志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

『ウマ娘 プリティーダービー Season3』感想(第9話~第13話)・総評―ソシテミンナノ…?

※前回までの感想
monsterspace.hateblo.jp
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  • 第9話「迫る熱に押されて」

 文句なしの神回。キタサトがとりとめもない旅行をして行き着く先が「海の見える山」という両者が最初に言った行先が止揚されているのも素晴らしく、その場で全ての人に夢を届けたいという決意表明からの7話の意趣返しとなる宣戦布告。いい意味でのキタサンらしさとライバル関係の昇華としての天皇賞(春)。レースの描写もキタサンの王者っぷりが生かされていて最高だった。その後の握手とエンディングが「Ambitious World」。最後まで完璧じゃないか。というかもうこれがほぼ最終回だろ。本当の最終回はどうするんだろうな…。

  • 第10話「お祭り」

 ここから秋シニア3冠へ向けて!というところで半分箸休め回。シンボリクリスエスダイイチルビーニシノフラワーなどが喋りはしなかったがアニメ初登場を果たし、お化け屋敷や花嫁勢ぞろいでアプリの別衣装が使われるなどした。こういう取り組みもうれしいのだが、「今それをやっている場合なのか」と「ここまででちょいちょいやってくれよ」というのがノイズになってしまうな。いや、アニメでフラウンスが描かれたりするだけでも上がったので、サクラチヨノオーヤマニンゼファーが出てたらもうそれだけで満足できたとも思うが…。
 そしてもう一つの「お祭り」である宝塚記念サトノクラウンがいよいよ国内GⅠを初勝利するレースだが…。レース前に取って付けたような「そろそろ国内GⅠを勝たなくちゃ」という台詞に、勝つのにドラマがあるわけでもなく、勝っても通り一遍等に喜ぶだけという…。ぱかライブ内にて5話で勝ったリバーライトが可愛いという話題があったが、仮にもメインキャラなのにそれに毛が生えたような扱いでしかないとは…。宝塚記念はキタサンが9着と惨敗するレースで、クラちゃんと戦った結果敗北したわけではない。だからクラちゃんの勝利のフォーカスしていくのは限界があっただろうが…それにしても…。
 今回の内容とは直接関係ないが、そろそろここらへんでこの物語の主体はキタサンブラックのみであり、それを評価軸にするべきではないかと思い始める。今まで「ソシテミンナノ」はライバルがバチバチに競り合う歌のように聞こえていたが、絶望しても前を向くのも、みんなを笑顔にして輝くのも主体はキタサンブラックなのだ。「君に勝ちたい」とは、キタサンが一度自分を負かした相手である「君」に勝ちたいということで、「君」はキタサンブラックではないのだ。そう考えればストーリーが一本にストンと綺麗に落ちていくのではないか。その中でクラウン、シュヴァル、アースがどういう役回りを得るのか、そういう観点で秋天ジャパンカップも観て行くべきなのではなかろうか…というのが今回得た心境。

  • 第11話「決意」

 宝塚記念で惨敗を喫したキタサンブラック凱旋門賞に挑戦することを決めていたはずが、ダイヤを見送るのも浮かない表情。やがて経験のあるゴルシの教示を経てピークアウトを迎えたことを自覚。凱旋門賞を断念し秋のシニア3冠へ向かう…。
 ラストランに向けて話を作っていく中で宝塚記念惨敗と絡めてピークアウト設定が登場。3話のゴールドシップもここへ至るための伏線だったということになる。史実キタサンブラックは最後まで最強馬だったイメージもあり、物議を醸したが、ウマ娘は史実では何を考えていたかわからない競走馬に物を語らせることで紡ぐドラマというものがあるので、史実の陣営が「疲れていたのか?」と感じていたことも含め、ピークアウトという設定を使うのは上手く考えたものだと思う。実際、タイムがガクッと落ちたわけでもなく、客観的な真実としては何とも言えないようになっていて、「本当にピークアウトしているのか」は客観的にはぼかされたままのようにも見える。もっとも、視聴者が肉体も精神も完全な最強キタサンを見られたのは9話だけじゃんというのはどうなんだという気持ちもあるが…。
 史実では荒天の中サトノクラウンと叩き合った秋天はアニメ化最大の恩恵を受けて描かれた。レースを上手く支配できない中パワーで押し切って勝つキタサンは、春天との対比もあり素の能力の高さと劣化しきってはいないが劣化してしまっているという表現に昇華されていたし、前回は勝ったのに見せ方が空虚だったクラちゃんもライバルとして名レースを演じて輝いていた。泥だらけのレースはゲームではなかなか再現できないのもあり、アニメならではの位置付けと見せ方をされていたと思う。

