのではないかと思えます。
 と言うのはこれまでゼロが客演する中で今一つウルティメイトフォースゼロの「現在」で不明瞭だったものが、この2つでだいぶフォローになっているからです。ウルトラマンゼロがニュージェネに客演する中でウルティメイトフォースゼロの存在は(『劇場版ウルトラマンジード』を除いて)ほとんど触れられず、ゼロは光の国にいることも多かったため、ニュージェネレーションの「現在」における奴らの扱いというのは明言されることがほとんどなかったわけです。こうした中『劇場版ウルトラマンジード』で組織として機能し続けていることが示されたのが大きかったのは以前に述べたことがあります。中でもゼロが「サイドスペースはジードがいるから大丈夫だ」という旨を語ったことがあり、ウルティメイトフォースゼロはウルトラマンオーブジードを認知していたことから、ゼロから話を聞いていることは想像は出来ました。
 ただし、それが今回「ゼロはウルティメイトフォースゼロとして活動を続けているし、メンバーに新ウルトラマンの話もしている」と直接的に明言されたのは(あくまでクロニクルの中に留まるものではありますが)意義深いと思えます。言わば、今後の客演でゼロ一人だけが客演してウルティメイトフォースゼロの存在が全く匂わせられなかったとしても、ゼロはそこ以外ではウルティメイトフォースゼロと協働するし、そこでの出来事も話すんだろうなと考えることが出来るようになります。以前からレオやビクトリー相手にはそういったことを匂わせる台詞や演出はあったんですが、奴らにもそういった下地が出来たのは有意義ではあります。

(※補足:この記事の中では8話以降ウルティメイトフォースゼロがビヨンド学園に来なかったことを論っているが、22話と23話で触れられたことから思うに、本来はここらあたりで再登場していた可能性もある。本年は新型コロナウィルス・COVID-19の感染拡大防止のため『ウルクロ』終盤のビヨンド学園パートは実写では消滅してしまっており、そうした点が障害になった可能性は考慮されるべきではある。)

まとめ

 地道に顔を売っていたところに久々に映像出演が来てここらでドバっと来るか!と思ったら、久々の映像出演でもやっぱり地道に顔を売りに来ていたという感慨ですかね。出ないより出る方がマシなのはその通りなのですが、出るからには何かやってほしいという思いもあり、ままならないものです。
 そしていよいよ『ウルトラマンZ』が放送開始です。私個人としてはゼロやジードの活躍も楽しみですが、何より優先されるべきなのは新ヒーローゼットや仲間たちの活躍であり、そういう意味ではゼロやジードが必要以上に出張ったりするのは避けてほしい、ゼロやジードが泥をかぶるのは嫌ですけど「新作」としてはゼットの活躍が優先されるべきと考えています。こうしたある種のポリシー(ってほどのものでもないが)からすると私は『Z』にウルティメイトフォースゼロが登場することは特に望んではいません。出て欲しくないと言っているのではなく、もちろん出て欲しいし、そういったところを的確に処理できれば大歓迎ではあります。しかし、奴らが出てしまうとそれは『Z』本来の流れにはならないんじゃないかという思いがあるからです。だとするとやっぱりファイト枠か来年あるかどうかわからない*3映画に期待ということになるかなあ。
 …と思っていたら、『ウルトラマンZ』にもボイスドラマの配信があり、ゼロとゼットの出会いを描くとのこと。これは…奴らが出るのにうってつけすぎるじゃないですか!もちろんまだ出ると決まったわけでもなんでもないですが、新しい「供給」には敏感でいたいですね。

*1:今から思えば『Z』への充電期間みたいなものですかね

*2:過去の『新ウルトラマン列伝』でも5人揃ったのに言葉を発したのはゼロとグレンだけということがあった

*3:何せ『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』も未だ公開できていない