志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

『劇場版ウルトラマンジード』にウルティメイトフォースゼロが登場した「意味」はあったのか

1 はじめに
 平成30年(2018)3月10日、『劇場版ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』が劇場公開されました。この映画には色々と見所があったかと思いますが、私が注目していたのはウルティメイトフォースゼロのヒーローたちが登場するということでした(それ以外の要素は無価値だと言っているわけではありませんので誤解なさらないようにお願いします)。『ウルトラマンギンガ』のジャンナインや『新ウルトラマン列伝』でのナビゲートパートなどを除けば、ウルティメイトフォースゼロの新作への出演は実に平成25年(2013)3月に最終回を迎えた『ウルトラゼロファイト』以来、すなわち5年振りという登場でした。ああ、長かった…
 ところで『劇場版ジード』へのウルティメイトフォースゼロの登場は公開前に特に目玉として推されているわけではありませんでした。平成29年(2017)11月末に映画の初報が出た段階で「声の出演」に緑川光神谷浩史関智一入野自由という錚々たる名前があり、もうほとんど登場がバレていたにも関わらず*1、「ウルティメイトフォースゼロも登場!」というトピックが宣伝されることはほとんどなく(雑誌等では登場するよという情報はありましたし、出演者インタビューでも触れられてはいましたが)、『ウルトラマンオーブTHE CHRONICLE』内で光線を発射する予告映像が流れて初めて登場を知る人もいました。実際声付きで喋るのは確定として「それ以上」がどこまで望めるのか?というのは公開前の時点ではいま一つ判然とせず、その一方で先行上映組からは「ウルトラマンゼロの新作としても見られるものになっている」「ウルティメイトフォースゼロのファンなら観るべきだ」などの感想もあり、逆にそれならなぜどういう登場をするのかがあまり漏れ聞こえてこないのか、不思議でした。
 そのような疑問は実際に公開初日に映画を観て「なるほど、そういうことか」と色々と納得できました。何が「そういうこと」なのかは追って話していきますが、映画を観た後に最も気になったのは「この映画を観た人はウルティメイトフォースゼロの出番をどう思ってくれたのだろうか?」ということです。幸いにして私が観た時は他の観客(大人も子供も)の奴らの言動への反応は良く、適当に感想を漁っても好意的なものがほとんどでとりあえずはほっとしました。
 ただ、それでもチラホラ「出た意味なくない?」「登場してうれしかった。終わり」など「登場した意味」がなかったのではないかという感想も目につきました。また、好意的な感想に見えても「最後のアレがやりたくて出したんだろ?」といったものは、穿って見ると「最後のアレ以外出た意味ないよな」とも取れるわけです。私はこの映画のスタッフでも何でもない一観客ですが、ウルティメイトフォースゼロのファンでもありこういう意見を見てしまうと「痛いところだな」と思ってしまうわけです。
 というわけでわざわざ「登場した意味」はあったのか、あるのならどういうところにあるのか、一ファンとしての存念を(自己満足として)語っていこうというのがこのコラムです。理解がある方のみお付き合いください。

2 ウルティメイトフォースゼロとは―『劇場版ジード』までの前史
 と、本題に入って行く前に、私にとってウルティメイトフォースゼロはどうあるべきだったのか、それにこれまでの展開がどの程度応えてくれたのかを語ろうと思います。この「前提」を理解してくれないとおそらく話が噛み合いません。悪しからず。
 まず、ウルティメイトフォースゼロとは何か。奴らは平成22年(2010)公開の映画ウルトラマンゼロTHE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国で初登場を果たしました。この映画の主人公であるウルトラマンゼロは宿敵ベリアルを追って別の宇宙・アナザースペースへと旅立ち、そこでジャンボット、グレンファイヤー、ミラーナイトといったウルトラマンではないヒーローたちと出会い、協力してベリアル銀河帝国を倒します。そして映画のラスト、ウルトラマンゼロは戦いの舞台であった惑星エスメラルダから去ります。宇宙空間を飛ぶゼロを並走(並飛行?)しつつ、グレンファイヤーらが現れ声をかけてきます。ここからの流れが大事ですので、全部書き出してしまいます。