 ピークアウトを自覚したキタサンは年内での引退を発表する。これを受けてシュヴァルグランは…というお話。シュヴァル回なのに何でサブタイトルは「キタサンブラック」なんだ?と思ったら、シュヴァルから見た「キタサンブラック」をこれでもかと描いたので間違いなく「キタサンブラック」だった。シュヴァルの「お前、世代の中心でいつも勝ってたくせにいなくなるなんてふざけんなよ」な思いはこれまでの流れからして正統なものだし、大嫌いから大好きの大胆告白からの意地の勝利は見せ方としてとても良かった、とは思う(「光の後ろ姿」が台詞にかぶさってしまって歌詞を生かし切れなかったのがややマイナスかな)。
 そういうわけでいい話だった、いい話だったとは思うのだが…。10話で「うん、これはキタサン主体で見るやつだな!」と思い直したところで、シュヴァルグランの完全メイン回が来てしまうのは当惑もあった。「そうか、ライバル回はやらなさそうだな」という諦観のところに100点のライバル回をお出しされると「えっ、出来るの!?やるつもりもあったんだ?」が先立ってしまうのだ。今回に限ってクラちゃんが、キタちゃんとは6回も走ってるし、寂しいし私も頑張りたい的なことを言うのも、そりゃ言って当然なのだが、10話・11話でその話をちゃんとですね…。OPの「勝ちたい」と言うキャラ変更も6話か7話のダイヤちゃんでもやってほしかった。
 なお、今回はかなりすっきりしていてキタサンはもう悩まずに「引退するからには最後まで全力で走る!」だし、商店街のキタちゃんファンの皆さんも「最後まで応援する!」だし、凱旋門賞惨敗のダイヤちゃんも「またゼロから再出発!」なので、前回までに起きたことは全部解決してしまった。最終回でやること残ってるのか?おかしい…めっちゃいい回だったはずが、全体の流れで見ると不安が渦巻いていく…。

  • 第13話「そしてあなたの…」

 そして来てしまった最終回。12話で「やること残ってるか?」と思っていたが、案の定あんまり残っていなかった。最初にスピカやチーム制の存在意義ある?と思っていた頃からすると、10話以上あるとスピカの存在意義も4割くらいにまでは上昇してきたが、それでも半分なのでスピカの皆さんが引退用の勝負服を作ってくれることの感慨や、ましてや「スピカに入って良かった」とキタサンに言わせるには、積み上げが全く足りていない。ラストランの有馬記念も元のレースが完全に勝ち切るだけのものなのもあり、どうしてもキタサン周りだけの見せ方になってしまってドラマとしてはそこまで…。60~70点だろうなと思いつつ80点くらいは見せてくれるかなと期待していたらやっぱり60~70点くらいかという感じ。ここまで事前予想を立てつつ、それが覆えされて「そう来たか」というのもアニメをリアルタイムで追いかける醍醐味だと思ってきたのだが、最終回に限ってそれがないのでどうにも気分が高揚しないままだった。
 ある意味最大のサプライズと言えば、2着のクイーンズリング該当ウマ娘が普通にウイニングライブに出て来て「ソシテミンナノ」を歌ったこと(歌声はなかったが)。ラストラン描写の懸念点として、2着の娘が「誰ー!?」になるので当然描写があるであろうウイニングライブが微妙になってしまうのではないかというのがあったのだが…まさかモブのままやるとは思わなかった。予想としてはRTTTに倣って通常のウイニングライブ後にキタちゃんが単独で「まつり」該当の新曲を披露するのかなと…。こういったところが最終回の「予想のままだとこうだけど流石にそれはしないだろう…いやするのかよ!」の最たるところとも言えようか。
 最後はドゥラ含む同期やダイヤちゃんと新入生を迎える「先輩」の立場になってお終い。作画も相俟ってこの終わり方は嫌いではないが、やっぱり1クールでキタちゃんが駆け抜けてしまったのはアニメ内展開とは別な意味で郷愁がある。2期からアプリまでキタちゃんはずっと愛すべき新入り・後輩だったのに、走り始めた途端もうお別れなんて…。そういう意味では3期で描かれた「キタサンブラックの物語」にはやっぱり不満があるのかもしれない。キタちゃんにはもっと走り続けて欲しかった…。


