志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

デジタルモンスターXの参戦デジモン考

 デジタルモンスターX平成31年(2019)3月発送予定の育成ゲーム玩具である。平成最後のデジモンギアという名誉なのか不名誉なのかよくわからない称号を持つことになる育成ギアである。
p-bandai.jp
※なお、この記事が上がる時点では受注は終了している。今知って「欲しい!」と思った人は残念でしたね。再販に賭けましょう。でもこの記事はこのデジタルモンスターXのはっきり言ってネガキャンなので、読みたくない人はここでお去りくださる方が賢明かと思います。


 さて、そのデジタルモンスターX(以下、デジモンX)である。デジモンXはガワはデジタルモンスターVer.20thの流用、いわゆる初代デジモンと同じなのでわかりにくいが、実にデジモンツイン以来12年ぶり完全新作の育成ギアである*1
 もっとも完全新作とは言え、近年は復刻+αとして、先に触れたデジタルモンスターVer.20thデジモンペンデュラムVer.20thが発売されており、育成ゲームの基盤としては存在していた。デジモンXもこれらを流用しつつ、育成ゲームとしてはそれなりの出来栄えなのではないかと期待しているが、今の段階ではわからないのでここでは触れない。
 問題なのは登場デジモンである。デジタルモンスターVer.20thやデジモンペンデュラムVer.20thは基本的に20年前のデジタルモンスターデジモンペンデュラムの復刻であり、登場デジモンや進化系譜も流用されていた。追加デジタマ組の進化が一本道ルートであったり、究極体が存在しない初代デジモンに追加された新規究極体のメンツには難があったりもしたが、今のスタッフの「登場デジモンを選ぶ能力」は露呈しなかったわけだ*2
 しかるに、12年ぶりの完全新作、すなわち12年ぶりに考えられた登場デジモンチョイスとはいかなるものか。公式は畏くも発売前に全部バラしてくれた(モンモンメモ!!Vol.28 「デジタルモンスターX」大解剖!! | デジモンウェブ | バンダイ公式サイト)。
 それがこいつらだ!!!

<<ホワイト>>

幼年期Ⅰ 幼年期Ⅱ 成長期 成熟期 完全体 究極体 究極体
プットモン トコモンX ガブモンX ダメモン⇔ツワーモン メタルティラノモンX エスモンX アルファモン
    ドラコモンX トブキャットモン ヤタガラモン ヴァロドゥルモン オメガモンX
    シスタモンブラン ライノモンX ワーガルルモンX ベリアルヴァンデモン デュークモンX
      グラウモンX リリモンX ラフレシモン ディアボロモンX
      シスタモンシエル メガログラウモンX プラチナヌメモン ロードナイトモンX
        チョ・ハッカイモン クレニアムモンX  
          メタルガルルモンX  
          メギドラモンX  
          ベルスターモンX

<<ブラック>>

幼年期Ⅰ 幼年期Ⅱ 成長期 成熟期 完全体 究極体 究極体
プットモン トコモンX アグモンX ダメモン⇔ツワーモン メタルティラノモンX エスモンX アルファモン
    レナモンX トブキャットモン ヤタガラモン ヴァロドゥルモン オメガモンX
    エリスモン ティラノモンX メタルグレイモンX ベリアルヴァンデモン デュークモンX
      レオモンX ケルベロモンX ラフレシモン ディアボロモンX
      サングルゥモン スカルバルキモン プラチナヌメモン ミネルヴァモンX
        ルーチェモンFM ウォーグレイモンX  
          スレイプモンX  
          サクヤモンX  
          ベルゼブモンX  

※究極体が2段階あるが、超究極体なのかどうかは現時点では不明。便宜的に超究極体と見なすことにする。

<<敵限定>>

ゴマモンX プロットモンX ネフェルティモンX シードラモンX クワガーモンX シスタモンノワール マンモンX トリケラモンX
マメティラモン マグナモンX アルフォースブイドラモンX オウリュウモン デュナスモンX ドゥフトモンX ロゼモンX グランドラクモン
デーモン バルバモ ベルフェモン リヴァイアモン リリスモン アポカリモン ボルトバウタモン  


