ここまでの感想
- とりあえず4話かけて夢を託されるキャラ造型となったキタサンブラック
- 予想以上に2期からバトンタッチしてきてるな
- チームについては期待しない方が吉
- ここからは3期らしく新キャラで動かしていこうぜ
- 第5話「自分の証明」
1話~4話でキタサンがGⅠ勝てるくらいの自立を果たした上でのドゥラメンテとの邂逅。怪我から復帰したドゥラメンテだが、大事なのは凱旋門賞勝利への道程であり宝塚記念で走るのもキタサンブラックではなく、「同期の菊花賞」ウマ娘に勝って世代最強の名を盤石にするのが目的であった。ようやくドゥラメンテのキャラが描かれたが想像以上に取っつきづらい…もといもうほとんどコミュ障である。ただ、エアグルーヴとの呼び名が「グル姉」「ドゥラ」だっただけで、お互いの幼馴染的信頼関係を見せてきたのは上手かったと思う。
そして宝塚記念では結局ドゥラメンテでもキタサンでもない、マリ…リバーライトが勝つことになるが、思ったよりキタサンが強くてペースを乱し、キタサンはドゥラメンテしか見ていなかったので予想外の伏兵に敗れたという描き方。それでお互いライバル・友達と認め合うことになるという展開は素直にそうアレンジしてきたかといったところ(リバーライトさんは焦点から外れてしまったが)。ところでドゥラメンテはもう今後走らないんですけど、ここでライバル設定してどう生かしていくんでしょうか?まあ見ておけ…*1。
- 第6話「ダイヤモンド」
ついにサトノ家から誰もネームドが加わらないまま迎えてしまったサトノダイヤモンドがジンクスを打ち破る回。しかし、流石にまずいと思ったのか、過去にジンクスを打ち破れず敗退したサトノの先輩が2人、ジンクスを信じてしまっているサトノの後輩が2人、偽名すらない形で登場した。結局サトノ家がクラウン以来3期でも増えなかったのは(追加を信じていたので)落胆もいいところだったが、これが今回を描くにあたっては特にマイナスにならなかったのでわからないものである。
ジンクスを実力で打ち破ることに囚われたダイヤちゃんは奇行を重ねていくが、最終的にマックイーンに諭されることになる。時期柄阪神タイガースが数々のジンクスを破って日本一になっていたおかげで、マックイーンの言葉に謎の説得力が上乗せされてしまうのは笑ってしまったが…。シリアスなジンクスの重みとコミカルな流れとがマックイーンによって清算されたのは、きちんとした実力者である先輩の重みがある。
そして菊花賞を勝ち切ったダイヤは憚ることなく大泣きする。ウマ娘の号泣と言えば今年はRTTTのトップロードもあったが、あれは敗北による涙であった。ここまで皐月賞・ダービーを敗北していてもダイヤは気丈に来ていたが、ようやくジンクスを打破したことで、重圧の線が切れたことによる涙。そういう見せ方があるのかと思ったし、今回生えてきた先輩サトノのお姉さんたちも涙している連鎖もあって、かなり感動してしまった。思えばアプリの育成シナリオではゲームの都合上、初GⅠ勝利が菊花賞とは限らず、そのせいで皐月賞・ダービーを勝とうが「これではアカン」な無理筋にされてしまっていたりしたので、ダイヤが菊花賞を勝つのが感動的に描かれるのは今回が初めてなのだ。それだけの素晴らしい盛り上げをもらったものだと感慨深い。
「サトノのジンクス」が形を持って出てきたのは今回が初めてだし、それも偽名すら設定されないし唐突なものだったが、それでも1話もあればこれくらいは出来るというのは新鮮な驚きだった。これなら今後シュヴァルやクラウン、アースの回があってもその1話だけで何とかできるかもしれないな…。
- 第7話「あたしたちの有マ記念」
