志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

兵庫県立美術館・特別展「ハリー・ポッターと魔法の歴史」

 Twitterでもあんまりアピールして(できて)いないが、私はハリー・ポッターシリーズにドハマりしていて、今でも1年に何回か突発的に全巻読破するくらいには愛着を持っている。まあ私と同世代±5~10歳くらいの人はだいたい皆ハリー・ポッターが好きだと思う。別に私個人の個性というわけでも何でもない。それくらい社会現象だった。
 ハリー・ポッターシリーズはすでに最終巻『死の秘宝』で完結しているが、完結から10年経った今でも展開は止まっていない。映画ではファンタスティックビーストシリーズがスピンオフとして続いているし、続編である「呪いの子」も世界で公演が行われ、また予定されている。
 今回訪れたハリー・ポッターと魔法の歴史」展もそうした展開の一つで、2017年にイギリス・大英図書館で開催された「Harry Potter: A History of Magic」の国際巡回展示となる。特定のトピックをテーマにした博物館展示が複数の博物館を巡回することはあるが、流石は世界のハリー・ポッター、巡回も国を超え長期間ということになる。
 これだけの規模の展示が神戸にやってくるんだから、私としては奇貨居くべし、行かなければならない。

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 そういうわけで行ってきました。
 感想を一言で言うと「面白かった」。何が?を騙る前に展示内容について説明しておく。
 展示内容としては三系統に分類されると思う。一つはハリー・ポッターシリーズに関するもので、作者JKローリングの原稿や構想を示したメモやイラスト、ジム・ケイ氏によるイメージボード的なもの。ローリング氏の原稿はもっと英語読めたら、最初はこうだったのをこう変えたのねがはっきりわかっただろうのでちょっともったいなかった(アルファベットは崩されていても読みやすいものではあった)。しかし、ローリング氏が構想段階で描いたイメージイラスト的なものは面白かった。ダンブルドアやマクゴナガル、ハグリッド、ダーズリー一家などのビジュアルは映画でのビジュアルが1991年段階からほとんどそのままな形で存在していたのがわかるし、『賢者の石』でハリーたちがフラッフィーと遭遇した時のイラストには3人組とネビルの他に後にディーンとなった同級生もおり(どうでもいいけど、男4人に女1人なので戦隊みたいな並びだった)、ローリングが当初はディーンを主役の一人にする構想を確かに持っていたことが窺える(これはポッターモアでローリング氏が語っていたと思う。結果的にネビルの話がメインになり、ディーンの父親探しの物語は深入りされなかった)。ちなみに私は原作からの感触でハーマイオニーは(元々)美人ではないと思っているので、別に美人ではない出っ歯強調ハーマイオニーが見られたのは、やっぱこれが原作ビジュアルだよなとちょっとうれしくなりました。ジム・ケイ氏のイラストも日本ではあまり見ないものだったが、最初期からハリー・ポッターの世界観をビジュアル化していたというもので、こんな初期から世界観構築がされていたんだなと感心した。映画以降のビジュアルと重なる部分も多い…というか、映画がこれをかなり基にしてるんでしょうね。
 展示内容二つ目は現実の歴史の中での魔法や魔術に関するであろうものである。魔術と見なされていたものや薬草や占いやUMAを象った事物は現実に存在しているので、これは正統な(?)博物館資料っぽい。日本からも河童や人魚のミイラが出品されております。錬金術を示した絵が何かの悪い夢みたいだった。ある意味科学史展示と言える。
 三つ目は魔術・魔法博物館からの出品物。正直よくわかっていないのだが、これらはフェイク、だと思う…。魔術・魔法博物館はイギリスのコーンウォールに実在の博物館らしいが、解説の文章を読む限り、魔法使いが実在した体でのグッズのようなものを集めているらしい。魔女が使ってた鍋や飛行用の箒が展示されていた。
 面白いのはこの三つが混ざり合うところである。ハリー・ポッターは当然ながら創作物なので、魔法や魔法使いは実在するわけではない…こんなこと書くのも無粋だが。それが実際に過去に魔法があった体で書かれた資料や魔法がある体で作られた資料が一緒に展示されていると、さもハリー・ポッターの世界が実際にあるかのような感触になる。実在のベゾアール石があるのも現実感を高めるし、実際のマンドレイクの根っこも人型に見えてきたりする。ジム・ケイ氏の描いたホグワーツの教師の肖像画が動き出してもおかしくない。そういう雰囲気の醸成には成功している。これはまさに魔法であり、ハリー・ポッターと魔法の歴史」そのままだった。
 ちなみに行ったのは平日昼間だが、それなりに混んでいた(平日昼間という時間もあってか、お客さんの9割は女性だったと思う。ローブを着てる人もいて気合入りすぎだろ!)。展示内容も濃密だったので、そんなにダラダラしていたつもりもないが、巡回にかかった時間は100分くらい。博物館展示としては結構ヘビーだ。
 行くには当日券もあるが前売券を前日までに買っておく方が無難。兵庫県立美術館での開催は11月7日までだが、12月18日からは東京ステーションギャラリーで開催なので、関東民は年末から春までをお楽しみに。

PS ちなみに奥の方から「ブーンブーン」というノイズが聞こえるが、音調の不調でも何でもなく、奥のエリア(第5章)でスニッチが飛んでいる音である。スニッチはプロジェクター投影で飛んでいる映像が映し出されているものだが、ちゃんと飛んでいるところから音がする音響になっている。スゴイ。