 ちなみに赤字になっているのは、X抗体を持っているデジモンである。あれれー?でも赤字じゃないデジモンがいるぞ???
 デジモンXとはX抗体デジモンをテーマにした育成ギアなのである。その世界観は公式に説明されている(デジモンクロニクルエックス | デジモンウェブ | バンダイ公式サイト)。すなわち、

  • かつてX抗体を生み出した旧デジタルワールドでは今でも生存闘争が続いていた
  • イグドラシルは旧デジタルワールドにロイヤルナイツを派遣するのにX抗体を渡した
  • 旧デジタルワールドの混乱を収めるべく代表者でジントリックス陣取り合戦を始めた

ということである。舞台は旧デジタルワールドでイグドラシルがナイツにX抗体を持たせていることからも、X抗体を持つのが必須であることが理解できる。
 ということはX抗体を持たないデジモンがいるとは…?
 「世 界 観 崩 壊」ということである。もちろん旧デジタルワールドで生きるのにX抗体が必ず必要かというと、かつてのデジモンクロニクルでXデジモン粛清に現れたオメガモンやデュークモンが当初はX抗体を持たずに活動していたことからも高位のデジモンX抗体なしでも生存可能ということは考えられる。(オメガモンやデュークモンが活動していたのは新デジタルワールドなのでX抗体は必要ありませんでした)敵限定デジモンに紛れている七大魔王デジモンたちはそのように見なすことも可能だろう。しかし、育成可能なエリスモン、シスタモン姉妹、ダメモン、ヤタガラモン、チョ・ハッカイモン、プラチナヌメモンあたりはどう考えてもそのようなデジモンではない(こういう時に限って超究極体がオールXデジモンなのが何とも言えない)。
 X抗体を持たないデジモンを入れたことで世界観が崩壊している、これが不可解ポイントその1である。これはシンプルなだけに深刻な問題と言えよう。デジモンクロニクルの続編を用意し世界観を援護射撃しておいてこの姿勢!デジモンの育成ギアは弾毎にテーマを設定し、それに沿ってデジモンを選ぶことが多いが、デジモンXはX抗体をテーマに選びつつそれすら貫徹できていない。これは今後新作ギアが出るにせよテーマ設定もそれに沿ったデジモンチョイスも不可能であることを予測させ、前途を暗澹たる気持ちにさせる。
 ただ一応擁護しておくと、エリスモンは今年から配信が始まったデジモンリアライズの看板デジモン、シスタモン姉妹もシエルは新デジモンということで新デジモンギアに出してフォローしたいのは理解できないこともない。しかし、この擁護点も次に述べる問題点が全てを打ち砕いてしまう。
 「つまみ食いすぎる進化系譜」問題である。
 デジモンには進化系譜というものが存在する。アグモン→グレイモン→メタルグレイモンというような、こいつはこいつに進化し、それが「正統」ルートであるという観念である。しかるに、デジモンXのデジモンチョイスを「正統」ルートに当て嵌めようとすると、次のようになる。

  • アグモンX→(グレイモンX)→メタルグレイモンX→ウォーグレイモンX
  • ガブモンX→(ガルルモンX)→ワーガルルモンX→メタルガルルモンX
  • (ギルモンX)→グラウモンX→メガログラウモンX→メギドラモンX
  • レナモンX→(キュウビモン→タオモン)→サクヤモンX
  • ティラノモンX→メタルティラノモンX→(ラストティラノモン)
  • トブキャットモン→スカルバルキモン→(ディノタイガモン)
  • (ファルコモン→ディアトリモン)→ヤタガラモン→ヴァロドゥルモン