ダイヤちゃんが菊花賞を勝利し、キタちゃんがジャパンカップを勝利していよいよのキタサト対決回。しれっとクラちゃんの初GⅠである香港ヴァーズは描写が省略されてしまったが、致し方なし…*2。なお、クラちゃん曰くダイヤが勝って他のサトノの娘も調子が上がっているらしいので、同時期にレースを走ってる娘はいるらしい。えっ、いるの!?しかし、それならばここまでのチームカペラでダイヤ・クラウンしかいないのは一体…。何ですかね、カペラは2人ずつペアを組ませてお互いの交流を基本的に断つ育成方針とかなのか?実はサトノアラジンやサトノアレスもいましたという可能性が残されたのはうれしいが、これはこれで腑に落ち切らないな…。
それはともかく、ジンクスを打ち破って大きな夢を目指す、そのためにはキタちゃんもある種踏み台であるダイヤちゃんと、幼馴染ライバル対決しか見ていないキタちゃんの意識の差、そしてそれが有馬記念の勝敗にも反映されていくというのは残酷でもあった。これは史実通りだと凱旋門賞で惨敗するダイヤちゃんに対して、である。キタちゃんはロストシャイン→空のほほえみ方と心情が推移した歌が作られたのに対して、6話でダイヤちゃんが披露したのは「夢のこたえ」。ダイヤにももう1曲用意されているなら、心が折れる歌になるのではないか…。勝敗とは裏腹にそんな不穏さを感じるところではあった。
なお、今回でやっとヴィルシーナとヴィブロスがキャラクターとして登場。姉も妹もGⅠを取ってしまい焦燥感に駆られるシュヴァルグランが描かれた。7話にしてやっとシュヴァルグランの内面に踏み込んできて、この姉妹への負い目みたいなのは最初からキャラ造型として出しておいた方が良かったのではとわりと思うが、ヴィブロスがGⅠ勝つのはダイヤちゃんと同じ年の秋華賞なので時系列的にはここでやるしかないのよね。
ところでシチュエーションやみなみとますおの衣装が違うので、1周年アニバで製作されたアニメのラストの有馬記念は今回で完全にパラレルになったらしい(どうでもいいですね)。
- 第8話「ずっとあったもの」
前回の敗北直後はまだぎこちなかっただけだったキタサンだったが、今回は冒頭からいきなり落ち込んでいる。いつも通りと言うべきか、ネイチャ先生に相談するが、もはやGⅠを3つも勝っているキタちゃんにネイチャは実のあるアドバイスをすることが出来ない。結論から言うと、キタちゃんが夢を持たないことに悩みつつ、2話とは逆にネイチャ→テイオーと相談相手が推移する。ネイチャ的には2話でキタちゃんがGⅠを勝ってしまった時点でもう2期からの宿題は終えてしまっており、何を背負って走るかをドゥラメンテやテイオーといったガチ強者サイドとの交流で掴んでいくのは成長が感じられる(他のスピカの先輩やトレーナーのことは忘れておく…)。
このタイミングでレースが全くない回が出てきた(もう大阪杯はやらなさそう)のは驚きだったが、ここからはいよいよサトノダイヤモンド、サトノクラウン、シュヴァルグランと勝った負けたの展開が始まる(はず)。1話使って一息つけるのも最後であろうし、良い決意回になったのではないだろうか(今更やってる場合なのかは知らない)。
あと、どうでもいいことに属しますが、3期ネイチャは作画も美少女度合が高くて、前田佳織里さんの声の演技もとても澄んでいる。あれだけ酒飲んでるのによくこれだけ綺麗な声を出せるな…じゃなくて、ネイチャさんの魅力には3枚目なところもあると思っているので、キタサンフィルター越しとはいえ、グッドルッキングをアピールされるのはちょっと解釈がずれるところはあったりする。あ、差し入れがおしるこだったのはキングヘイローとの親交を感じられてそこはうれしかったです。
第8話までをふりかえって