グレン「よう、お前別の宇宙から来たんだって?もう帰るのか?」
ミラー「平和な世界に自分の居場所はない。そうですね?」
ジャン「まだ全てが平和になったわけではないぞ。ダークゴーネやアイアロンみたいなやつはいっぱいいる」
ゼロ「ふん…俺は新しい宇宙警備隊を作る!お前ら、仲間になれ!」
石坂浩二「彼らがいつか訪れる宇宙は君の心の中にある」
ゼロ「俺達はウルティメイトフォースゼロだ!」

 こうして「新しい宇宙警備隊」ウルティメイトフォースゼロが結成されたのです。短い会話ですが、重要な要素を孕んでいます。わかりやすく箇条書きにしてみましょう。

  • ウルトラマンゼロは光の国のある「ウルトラギャラクシー」には帰還せず、アナザースペースに留まること
  • 『ゼロTHE MOVIE』で初登場したグレン、ミラー、ジャンといったヒーローは一映画のゲストキャラ止まりではなく、「ゼロの仲間」としてレギュラーポジション(あるいはそれに近い位置)を与えられたこと
  • ウルティメイトフォースゼロはアナザースペースを拠点とする「宇宙警備隊」でありながら、「別の宇宙」(マルチバース)を訪れる可能性があること
  • ウルティメイトフォースゼロとしての次回作が匂わされていること

 ところが、『ゼロTHE MOVIE』は前作『ウルトラ銀河伝説』よりも興業成績が下がったこともあり、新生組織であるウルティメイトフォースゼロの展開はいきなり苦境に立たされます。映画としての次回作である『ウルトラマンサーガ』は一般知名度の高いつるの剛士ウルトラマンダイナ)、杉浦太陽ウルトラマンコスモス)、AKB48(以上、敬称略)の起用やウルトラマンゼロが初めて地球に訪れるといった内容から、ウルティメイトフォースゼロの登場は実現せず(ちなみにウルティメイトフォースゼロを登場させる案は存在しました。後述)、「ゼロの仲間」としてのレギュラーポジションやウルティメイトフォースゼロとしての組織的な行動は触れられませんでした。ただし、一方でウルティメイトフォースゼロの展開が捨てられたわけではなく、OVウルトラマンゼロ外伝 キラーザビートスター』では主役としてフィーチャーされ、新たな仲間ジャンナインが加わります。『キラーザビートスター』ではゼロがアナザースペースを「俺達の宇宙」と呼んでいたり、ウルティメイトフォースゼロが本家宇宙警備隊に認知されていたり、『ゼロTHE MOVIE』ラストの要素をさらに深化させる描写があります(それだけにそのあたりを全く触れなかった『サーガ』には落差がありました)。
 そして、『サーガ』後のウルトラシリーズは1年1回の映画よりもTVシリーズ復活に舵を切って行くことになります。手始めとして『ウルトラマン列伝』内の3分TVシリーズ『ウルトラゼロファイト』の放送がスタートしますが、第1部「新たなる力」は『サーガ』の後日談要素が強く、また3分番組という時間的制約からウルトラマンゼロ単身の戦いが描かれました。ただし、第1部最終回で力の意味を悟ったゼロを迎えにウルティメイトフォースゼロが集結し、ともにアナザースペースへと帰還します。ここに至って『サーガ』後初めてウルティメイトフォースゼロの存在が再アピールされます。第2部はウルティメイトフォースゼロの集団戦ということも明かされ、『キラーザビートスター』後どのような描写がされるのか期待が高まります。そうして期待された第2部でのウルティメイトフォースゼロの戦いでしたが、ライバルチーム・ダークネスファイブの登場も束の間、ゼロの身体を乗っ取ったベリアルによって全滅させられてしまいます。ゼロがシャイニングウルトラマンゼロへと覚醒したことにより、一度は全滅したウルティメイトフォースゼロも復活するのですが、単純な戦績としてはケチが付く格好になりました。『ウルトラゼロファイト』はダークネスファイブが生き残ったり、ベリアルが甦って終わったりとあからさまに続編が期待される終わり方でしたが、平成25年(2013)からは30分のTVシリーズウルトラマンギンガ』が始まり、以後このTVシリーズ復活の流れが恒常化したこともあって、ウルトラマンゼロを主役とするシリーズ展開は一旦終止符が打たれることになりました。
 長々と書いてしまって恐縮ですが、『ゼロTHE MOVIE』後のウルティメイトフォースゼロの映像作品の展開としては、OV『キラーザビートスター』とTVシリーズ『ウルトラゼロファイト』の2作のみに留まりました。とは言え、この2作の実りは少ないものでもありません。

