スーパー戦隊シリーズが終わった。いや、厳密に言うと完全な終止符が打たれたわけではない。かつてのファン向けの10YAのような作品は今後も作られるだろうし、戦隊ヒーローが新しいPROJECT R.E.D.や仮面ライダーなどの他の特撮ヒーローシリーズに客演することもあるだろう。戦隊シリーズを上書きして始まるPROJECT R.E.D.で新しい戦隊が登場することもあるかもしれない。そういう意味では戦隊は生き続けるとも言える。とは言え、それを加味しても『バトルフィーバーJ』以来45年以上ほぼ毎週欠かさず新作をTV放映してきたシリーズが来週には放送していないという「断絶の重み」を軽く受け止めることはない。何せ、私にとっては生まれた時にはすでにスーパー戦隊シリーズが放送されており、人生の中でスーパー戦隊が放送されていない期間というものは存在しないからだ。もちろん、10歳前後の一時期に「卒業」していたこともあったが、それでも「今年の戦隊」があることは前提で「今年は〇〇らしいぜ」みたいな会話が発生する可能性は担保されていた。来週からはそれがない人生が始まる。
しかし、戦隊が終わるかもしれないという噂が立ち、実際に後番組が『ギャバンインフィニティ』と発表されてシリーズ終了が決定的になった時も実は驚きはなかった。「ああ、終わるのか。そうか」としか思わなかったことの方が我ながら驚いたくらいだ。前提として戦隊はここ10年くらいシリーズに「革新」をもたらすべくあれやこれややってきていた。その中で「戦隊が終わるかもしれない」という製作側の危惧が間接的に、直接的に漏れ出ている様子も見ることができた。これは少し話が飛ぶが、コロナ禍以来、世相が様変わりしていき、「平成」の風景は遠くなっていった。おれが「普通」と親しんだ「平成」はちっとも普通ではなく砂上の楼閣だった。要するに「戦隊があるのは普通」という感覚もいつか終わりを迎えるという予感めいたものはあった。だから戦隊終了の報も衝撃よりも「答え合わせ」―ある意味「満を持して」だったのかもしれない。
また、戦隊の命運についてそもそも関心が薄れて行っていたのも終わってみると感じられることだ。私は世代としては『カーレンジャー』~『ガオレンジャー』を観ていた(『オーレンジャー』が最初に観た戦隊のはずだが記憶に残っていない。『タイム』・『ガオ』は弟の御相伴)。すでに『カーレンジャー』以前に戦隊は20作弱を積み重ねてきており、児童誌などで「歴史」の重みを知ることはできた。そして、世代体験として私には「不変・普遍なる戦隊シリーズ」は刷り込まれた。メタルヒーローが終わりを迎え(そもそも『カブタック』・『ロボタック』がメタルヒーローという感覚もなかったが)、ウルトラマンの新作が3年以上は続かず、仮面ライダーが復活するかどうかという時期に、毎年色で分けられた集団ヒーローの番組だけは作られ続けているという状況には強い安心感と信頼感があったのだ。他にも「追加戦士がいてそれはゴージャスな色が多い」とか「だいたい2クール目で2号ロボ、3クール目で最強ロボが登場する」とかも戦隊の特徴として刷り込まれた。実際には初期戦隊には追加戦士も2号ロボもなかったりするのだが、それがフォーマットだと思い込んだ。
そして、そのフォーマットは幸か不幸かその後もだいたい維持されていた。その一方で、全戦隊が登場した『ゴーカイジャー』が終わった頃から、戦隊も刷新が必要なのではないかという風潮を作品から感じることが増えてきた。その結果として9人~12人もの大所帯な『キュウレンジャー』、2つの戦隊が戦う『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』、人間と着ぐるみで戦隊をやる『ゼンカイジャー』、全てが異質な『ドンブラザーズ』、合成主体でファンタジックかつ集団ヒーローではない『キングオージャー』などが生まれた。もちろん、それらの作品の挑戦を否定するつもりは毛頭ない。しかしながら、良くも悪くも「いつもの戦隊」ではなかった。『キラメイジャー』や『ブンブンジャー』といった先祖返り的作品もあったものの、全体的に見てここ10年は私が抱いていた戦隊への「不変・普遍性」*1が大きく揺るがされた時期でもあった。また、これまた幸か不幸か、各作品ともチャレンジングではあったし、反響を呼んだ要素もあったものの、それらは「新しいフォーマット」に結実しなかった。ここからは新生戦隊シリーズとしてこの要素を加えて普遍的になるといったタイミングもなかったわけだ。おれが思う「いつもの戦隊」はこの10年で緩やかに「終わっていた」のだ*2。
終わった今だから言える、と言っては身も蓋もないが、このように「終わっていく」感覚を持ったまま、終了の報に臨めたのは幸福なことだったかもしれない。ある種の「看取り」だろう。戦隊がずっと続いていたからこそ、シリーズをある種の人生のように捉えられるのかもしれないが、戦隊が復活するとしてもそこから紡がれるのは新しい「人生」だし、そもそもPROJECT R.E.D.も新しい「人生」のはずだが、それでももう40年以上継続するシリーズはなかなか出ないだろう*3。昨今の世相では突然終わることも多い中、ゆったりとした「死」を見せてくれたことが戦隊シリーズの一番大きな遺産かもしれない。