各話感想だけを見てると、やることはやっているし、無駄があるというわけでもなく緻密に作られているとは思うが、何というかどこまでも地味な感じが拭えない。ゴールドアクターやマリアライトが偽名で勝っても、作中ではどうにも蚊帳の外になってしまう(この点、1期のダービーや秋天を勝ってしまうエルコンドルパサーは良改変の類だったのかもしれない)。既存ウマ娘もそこまで新しい出番がないし、キタサト以外のメインウマ娘も描写が深まっているとは言えない(姉妹や野球ネタがあるシュヴァルに比べると、クラちゃんは現段階でもトリリンガル、チャレンジングお姉さんなアプリの方が顔が多彩だ)。コパノリッキーがアニメ初登場を果たしたのはうれしかったが、アプリではキタサンと絡むことが多いバクシンオーやスイープトウショウが実のある形でストーリーに関わるのはもはやなさそうだ。アニメと言うともっと色々やれる気がしていたが、ここらへんキタサンがクラシックから3年も怪我もせずみっちり走っている過密さと1期・2期のチームを引き継いでいるのが「遊び」の身動きを取れなくしている。
さて、8話まで来ると「キタサンブラックの話」が有馬記念を全てのゴールに据えてそこから逆算して作っていることがわかってくる。「自分には夢がなくとも他の夢を背負って走り皆の愛バになる」のがキタサンブラックなのだ。そこは、別なウマ娘ではできない、キタサンブラック題材だからできるという側面で評価していきたい部分ではある(一番大事な評価軸は、ウマ娘がサムソンビッグで100人に到達した現在、「キタサンブラックじゃないとできない話」であることなのだ)。誇りと夢やプレッシャーのあるドゥラメンテやサトノ家、シュヴァルグランがネームドとしてピックアップされ、重賞を勝ったことのないサウンズオブアースがチョイスされたのも「キタサンブラックじゃないとできない物語」と深く関係するからだろう(たぶん)*3。そしてキタサンがグランプリレースだけここまで勝てていないのも史実である以上に有馬記念に向けた演出なのではなかろうか。だから、最終的に全ての平仄が合うだろうことについては心配はしていない。
その一方で、アプリをやっていると気になるのは「自分には夢がないが他人の夢を背負えるじゃん」はヒシミラクルというキタサン以上に極めたヤツが今年に出てしまっていること。より緩いキャラ付けであることやトレーナーやミラクルおじさんの存在、ミラ子本人がレースに夢を見ていない、走る動機付けもない、だからこその夢を集めてお好み焼きという独特な結実は間違いなくヒシミラクル最大の個性であるし、勝ちを目指す、レースに賭けるウマ娘の中で一際の輝きを持つ。3期がその域に至れるのかどうか、どうしてもミラ子がチラついてくるのだ。
キタサンブラックならではの差別化としては、キタサンにはライバルがいることだろう。ミラ子も同期にシンボリクリスエスやタニノギムレットがいたが、ボリクリは遥か上の存在になっている(直接関係ないが、ミラ子に夢がないと知ったボリクリが怒るんじゃなく、「じゃあ私の夢を一緒に見ないか?」してくるのはどこまでもいいヤツである)し、ギムレットはダービーの後フェードアウトしてしまう。それに比べるとキタサンはこれからクラウンやシュヴァルグランと対決するし、何よりサトノダイヤモンドの存在がある。同期とのぶつかり合い、同期からの想い、それらが存在に乗っかかっていくのは、(1クールの短さを思い知らされつつあるとは言え)1クールあるアニメだからこそ乗っていける部分だと思っている。
「1話あれば話はできる」という点で6話の存在が大きな支えになっている。あと5話も残っているのだから、サトノクラウン、シュヴァルグラン、それにドゥラメンテ、サウンズオブアースの話はやれるしできるはずだ。8話までの内容はオープニング映像とも「ソシテミンナノ」とも距離があるが、ドロナワで作っているわけじゃあるまいし、最後に辿り着く境地はライバルとの「勝ちたい」思いのぶつかり合いだろう。不安がないとは言わないが、不安を募らせても仕方ないので、最後の瞬間まで期待はしていきたい。