  • 仲間が増える(ジャンナインやモロボシくん)、ライバルチームが登場する(ダークネスファイブ)、基地が出来る(マイティベース)、歌が作られる(「奴らがウルティメイトフォースゼロ!」)、などチームとして充実していっている
  • 敵ロボットを仲間にする、全滅展開をゼロの覚醒のきっかけにするなど、ウルティメイトフォースゼロだからこそ出来る展開、演出にはなっている

などが挙げられるでしょうか。一方で描写が足りない!というところもあります。

  • ウルティメイトフォースゼロの普段の組織的活動が見えない(普段はそれぞれのメンバーが独自に動いていると言われていますが、直接の描写がなく具体性を欠く)
  • 本家宇宙警備隊から認知されたものの、具体的な関係性は不明なまま
  • 『キラーザビートスター』も『ウルトラゼロファイト』もストーリー的な要員であり、バトル面での文句なしの活躍は出来なかった(見せられなかった)
  • ウルトラマンゼロ作品のレギュラーポジションを確立できなかった

 ウルトラマンゼロは結局自分のTVシリーズを持つことが出来ず、映像作品展開も確約があるわけではありませんでした。その制約の中で制作陣は「今だからやれること」と「シリーズに膨らみを持たせること」を心がけて作品を作ってきたと言えます。しかしながら、どれだけ頑張っても限界というものはあるわけです。ウルティメイトフォースゼロの展開に不備が残ったのも、制約の中手が届かなかった点と言えるでしょう。
 その後、ウルトラマンゼロは『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』への登場を皮切りにウルトラマンギンガ、ウルトラマンビクトリー、ウルトラマンエックス、ウルトラマンオーブといったニュージェネレーションのウルトラマンたちとも共演、共闘し、描写を深めていきます。ウルトラマンゼロは自前の新規TVシリーズにこそ恵まれませんでしたが、後続のウルトラマンたちと関わることで活躍の場を確保することに成功しました。
 ただし、その展開の中でウルティメイトフォースゼロが登場することはありませんでした。それどころか、ゼロは仲間の存在を匂わせることもなく、『ウルトラマンX』第5話では自分の所属を「宇宙警備隊」と名乗ったり、『ウルトラファイトオーブ 親子の力、おかりします!』ではウルトラマンオーブ=クレナイ ガイを宇宙警備隊に勧誘したりと本家宇宙警備隊所属をアピールする言動が散見されました。また、普段はアナザースペースにいるという描写もされず、基本的にそのウルトラマンの宇宙を訪れる形で登場し、そうでない時は光の国にいるなど、アナザースペースの本拠地としての側面も弱まりました。これらは「ウルティメイトフォースゼロの普段の組織活動」「本家宇宙警備隊との関係性」「レギュラーポジション確立の失敗」などの要素をピンポイントで狙い撃つものと言えます。ゼロのニュージェネレーションシリーズへの客演は「今」のウルティメイトフォースゼロがどうなっているのか全く示されない不安な時期でもありました。
 実は惜しいところはありました。残念ながら採用されなかった『ウルトラマンサーガ』におけるウルティメイトフォースゼロの登場案は、メモリアルBOX特典の絵コンテ集において確認することができますが、

  • アナザースペースをウルトラマンゼロの宇宙」と称していること
  • ウルティメイトフォースゼロがアナザースペースの平和を守る戦いをしていること
  • ゼロの旅立ちを見送り、「こっちは俺たちに任せろ!」のようなセリフがあること

など、「普段の組織活動」「バトル面での文句のない活躍」「アナザースペースを本拠地としている」をきちんとフォローしていました。この登場案が映像として世に出ていれば、ウルティメイトフォースゼロにもまた違った展開や感慨があったとも思えます*2(『ウルトラマンサーガ』を一本の映画としてまとめ上げ完成度を高くしようとしたスタッフの皆さんを責めているわけではありませんのであしからず)。
 以上だらだら書いてきましたがまとめますと、ウルティメイトフォースゼロはウルトラマンゼロの映像展開において組織としての定着を図ったものの、『ゼロTHE MOVIE』後のメイン作品が2作品に留まったこともあって成功せず、またニュージェネレーションシリーズにウルトラマンゼロが参戦する中でも存在を匂わせることが出来なかったため、存在感と細かい設定面に不備が残ったままであった。そのためそれらをフォローする新しい活躍が望まれていた(私が望んでいた、と同義)のです*3