 そういうわけで全部観終わったので、以下キャラクターごとに寸評めいたものを語っていきたい。

 主人公のお祭り娘。その性質上もっとも内面が描かれた存在だが、どうにもうじうじしたイメージが先行してしまっている気がする。9話以降はそんなに悩んだりもしていないので、イメージ過剰と思われる(悩み展開自体はその解決が次の勝利に繋がるので正統なものである)し、そもそもどうせ女子中学生のメンタルなんだから不安定でもいいのではなかろうか。アプリの育成シナリオだって精神的に成長しつつもやっぱり不安定なまま3年を終える娘だっているわけだし…と考えたところでちょっと思うのは、ティーンの思春期を受け止める存在としてアプリではトレーナーが大きな存在としているため、マンツーマン・相互補完の関係が見せられるのに対して、本作のキタちゃんは必ずしもそうではなかったということ。たぶんそれに最も近かったのが2話のネイチャ先生だがキタちゃんがGⅠを勝ちだすともうついていけなくなってしまったし、テイオーたちは達観しているし、商店街の皆さんはキタちゃんを応援しつつも直接的に悩みをケアするわけではないし、沖野トレーナーも有機的な動きは出来なかった。
 本作のキタちゃんはつまるところ「孫」なんだろうと思う。有能で最強なんだけど、どこか不安定でほっとけない、だから評価が必ずしも高いわけではないが、おじいちゃんが見に来る時はいいとこをちゃんと見せてくれる自慢の存在。不安定なのは可愛げのはずだったが、視聴者の視座はそこまで高くないので齟齬が生まれがちだったということではないだろうか。
 …まあそれもあるが、より本質的には2期テイオーのシリアスな状況をギャグ演出でバランス取るやつをやろうとしたら、別にキタサンはケガとか客観的に良くない状況に置かれることがなかったので、落ち込みとギャグのバランスが自家撞着を起こしたような気もするが…。
 悪い面をあれやこれや語ってもあんま良くないので、各話で触れ得なかったこととして矢野妃菜喜さんの演技を挙げておきたい。感情の揺れ動きが激しかったキタサンの繊細な心情を上手に演じていたと思うし、9話春天の王者としての風格、11話・12話のピークアウトを迎えた中での走りなどは本当に作画と演技が一体になったハイレベルさだった。「ウマ娘が育てた」なんて烏滸がましくて言えないが、主演を経験して一回りも二回りも大きくなった感じがある。今季に入ってから無茶苦茶仕事多そうだが、今後も頑張って欲しい。
 あと、それだけに最終回感想でも言ったが、「まつり」該当の新曲があったとしてそれをどう歌えるのかは聞きたかったと思う。どこかでまた機会があれば良いな…。