 これら以外でもドラコモンX、エリスモン、サングルゥモン、リリモンX、ルーチェモンフォールダウンモード、ラフレシモンなどが「正統」ルート持ちにも関わらず単騎参戦となっている(究極体デジモンも多くは単騎参戦に近いが、これをやるとほぼ全員挙げることになるし、究極体の完結感を評価すればそこまで責めることでもないだろう)。
 要するに、再現できる「正統」ルートが一つもないということだ。
 確かに「正統」ルートは全てのデジモンファンにとってあるべき理想というわけではない。どんな姿になるのかわからないワクワク感、アグモンが育成によってはメラモンになるかもしれないしヌメモンになるかもしれない自由さ、これらを打ち砕く可能性から「正統」ルートに縛られた進化系譜作りはこと育成ゲームに関しては評判が悪い。また、「正統」ルートを模範としたせいで新デジモンは成長期~究極体まで進化系譜セットで登場することが多い。そのせいでその進化系譜以外に使い道がないような、そして実際その他大勢に埋もれてしまった成熟期・完全体デジモンが量産されてしまっている*3。公式に声を届けるファンが「「正統」ルート作りはやめてほしい」と主張するのも不思議なことではない。
 でもこれは違うだろ
 確かに「正統」ルート通りの進化系譜は一つも成立していないが、「正統」ルートじゃなくせってのはつまみ食いしろってことではないんだぞ。アグモン系譜、ガブモン系譜、ギルモン系譜は一体だけ省かれたデジモンがいるためにむしろ「不完全」感を強く想起させる。エリスモンもデジモンリアライズではフィルモン→スティフィルモンと系譜を積み重ねているが、デジモンXではエリスモン1体だけ。これではリアライズとの連動にも新デジモンとしてのアピールにもならず「何でいるんだ」と思わせるだけである。
 ただ、「正統」ルートつまみ食いが一概に悪いわけではない。かつてのデジモンクロニクル展開でも

  • プロットモンX→ドーベルモンX→ケルベロモンX
  • アロモンX→マメティラモン→ディノレクスモン
  • ゴマモンX→マンタレイモンX→アノマロカリモンX→プレシオモンX
  • ゴツモンX→スターモンX→ベーダモンX→イーバモンX