3 『劇場版ウルトラマンジード』への登場と活躍
 そういうわけでウルティメイトフォースゼロは長らく位置付けが放置されたまま出番もなく、もしかして忘れられているのでは?という不安さえ覚える年々でした*4。『ウルトラマンオーブ』の後番組として平成29年(2017)『ウルトラマンゼロTHE CHRONICLE』が始まり、ジャンナイン以外のウルティメイトフォースゼロのメンバーも4月にウルトラヒーローシリーズのソフビ人形に定番入りし、7月から放送開始の『ウルトラマンジード』の初報が流れ始めた時「もしかしたら出られるのかもしれない」と淡い期待に身を寄せ、それでも『ウルトラマンジード』が終盤に差し掛かっても登場することはなく(とは言え実はTVの『ジード』でもウルティメイトフォースゼロが画面に映り、ゼロが「ウルティメイトフォースゼロ」と発言したシーンがあります。どこか探してみよう!)*5「やっぱりダメかな」と思い始め…*6。そういう流れで来ていたので、『劇場版ウルトラマンジード』の声の出演に歴々たる名前を見つけた時にはもう何とも言えないような興奮に脳髄を支配されました。ただし、一方で熱気が収まると疑問が湧いてきました。もう出演は確定したにも関わらず(流石にここまで揃えて別のキャラということはないだろう)、チラシやホームページにはウルティメイトフォースゼロは欠片すら出てなかったのです。この段階では西岡徳馬ウルトラの父)、池田昌子ウルトラの母)、田中秀幸ゾフィー)さんたちも同じ扱いでしたが、出るとしてもそれほど大きい扱いではないのも確定してしまったと言えます。ただそれにしても単なるコント会話要員にすぎないのか、ある程度ストーリーにも関わるのか未知数の状態に置かれることになりました。
 新しい情報が出たのは12月29日発売の『宇宙船』においてでした。そこには一枚の写真ながらウルティメイトフォースゼロが揃って沖縄セットに降り立っているスチールがあり、やっと登場が正式に確定しました。さらに朝倉リク役の濱田龍臣くんや坂本浩一監督のインタビュー内容から、リクとウルティメイトフォースゼロの会話シーンがあることも判明。こうして「登場が確定」「地球に来る」「リクと話す」というどれもさらりとしながらかなり重大な事項が明らかになりました。また、1月18日には公式サイトの登場キャラクター欄が更新され、宇宙空間のどこかの岩場に集合しているスチール(このコラムのアイキャッチ画像としても使わせてもらっているもの)と「ウルトラの父の命を受けてギルバリス軍団と戦うこと」が記されました。2月8日には第2弾PVも公開されてサイバー惑星に向かって合体光線を撃つ映像が見られ、技を披露するところまで期待度が上昇しました。
 これが劇場公開までに公開された『劇場版ウルトラマンジード』におけるウルティメイトフォースゼロの全てと言っていいでしょう*7。ただこれらの公開要素はそれぞれがバラバラの要素でもありました。地球に来るタイミングは映画の中のいつなのか?*8ギルバリス軍団との戦いは描かれるのか?サイバー惑星への合体光線は何を意図しているのか?
 私としては、ゼロがジードとオーブの救援に駆け付けた後、一時休憩中にウルティメイトフォースゼロを連れてくる→残っている沖縄のギャラクトロン軍団を倒してもらう→サイバー惑星クシアに侵入する穴をあけるために同時光線を放ち、ジード、オーブ、ゼロに通って戦ってもらう→戦いが終わった後にリクと話す…くらいの扱いかと予想していました。
 では、実際の映画ではどうだったのでしょうか。実際に観てみると色々と唸らされる作りになっていました。予告映像からのミスリードといいますか、この場面、この台詞はここに来るのかというところに意外性が強かった映画だったと思います。ウルティメイトフォースゼロの扱いもその一つであり、上の私の予想は「戦いが終わった後にリクと話す」くらいしか当たっていませんでした。
 具体的に見て行きましょう。光の国でウルトラの父、母、ゾフィーたち、宇宙警備隊がギルバリス軍団の動向を話し、宇宙レベルの脅威であることを印象付けます。その直後にいきなりウルティメイトフォースゼロの戦いが挟まります。ジャンナインがジャンバスター、ミラーナイトがミラーナイフ、ジャンボットがジャンミサイル、グレンファイヤーが火炎放射、ウルトラマンゼロがワイドゼロショットを放ち、ギャラクトロンの軍団を倒していきます。ギャラクトロンが爆発するのを背景にしつつ5人揃ってキメポーズ…何だかオープニング映像のラストのキメカットみたいですね。その後公式サイトの紹介スチールにも使われた岩場での会話に移ります。この会話は全員が喋りつつ手短なものでしたが、アナザースペースでギャラクトロン相手の防衛を成功させていることやジードの存在を知りつつもゼロがジードを信頼しわざわざ助けには行かないことを述べます。ここまでがウルティメイトフォースゼロ登場の第一場面です。