 3期のもう1人の主人公枠。6話でやっと一族にGⅠ勝利をもたらす姿はアプリの育成シナリオでは見せられない部分なので、ここでようやく涙するというのもあわせてアニメだからこその描写だ。その後、7話・9話のキタサンとの対決もそれぞれが幼馴染ではない、ライバルとして、だからこその対決を見せてくれたと思う。一方で凱旋門賞以降はストーリー上の意義を見失ってしまったのは気にかかる。凱旋門賞惨敗のショックもそこまで描写されず「またやり直します」で落ちてしまったので、キタサンのピークアウト・ラストランに何ら絡めなかった。ダイヤちゃんが精神的に強い娘なのは皐月賞でもダービーでも描写されていたので、凱旋門賞で惨敗しようが「まだやるぜ」になるのはおかしくないが…こっちはこっちでメンタル強すぎない?13話がやること残っていなかったし、ラストランにダイヤちゃんを励ます文脈は入れた方が良かったのではないだろうか…。

 香港ヴァーズのレース描写はスルーされ、宝塚記念はキタサン惨敗にフォーカスが当たり、秋天の名勝負もキタサンに軍配なので最後までメイン回らしいメイン回がなかった(特に宝塚記念で取って付けたような描写しかなかったのは致命傷レベル)。最終的に「サトノ2号」の枠からキャラが伸び切らず、注目していた身からすると断腸の思いが残る…。
 まあ一応言っておくと、ウマ娘のクラちゃんは「逆境になるほど燃える」「時に鮮やかに事態を解決する」キャラなのに対して、史実通りに描くとそうした面を発揮できるレースというのはあんまりない。クラシック期の秋天のようにあえてチャレンジして惨敗という事例もあるし、道悪巧者と言っても道悪なレースを描かなきゃ出て来ないし…。ストーリー上キタサン引退の後にやる気を出していた描写もあったがジャパンカップは10着、有馬記念は13着に終わっていてとてもストーリーに生かせるような成績ではない。アプリではクラウン目線でレースを勝てる上に、シニア展開を1年に収めたのでまとまっているが、史実路線でキャラを生かしつつ描くのは難しかったとは言えるだろう(それでもメインキャラとして出すんなら難しいのを承知でちゃんと料理しろと思うよ!)。
 ただ、クラちゃんには英語と広東語のトリリンガルという設定もあり、アプリでは台詞に英語や広東語を自然に混ぜてくるのが、今回の3期ではその側面は全くなかった。…???いや何でだよ!そこはキャラの共通設定としてあるんじゃないの!?9話予告もクラちゃんは和歌解説をしていたが、本来ならここも英語か中国語の格言を引用する部分なんじゃなかろうか。3期でのクラちゃんはあんま恩恵を被れなかったが、トリリンガルなんて部分はすごくキャッチーにできる部分じゃないのか?なぜこんな食い違い(?)が発生したのかわからないが、どう繕ってもキャラもののアニメでキャラ把握に真摯じゃないなと思ってしまうぞ…。

 シュヴァルグランもストーリー上スポットが当たってきたのは7話くらいだったが、これまた史実上ではGⅠを勝つのがジャパンカップまで遅れるので、GⅠに勝てない焦りを12話連続で見せるわけにもいかないわけで、クラシック期が完全に空気になってしまったが、描き方としてはあり得べきものだろう。実際長々とキタサンブラックに付き合い、やっとこさGⅠ勝利を決めるというのはアプリ育成シナリオではやれないので、12話はアニメならではの描き方かつ「キタサンブラック主人公の中のシュヴァルグラン」(これまたアプリのキタサンの育成シナリオではシュヴァルはいない)として満点だったと思う。ラストランの有馬記念でもきっちり3着に入ったし、アニメメインキャラの恩恵は十分蒙れただろう。
 終わってみれば驚いたと言えば、結局ヴ三姉妹の馬主である佐々木主浩氏が全く出て来なかったことだろうか。解説で山本昌は出演しているし、野球ネタで存在の仄めかしくらいはするかなと(まあヴ三姉妹がフォーク投げてるのがその要素ではあるが)。

