志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

『ウマ娘』イベントストーリー「されば君、かなし」感想

 ゲームウマ娘 プリティーダービーでは月に一度のペースでイベントストーリー展開がある。そこでは既存のウマ娘がイベント内容に即した別の衣装で実装されることになる。ウマ娘は基本的に増えていく一方だが、常にガチャで新キャラを引けるわけではないし、メディア展開が豊富にあるわけではないので、こうしたイベントストーリーは既存のウマ娘のキャラの幅を広げたり、意外な関係性を見せたり、あるいは新顔のウマ娘をユーザーに見せていく貴重な機会となる。
 3月29日から4月10日にかけてのイベントストーリー「されば君、かなし」にてピックアップされたのは、新衣装の実装としてはサクラチヨノオーメジロアルダン、サポートカードとしてはメジロマックイーンナイスネイチャトウカイテイオーとなった。…うおおおおお!!!??チヨノオーの新衣装にサポカとは言えピックアップがネイチャって…そんな盆と正月が一緒に来るような組み合わせあります!?ネイチャさんがピックアップされることはこれまで何回もあった(何と「されば君、かなし」で5回目。もはや準レギュラーである)し、チヨちゃんも「大乱闘!?夏色☆バカンス」にて配布サポカとなっている。しかし、ネイチャさんはどうしてもカノープス組の一員としての出番も多かったし、チヨちゃんも前回の出番はマルゼンスキーとの関係性が中心で、2人が直接的に絡むのは初めてだ。加えて言うとメジロアルダンも「おもいより、おもいかけ」にてピックアップされたが、その際はオグリキャップヤエノムテキらの同輩としての登場で、チヨノオーはモブとしてチラッと出たのみ。同室でライバルであるアルダンとチヨノオーが同時に「主役」になるのも初めてで、この関係性がピックアップされるのも楽しみだった。

 以下、気になるキャラクターをピックアップしつつ感想。

 チヨノオーは正統美少女で、勝負服の桜色と和装の昇華具合がとても美しいという外見のレベルの高さもあるが、何よりもあきらめの悪い、ひたむきさとそれによる向上心で周囲を刺激していくのが売りだ。そんな彼女の悩みは「普通」であるということ。ドロワでベストデートになるためにはどうすれば良いのかを考えた結果、「特別」を探す。テイオーとマックイーンのダンスを見ても物怖じせずナチュラルに勝つ方法を考える時点で普通ではないので、マックイーンから「あなた普通じゃないよ」(意訳)と言われて立ち直るのだが、まあその通りですよね。
 今回面白かったのはテイオーとの絡み。チヨノオーの育成イベントでも2人が絡むものはあり、どういう繋がりかと言うと、マルゼンスキーシンボリルドルフという「最強」の親を持ち、「親」の生を自身の生にも反映させるという要素が重なり合う(あと偶然にもどちらも名前が「~オー」)。そのアプローチは、両者ともに戦いを挑むのは変わらないが、テイオーにとってルドルフは越えるべき壁であるのに対して、チヨノオーにとってはマルゼンをある種の孤高さから解放しライバルという同じ土台に降ろすという違いがある。今回はその違いが裏目に出た格好で、テイオーはナチュラルにルドルフを超えようとしているのに対し、チヨノオーはマルゼンのダンスをコピーしようとして失敗、そこをテイオーが指摘するという関わり合いになっていた。今回のチヨノオーはマルゼンスキーとの絡みは薄めだったが、チヨノオーがドロワに参加しようとしたのはマルゼンからの影響で、最終的にチヨノオーのダンスがマルゼンを刺激するという大枠はやっぱり維持しており、うーむやはり「普通」ではない…。
 つまるところ、チヨノオーが勝ち筋をいかに絞っていくか…そういうものを見せつけられたシナリオだった。マルゼンのダンスをコピーしたのもやめたのもそれが勝つために大事だと思ったからだった。そういうキャラクターの強さを十二分に表現できていたと思う。…あまりにもガッチガチだったので格言の出番が全くなかったな…。

 メジロアルダンは、かの初トリプルティアラ・メジロラモーヌの妹であり素質は申し分ないながら、ガラスの脚を抱えており、いつ走れなくなるかわからないという運命を抱えているウマ娘だ。それだけにレースに掛ける思いはめっぽう強く、「今」走れることで何を残せるかを最も念頭に置いている。そんな彼女のサクラチヨノオーへの想いは…重い…(ギャグではない)。お互いがライバルでありつつも、レースに掛ける想いは異なり、別の道を往くことはわかっている。それでもドロワの一瞬だけはお互いが最高のデートでいたい。その感情を最大限発露している。中でも強烈なのが衣装だ。サクラチヨノオーのドロワの衣装はほとんどアルダンが作っているが、白とピンクを基調にした桜を冠するチヨノオーらしいドレスと見せつつ、白が本当にイメージしているのは。対称的にアルダンの衣装は燕尾服をモデルにしつつ、左胸に桜をあしらっている。その桜の赤は色濃く、白を基調にグリーンを差し色にする全体の中では主張を放つことになる。雪と桜が共演できるとしても一瞬、しかしそれは最上の美しさを持つ…。そういう想いがチヨノオーとアルダンの衣装には込められている。それでいてチヨノオーのドレスが単体でも成り立つのに対し、アルダンの桜は全体とは必ずしも調和していない。あくまでアルダンからチヨノオーへの想いであることがここでも示されている。

 ネイチャさんはどのメンタル段階かによってキャラクターが違ってくるが、基本はキラキラなテイオーに対して卑屈さがある。今回もテイオーに対する卑屈さを押し出すポジションで、影響を与える方ではなく与えられる方。そういう意味では「轟け、エール!トレセン学園応援団」でのキングヘイローとの関係性の展開の方が新鮮みと得心はあったが、カノープスや同世代以外との絡みが見られたのは新しいところだ。
 特に今回良かったのはチヨノオーとの関係構築ではないでしょうか。ネイチャさんが中等部で、高等部のチヨちゃんの方が年上であることをすっかり失念していたので、丁寧語を用いるのは意外さがあった(チヨちゃんあんまり貫禄のあるタイプじゃなかったしね)。これまでは保護者的に振舞う機会が多かったので、目線が上な相手と話しているのは新鮮みがあふれる。2人の関係性がよく出てたのはサポートカードのイベントで、お互い「私って普通ですよね~」と共感してるのが、言われてみると自称普通繋がりか!という驚きがあった。そうかー、推し2人にはそういう共通点が…。でも君らは普通じゃないよ絶対。

 そもそもイベントストーリーでドロワが取り上げられるのは今回で2回目となる。前回は全員が女の子にも関わらず、全員がチ●コ生えてる言動をしていて濃すぎたが、今回は♂の臭いはなかった(ここは前回のムンムンさが異常値だっただけだろう)。ネイチャ、テイオー、マックイーンはもうこれまでにストーリーでの出番も多く、キャラクターが自明であるゆえの役割の固さがあった。これに対してピックアップされたのがチヨノオーのひたむきさとあきらめの悪さ、一瞬に掛けるアルダンの激重感情。両者の想いが並列し、融合することでストーリーを牽引した。レース要素はないものの、なぜチヨノオーとアルダンが「友達以上仲間でライバル」なのか、如実に示したイベントストーリーだったと言える。新しい関係性も生まれたし、お二人は今後も輝いてほしいですね(今回はヤエノムテキが出られなかったのは残念だったが…入る余地もなかったか…)。