 さて、もうここまでで「元は取ったな」と思うような要素が揃っているのを感じます。まず、ウルティメイトフォースゼロがアナザースペースを守るために強敵と戦い倒すという単純なようでこれまでほとんど描かれていなかった描写、これが見たかった!しかも坂本浩一監督の演出でこれまでに「この演出奴らでもやってくれないかな」と思っていたような演出揃いです。ウルトラマンゼロがアナザースペースに居り、TVシリーズで共闘したウルトラマンジードのことをウルティメイトフォースゼロが認知しているのも見逃せないところです。奴ら、ちゃんとウルトラの「今」に食い込んでます。
 その後はまたジードの世界(サイドスペース)に描写が移り、ウルティメイトフォースゼロは一旦フェードアウトします。「紅き鋼」ギガファイナライザーを発見したギルバリスは自身が根城にしているサイバー惑星クシアごと地球に侵攻してきます。これを見たウルトラの父はウルティメイトフォースゼロに救援に向かうよう指令します。ウルティメイトゼロが時空に穴を開け、5人の戦士たちが地球を目前にした宇宙空間に現れます。しかし、サイバー惑星はすでに地球を覆いかけていました。たまらず、ウルトラマンゼロのみがサイバー惑星のバリアが地球を覆い尽くす前に単身地球に降り立ち、すでに戦っていたウルトラマンジードとオーブの救援に入ります。
 …
 えっ?
 何だ、それは。どういう判断だ。何とゼロ以外の4人は取り残され蚊帳の外です。「見守るしかないのか…」などと言いますが、ジャン兄弟は空間転移があるし、ミラーナイトは鏡を通じて出入りできるんじゃない?浮かぶ疑問を余所にグレンファイヤーたちは宇宙空間でジードたちの戦いを眺めるしかありませんでした。ちゃんとこんなところでもジャン兄弟のジェット噴射エフェクトが付いてるのが映画ならではの豪華さを感じますね(でも単に浮遊してるだけなら必要なかったと思う)。
 その後、ウルトラマンジードはウルティメイトファイナルに覚醒し、復活したゼロ、オーブとともにギルバリスへの戦いを挑みに行きます。これを見た、ウルティメイトフォースゼロの取り残された4人の面々は「最強光線、発射ァー!」とグレンスパーク、シルバークロス、ビームエメラルド、ジャンバスターをそれぞれサイバー惑星に放ちます。予告でも使われていた映像ですが、ギルバリス側にリアクションがないためどういう意味があるのかはよくわかりません。奴らの台詞的にはジードへの援護のはずなのですが…。ジード、ゼロ、オーブの三大ウルトラマンによってギルバリスが倒され、ウルティメイトフォースゼロの合体光線によってサイバー惑星も砕け散りますが、ここも流れとしてはギルバリスが倒されそのままサイバー惑星も機能を失ったように見えてしまい(勝利の流れの中、地球の報道も宇宙警備隊も「ジードを始めとするウルトラマンがやってくれました!」としか言わないのが致命的)、ウルティメイトフォースゼロの戦果というには確たるものが欠けます*9。ただ、サイバー惑星という巨大惑星を合体光線を浴びせ続け破壊したのはそれ自体が大戦果なうえ、それに伴ってサイバー化していた人間たちや都市が戻ってきたのは大きいので(明言が弱いのが難点ですが)そういうことにしておきましょう。
 さて、戦いが終わりウルティメイトフォースゼロは夕景の沖縄の海というとんでもなくロマンチックなスポットに降り立ちます。リクは「ありがとう、ゼロ、ウルティメイトフォースゼロ」と言いますが、感謝されてるってことはやっぱりウルティメイトフォースゼロの合体光線はちゃんと意味があったのかな。宇宙警備隊や地球の報道よりは誠実と言えるかもしれません。グレンファイヤーやミラーナイトがさも当然のような反応を返す中、ジャンボットはリクを見て訝しがり…。
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「ジャーン、ファイッ!」
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「…何か違うな」
(ガクッ)