 サプライズ登場で話題をかっさらったドゥラメンテ。ただ活躍した1話では内面が描かれず、そのまま再登場がないまま5話でキタサンとライバルになるやその後故障で全く走らないので、キャラクターとして全く弾けないままという印象だ。外見としてはイケメン系と美少女のいいとこ取りだし、キャラだって一見のとっつきにくさはギャップ萌えを生み出せるはずで可能性はあるが…3期中ではキタサンとエアグルーヴとしかほぼ絡んでないから可能性もその範疇に留まってしまった(アプリではクラちゃんとは同室設定があり、イベントストーリー「アタシモミンナノ」ではシュヴァルと絡んでいるのでキャラの顔は多少広がっている)。登場即人気出て当たり前なのだ的にフィギュアやグッズが出てるけど大丈夫か?

 最強馬であるキタサンブラックの物語において、重賞すら勝ったことがない存在がわざわざ実名登場で出ているんだから、何かしらの存在意義があるはずだと言ったな?すみません…終わってみれば何もありませんでした…。これ偽名登場よりよっぽどか元の馬に失礼…いや関係者じゃないのに邪推はやめておこう。
 一応GⅠ未勝利ということでカノープスに入ったが、2話の時点でネイチャとキタサンが接触していたので、特段キタサンとカノープスの鎹になるわけでもなく、勝ったレースがあるわけでもないのでレース中のカッコいい場面も喜びを爆発させる場面もなく…モブが実名でした以上のものが何もない…。アプリでも登場することでようやく「美学を持つネタキャラ寄り」という輪郭が見えてきたくらいだ。
 繰り返し言うが、重賞すら勝っていないが長く走ってコアな人気を持つというのはキタサンとはまた違うレースとの付き合い方であり生き様で、その対比は面白くなったはずだ。メインキャラと言うより新顔をとりあえず一緒に出しましたくらいの扱いに終わったのは残念というより、もったいなさを強く感じる。