というような既存の「正統」ルートをつまみ食いしたかのような進化系譜は存在していた*4。これらも確かに不可解と言えないこともないが、四足獣、肉食タイプの恐竜、水棲、鉱石・宇宙といった要素で系譜を括ることが出来、それなりに意図を感じさせるチョイスではある。
 これと比べると、デジモンXのつまみ食い系譜はそれゆえのカオスさを楽しむにも意図を感じるにも不向きで進化系譜の妙など感じられない。いやレオモンX→ケルベロモンX→ベルゼブモンXやシスタモンシエル→チョ・ハッカイモン→ベルスターモンXなどは意図が感じられないこともないが、それくらいのものである。
 悲惨なのは新規Xデジモンにも関わらず、系譜補完の位置に置かれたドラコモンXティラノモンXだ。系譜として見るとドラコモンXはギルモンX、ティラノモンXはグレイモンXがいるはずだった位置を占めている。せっかくの新デジモンなのにポジションは他人の代わりで怨みを買うこと請け合い、これ誰が喜ぶんでしょうか?ブラックではティラノモンXはメタルティラノモンXに進化できるのでまだ生かしようもあるが、ホワイトはメタルティラノモンXしかおらずグラウモンXをティラノモンXに見立てるしかない。ドラコモンXもまさかピンでの登場とは思わなかったよ…ホワイトでは成熟期以上の竜型デジモンはギルモン系譜とジエスモンXくらいで両者とも他人の系譜からの借り物でデジモンの始祖という設定が全く生かされていない。何しにX抗体を手に入れたんだ?
 これは私の意見だが、「正統」ルート回避とつまみ食い批判を回避する方法は、「正統」ルートから成長期と究極体だけを採用するのが良いように思う。というか私はアグモンXとガブモンXがいて、成熟期にグレイモンXとガルルモンXがいない時点でそうなると予想し、誉めるつもりでいた。「正統」ルート批判の要は、進化系譜が「成長」のように見えてしまうため、進化が変わり映えしないことであると推測される。しかるに、成長期デジモンはプレーンな印象のものが多く、究極体デジモンは個性が完成しきっているポジションにある。「正統」ルートから成長期と究極体だけ採用すれば、たとえ「正統」縛りがあったとしても成長期はどういう方向に進化していってもいいし、究極体はどういう方向から進化してもいい、進化ルート作りに融通が利くのである。アグモン→メラモン→マメモン→ウォーグレイモンでもいいし、アグモン→メラモン→デスメラモン→ベルゼブモンやピコデビモン→デビモン→マメモン→ウォーグレイモンになってもいいのが理想である*5
 進化系譜の組み方がつまみ食いすぎて意図を感じさせない、これが不可解ポイントその2である。
 さらに新デジモンの出し方も既存の系譜に割って入ってきており、売り出すはずのデジモンなのに印象が良くない。これも不可解ポイントでその3になるだろう。
 そして最後が敵限定デジモンの存在である。究極体強豪デジモンを除くと、ゴマモンXプロットモンXクワガーモンXトリケラモンX…ああ~いいチョイスっすね~
 育成させろや
 敵限定デジモンにはグランドラクモンロゼモンX、シスタモンノワールなど育成枠に入れば、つまみ食い系譜がいくらかマシになったであろうメンツも少なくない。さらに育成枠には水棲デジモンや昆虫デジモンがいないのでシードラモンXクワガーモンXが入ればフォローも兼ねられてより魅力的だ。しかし、こいつらは「敵限定」という括りでバトルの時に拝むことしかできない。なお、デジモンたちもカットインドットは用意されているようなので、労力をケチったわけでもない。檻に入ってるのが生肉なら食べられないと納得もするが、ちゃんと焼いてあるのが入ってるのを見ると食わせろとしか思えない。
 最低限、敵限定デジモンの存在を認めるにしろ、ナイツX抗体や七大魔王、過去アニメ主役デジモンで良かったんじゃないですかね?
 まとめよう、デジモンXデジモンチョイスの問題点は以下の通りだ。

  • テーマと世界観を崩壊させる非Xデジモンの存在
  • 既存進化系譜からの意図を感じさせないつまみ食い
  • 新登場による役割が見出せない新デジモン
  • 上の問題解決に繋がりそうなデジモンたちを非育成枠として見せびらかしてくる

 本当はラフレシモンやダメモンあたりを個別に論いたかったが、そこまではよそう。
 何で今回わざわざこんな記事を用意したかと言えば、この傾向が続くとヤバいな…と真面目に思ったからである。何を今更と思う人もいるかもしれないが、デジモンスタッフが12年ぶりとは言え育成デジモンを選び進化系譜を作る能力をここまで欠いているのは衝撃的すぎた。私は一応デジモンが育成ギアを再び発売し始めたことを支持しているし、行く行くは新規ギアが出るのが理想だと思っている。そういう意味ではデジタルモンスターXはとりあえず新作ということで最低限の歓迎の気持ちはあったわけだ。しかし、それがこの有様では…
 常識的に考えれば、スタッフは登場デジモンについて会議なりで決めているはずである。その際のプレゼンを是非聞いてみたいものである。いややっぱいいかな…

*1:クロスウォーズミニ?あんなのは育成ギアとは呼びません

*2:今思い返せばペンデュラムVer.20thの時点で脈絡なくシェイドラモンやベオウルフモンぶち込んでてだいぶヤバかった気も…

*3:一方で全ての「正統」ルートがそのようなものでもない。例えばトブキャットモン→スカルバルキモン→ディノタイガモンは初出のペンデュラムエックスであたかも関係があるかのように並べられたが、それぞれデザインも設定も違うため、単騎参戦しても3体揃って参戦しても「正統」ルートが生み出す違和感はあまりないだろう

*4:もっとも後ろ2つはカードのナンバーの並びがそうなっていただけで本当に系譜を意図していたのかはわからない

*5:例え話が的確な例になっているのかどうかという問題を抱えている例