 はい、失礼しました。
 いつかやるだろうな…あれやらないの?…やっぱりやるよな!と濱田龍臣くんにかこつけたネタがようやく実現しました(アドリブだろうけど、今になってリクとナオが似ているのを「あー、確かに…」と言いだすゼロ、ちょっと鈍くない?)。こうして無事ネタを消化した奴ら一行はレイトさんがお土産を持ってくるのを待たずに去っていきました。映画もこのままエンディングに入って行き、ちょっとしたエピローグはありますが幕を閉じます。
 さて、どう思いましたか?出た「意味」はあったでしょうか?
 この映画におけるウルティメイトフォースゼロの扱いの難点としては、本筋とも言えるウルトラマンジードの物語にほとんどコミットできていないことが挙げられます。ウルトラマンジード・朝倉リクはベリアルの息子としての運命に抗い、この映画ではウルトラマンとしても独り立ちを果たしました。しかし、ウルティメイトフォースゼロのメンバーは大気圏外から見ているだけでメッセージやエールを送ったりすることはありませんでした。ようやく戦いの後にした会話も楽屋ネタの回収のようなもので、例えばジャンナインなどは悪をルーツとする被造物としてジードにも思うところがあってもおかしくありませんが、特にそういったコメントを残すこともなく、残念というよりもったいない気がします(ただし、私個人としてはリクのナオネタはどこかでやるべきことでもありそれが優先されたのは大人の事情だとかスタッフがやりたかったとかそういう事情を除外しても当然の判断だと思います。私だってそりゃやるなら見たいし)。ただし、そのような扱いに留まったことでウルトラマンゼロのアナザースペースにおける新作」としては(短いですが)純度が上がっているというか、「ウルトラマンゼロの新作としても観られる」という評価にもなるのかな。『劇場版ウルトラマンジード』の物語の中ではウルティメイトフォースゼロは確かにいる「意味」はあまりありません(と書きましたが、もちろん「意味」が全くないわけではなく、宇宙規模の脅威を見せるという意味や、この映画ではヒーロー扱いのジャグラスジャグラーへの違和感を和らげるための外面的な措置としてウルトラマンではないヒーロー」が要請されたというのもあるでしょう)。平成30年(2018)3月に『ウルトラマンオーブTHE CHRONICLE』内で分割放送された『劇場版ウルトラマンオーブ』では放送時間の都合上エピローグやちょっとしたシーンはカットされていましたが、『劇場版ウルトラマンジード』分割放送でも同様の処置がなされるとした場合、ウルティメイトフォースゼロや光の国の宇宙警備隊のシーンが真っ先にカットの対象になる可能性が高いと言えます(もちろん将来的に分割放送する場合でもカットしないように頑張ってもらいたいものですが)。
 一方で『劇場版ジード』におけるウルティメイトフォースゼロは短い出番の中で、これまで足りてなかった描写をほぼ完全にフォローできています。本家宇宙警備隊との関係性は「別の宇宙に出撃可能な部隊」として位置づけられていることがわかりました(雑誌などでは「別働隊」という表現でしたが「遊撃隊」の方が近そう)。ゼロはちゃんとアナザースペースに留まっており、アナザースペースを防衛する戦いの中での活躍を見せています。地味ですが、この映画の中でウルティメイトフォースゼロの「アナザースペース担当警備隊」という側面と「宇宙を超えて戦う宇宙警備隊」という一見相反する側面を両方フォローできているのは鮮やかです。留保付きの成果ではありますが、サイバー惑星の撃破も奴ららしい規格外を成し遂げています。当たり前と言えば当たり前ですが、ウルティメイトフォースゼロの声優も全員オリジナルであり、台詞や立ち居振る舞いなども間違えていません。要するに、出たことで別に損もしていないし、それどころか明確に得の方が多いです。ウルティメイトフォースゼロとはこういう連中なのだ、というイロハを掴むには短時間ながら描写を揃えていると評価できます(ただし、互いに名前を呼んだり必殺技名を叫んだりすることがなく、個別の情報については不足感もあります。これに関しては時間的都合で仕方ないか)。
 以上をまとめますと、『劇場版ジード』の物語には関係がなくその中では「意味」のある動きをしていない一方で、これまでの描写不足の補完を兼ねた紹介としてはイイものが出来上がっている…と言ったところでしょうか(これを私は以前「限界まで膨れ上がったオマケ」と呼びました)。『ウルトラマンサーガ』であるはずだった出番を取り戻したとも言えるかもしれません。ソフビも定番入りしており新作に出たことで「ゼロの仲間」としての周知も進んだと思いますし(周知は進んだけど、新規ファンが付いたのか確信が持てないレベルなのがミソ)、「次」はもっとストーリー上も意味がある出番がもらえるとうれしいですね。
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4 補足・各論 ヒーロー談義
 さて、総論としては以上で終わりですが、語り足りてない気分があるのでもうちょっと続けます。
- ミラーナイト 「私は華麗に行かせてもらうよ?」
 あまり目立ちませんが、要所でキラリと光ることに定評がある鏡の騎士・ミラーナイト。今回の映画でも『ゼロTHE MOVIE』以来となるミラーナイフの使用でギャラクトロンを撃破したり、シルバークロスの連射芸を披露するなどその評価は健在です。ウルティメイトフォースゼロの中ではスーツアクター的にもオリジナルの力丸佳大さんが唯一入っているだろうと思われ、佇まいにも本物感が溢れます(と書いておいて実は違ったりしたら赤っ恥だな…)。説明がとても難しいのですが、オーラと言いますか、ミラーナイトの繊細さと図太さが両立できる独特さが今回の映画でも観ることが出来てとても良かったです。声優の緑川光さんが応援コメントで「自分好みのキャラクター」と言ってくれたのもうれしいことでした。