ウマ娘』3期とは何だったのか

 全体的な感触を簡潔に語ろうとすると、大筋ではやりたいことを全部やれないとわかっているので「キタサンブラックの物語」をシンプルにまとめているのに、各話ではあれもやりたいこれもやりたいという欲にムラがあって、全体的にチグハグとしてしまったといったところ。一言で言うとシリーズ構成の不調ということになるか。
 アニメで13話もあると思うと、どうしてもキタサンの話もできるし、ダイヤちゃん、クラちゃん、シュヴァル、アース、ドゥラメンテの5人の話も全部出来てしまうし、何ならアニメ未登場のウマ娘もサブとしてフォーカスを当てられるくらいに思ってしまうが、意外とやれることは少なかった。もちろん客観的な条件としてキタサンがクラシックから3年間、怪我もなくだいたいの大きなレースを走り切っているため、1クールに収めるとぎゅうぎゅうになってしまい、基本のキタサンだけで終わってしまうというのもある(実際そのため3期ではGⅡ以下のレースは実質全く描写されなかった)。ただそれにしてもやり方が下手だったのも間違いなく、特にクラウン・アースについてはメインキャラ扱いには足りなさすぎる。一方で、6話や10話など1話単位では様々なウマ娘を登場させその関係を描いたりも出来ていて、それが逆に全体として出来ていないことを引き立ててしまうと言うか…とにかく至らなかった。
 個人的には「キタサンブラックの物語」という大筋については、キタサンブラックと言えば最後の引き際が印象的なのも間違いないので「引退」で話を作った点、キタサンにしか出来ないという固有性やオリジナリティを評価していきたいところではある。一方で9話がストーリー的にもピークで、10話~13話では盛り上がりのピントが定まらないまま最終回は60~70点くらいで留まってしまった印象は否めない。単純に「ダメだった」よりも「もっとやれたのでは?」の方がお辛いですね。
 また、チーム制も3期ではほぼ完全に崩壊していた。1期では仮想敵としてリギルがあり、2期ではカノープスがスピカを追う立場として登場したが、3期ではそもそも対立軸がない。沖トレについても怪我を恐れていることはまだ1期・2期の残滓があるが特にストーリーでやることは残っていないので、トレーナーとウマ娘の関係でも非常に薄い。スピカの先輩はただ見ているだけでテイオー、マックイーン、ゴルシはまだストーリー上の見せ場があった方だが、他は…(スぺちゃんとか常にボケていたが、知ってる?この娘初代主人公なんやで…)。こんなんで最終回にスピカメンバーで新衣装作っても盛り上がるわけないじゃん!まだ商店街の皆さんに作ってもらった方が絡みが多いだけマシだったろ。
 カノープスについてもスピカ妥当、GⅠ勝利という目標があったはずだが、アースが何着だろうが「頑張った」と言うだけなので、いつの間にか目標もなくなってしまったらしい。思えば、GⅠ未勝利勢が集まってるチームとは別に悲願のGⅠ勝利を目指すサトノ家やGⅠ勝つのがクライマックスなシュヴァルグランがいるのも落ち着きがない。シュヴァルあたりはカノープスに入れて、アース含めたカノープスでフォローしつつチーム念願のGⅠ制覇を達成させるとか…チームをまともに機能させたいならそういう風にしても良かったと思うが…。どちらにせよカノープスは人気チームなのに自ら存在意義を捨てているようになっているのは気分が良くない。
 1話でテイオーはキタちゃんに「自分らしく、ね?」とエールを送った。憧れのトウカイテイオーではないキタサンブラックとしてスターになること。それがキタちゃん、引いては3期のオリジナルな味だ。制作陣の目指すところもそこだったはずだが、実際の3期は2期の幻影に縛られてしまった感がある。陽性なはずのキタちゃんを曇らせたりギャグの盛り込み方も2期の手法をそのまま使ってしまったが故だろうし、ネイチャやブルボンの続投も2期のフォローとして意味のある出番であり人気キャラの起用でもあったが、その分3期キャラの出番がなくなったというのも一面の真実ではあろう。結果として2期はカノープス、ブルボン、ライスといった人気キャラを生み出したが、3期ではシュヴァルがぎりぎり引っかかるかどうかで、3期のみで人気を獲得できたと言えるキャラはいないと思われる(キタサトだって本質的には2期からの続投なのだ)。これが全てで、キャラクターコンテンツとしての価値にすら関わるのではなかろうか。
 何だかここまで無茶苦茶厳しいことしか言っていないが、3期でも2話・4話・6話・9話は好きな話だし、11話・12話も光るところはあった。ただ、アプリでの育成シナリオ・イベントストーリーやRTTTもあり期待値を最初から高めに見積もっていたため、平均70点でも10点・20点マイナス評価になる。振り返ると1期も今の目線で見るとこんなもんだった気もするが、コンテンツもデカくなった今、そこを評価基準にはしたくない。4期があるとして早くても再来年になると思うが、2期や3期を引っ張るのではなく、4期は4期らしく多くの新しいウマ娘たちが活躍できることを望みたい。また、3期についてもクラウンやアース主体の外伝的な作品が作られるのなら是非とも歓迎したい気持ち。本体が微妙でも後付けの外伝・続編で本体の評価ともども盛り返せた例などいくらでもあるのだ(3期でも6話はそんな感じ)。3期もそういう再評価が早くできればいいと願っている。


 3期のお疲れ様でしたイラスト。キタちゃんは描いてる途中で「あ、これはもう仕上げられない」と思ったので普通にラフなままです。実馬のキタサンは写真を模写してたら馬面すぎて(そりゃそうだ)カッコよくならなかったので、程々にデフォルメを加えてます。とは言えウマ娘も馬も元々の「味」を出せているかは自信がなく、申し訳ない…。