ウルトラヒーローシリーズ 38 ミラーナイト

ウルトラヒーローシリーズ 38 ミラーナイト

- ジャンボット 「すまないが「ジャンファイト!」と言ってみてくれないか?」
 今回の映画で目玉でもあったリクとジャンボットの出会い(再会?)。ちゃんとそこは描き切ってくれて楽しいシーンになったと思います。今回はジャンミサイルでギャラクトロンを攻撃していましたが、なぜか過去のジャンミサイルとは形状が違っていました。「やったな、兄弟!」と地味ながら弟のジャンナインと心を通わせたり、グレンファイヤーといつもの焼き鳥やり取りがあった(「どっか壊れてるんじゃねえのか?」には無反応なあたり、逆にもうお決まりの反応と化してますね…)のも関係性をさらりと示していました。そういえば、今回はジャンミサイル→グレンのファイヤー攻撃でギャラクトロンを倒していましたが、ギャラクトロンも鳥っぽさがあるのである意味焼き鳥戦法が実現しています。これは私の感慨ですが、映画館で聞く神谷浩史の声は頭に響いていいですね。
ウルトラヒーローシリーズ 39 ジャンボット

ウルトラヒーローシリーズ 39 ジャンボット

- グレンファイヤー 「効くとは思わなかったぜ!」
 年々ただの関智一と化していく炎の戦士グレンファイヤー*10。正直言うとあまりこの傾向は好きではなかったのですが、意外と劇場では老若男女問わずに受けていて「そういうのもありか」と考え直すことができました。今回の映画では全体的にウルティメイトフォースゼロの出番が少なく、そうした中で「奴らも出てたよな」と思わせるフックをグレンファイヤー…と言うか関智一さんのアドリブが担っていたようにも思います。脚本なのかアドリブなのか判然とはしませんが、ポーズを決めようと思ったらミラーナイトが前に出て邪魔されるのは『ウルトラマン列伝』第64話、新ヒーローの名前を覚えられないのは『新ウルトラマン列伝』第9話・第104話由来のネタであり、列伝作品からの輸入演出があるのはスタッフの勉強心(?)を感じました。初披露となった「ファイヤー!」と叫びながらの掌からの火炎放射、ちゃんと技名が付くといいですね。
ウルトラヒーローシリーズ 37 グレンファイヤー

ウルトラヒーローシリーズ 37 グレンファイヤー

- ジャンナイン 「…掃討終了」
 他の3人には台詞や演出などで語るトピックがある中影が薄めになってしまったジャンナイン。技もギャラクトロンとの戦闘とサイバー惑星への攻撃で同じジャンバスターを繰り返し使っており、武装をあまり生かすことは出来ませんでした。『ウルトラゼロファイト』や『ウルトラマンギンガ』ではジャンバスター時のバックル展開が誤魔化されていたので、今回さらりとバックル展開をしていたのは映画ならではの豪華さを感じましたね。相手は宇宙の平和を掲げ知的生命体を抹殺しようとする機械であり、前述した通りリクの出自とジャンナインは通じるところもありますので、ストーリーに関わろうと思えばものすごく関われるものを持っていましたが、それだけに制作側も扱いあぐねたのかもしれません。大きく印象に残るところではないですが、ギャラクトロンを倒した後のキメポーズで腕を上げて肩を揺らすいつもの動きをしていたり、ジャンボットの横でリクをまじまじと見つめたりするのは、ゴツい見た目の中に純粋さがあるジャンナインらしい場面でした。一方で今回のウルティメイトフォースゼロの挙動はオリジナル準拠なところが多いにも関わらず、ジャンナインのあの独特の飛行ポーズがスルーされたのは残念ではありました。
ウルトラヒーローシリーズ 12 ジャンナイン

ウルトラヒーローシリーズ 12 ジャンナイン

*1:ウルトラマンゼロシリーズに深く関わっていたプロデューサー・岡崎聖氏はイベントでこれはイカルス星人とグリッドマン、PALに優が出るんでしょ?とジョークを飛ばしたりもしていましたね

*2:なおこれらの登場案の一部は『ウルトラゼロファイト』での演出に生かされた部分もあります

*3:一応これらの期間も『新ウルトラマン列伝』の新撮パートでグレンファイヤーなどが登場したり、『大怪獣ラッシュ』においてダークネスファイブと戦ったりと展開がなかったわけではありません。ただ、どちらもおまけのような出番であり不備をフォローする新しい活躍と言えるものではありませんでした

*4:新作映像作品に出ないのを除けば、イベントなどでは出番もあり本当に忘れられていたわけではないことは言うまでもありません

*5:坂本浩一監督によればウルティメイトフォースゼロのTVの『ジード』登場案もあったが、消化不良になる危惧からやめたとのこと。賢明な判断だと思います

*6:誤解のないように言っておきますが、私は『ジード』にウルティメイトフォースゼロが出なかったからクソ!と言いたいわけではありません。『ジード』は確かにゼロとベリアルが大きく関わり、ゼロシリーズの続編と言える要素もありますが、あくまで完全新作のTVシリーズ作品であり、かつてのキャラクターを出すよりもリクやライハやペガといった新しい登場人物の活躍が優先されるべきです。実際に『ジード』はその期待に応え、新しい物語を紡いでくれたと思います

*7:本当は報道番組でジャンナインの攻撃シーンがチラッと映っていたりもうちょっとあるのが正確なところですが

*8:特にPVや事前情報ではゼロがジードとオーブの下に駆け付けそのまま最終決戦までその3人は固定かのようなところがあり、ウルティメイトフォースゼロを挟む余地が見えなかった

*9:『ウルトラ10勇士』ではエタルガーをウルトラマンギンガビクトリーが倒したのと同時に8大ウルトラマンが時空城を合体光線で破壊していましたので、役割分担の意図としては同じなのだろうと思われます。たぶん

*10:ご本人は「久しぶりの登場」「これからもちょいちょい出演できたらうれしい」と仰ってましたが、関智一グレンは他のメンバーと比べるとすでにちょいちょい出てたような気も