ラジエルモンのポリゴンを作ってくれてありがとう企画もいよいよ第3弾!にして最終回である。完結するのに1年以上かかったな…*1
まずはこれまでの記事をおさらいがてら。
monsterspace.hateblo.jp
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ここまでは実装ストーリーについてあれこれ言っていたが、いよいよ真打。「で、実際このポリゴンってどうよ?」である。
1 ラジエルモンのデザイン
ラジエルモンの公式絵は公式サイトのデジモン図鑑で公開されている。
相変わらず、公式サイトのデジモン図鑑掲載のものはちっちゃい。最近はデジモンウェブのアカウントがTwitter上で高解像度の公式絵を上げてくれることもあるが、ラジエルモンは未だその恩恵を蒙ってはいない。とは言え大きな画像でないと確認できない細かいディテールがあるわけでもないので、とりあえずはこの画像でも充分ではあろう。
digimon.net
※他にはにじゅっすのニューカラー公式ページでラジエルモンが紹介されており、やや大きな画像が見られる。
公式のものとしてはラジエルモンは『デジタルモンスター Ver.20th』ズバモンカラーに参戦したため、『デジタルモンスター ART BOOK Ver.1~5&20th』にA4サイズの大きな公式絵が掲載されている。同書には初期デザインや渡辺けんじ氏描き下ろしのデジモン大集合イラストにラジエルモンもいるため、デザインの一端を感じ取ることが出来る。ラジエルモンのイラストとしては公式絵以外には令和2年6月現在これしかないため、渡辺けんじ氏の意図を探る情報源としては貴重である。
p-bandai.jp
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※現在、予約販売は終了済
そういうわけで初期デザインを引用する。
(124頁)
かなりラフではあるが、全体の印象としてはすでに固まっている。ラジエルモンの進化元であるメイクーモンは『デジモンアドベンチャーtri.』出典の新デジモンで、メイクーモンに関してはアニメサイドの要請も大きかったと思われるが、ラジエルモンについては登場予定もなかったためか、デザインに難航はあまり感じさせない。メイクーモン→メイクラックモンからの流れと設定上天使型との関係を持たせるべく、天使要素を加えたら自然に出来上がった印象を受ける。
ラジエルモンの公式絵を描いたイラストレーターについて公式のアナウンスはないものの、タッチから推すに森山奏氏と見て間違いはないと思われる。恐らく渡辺けんじ氏のラフイラストを元に森山氏が細部のデザインを想像し、ポーズを付けて仕上げたのが公式絵という、単純な筋でデザインとしては仕上がったのではなかろうか。
ただし、イラストレーターが異なる以上、渡辺氏の具体的な意図とは少なからず離れたところも見受けられる。それを示唆するのが、アートブックの渡辺けんじ氏の大集合イラストに描かれたラジエルモンである。ラジエルモン部分を引用する。
(2~3頁)
(160頁)
森山氏が仕上げた公式絵と比べると、全体として細身なイメージで、近年の渡辺氏のタッチを反映している。また、色味も全体的に茶色に近く、公式絵の白色とクリーム色を基調とする色合いとはやや距離がある。ディテールに関して言えば、顔の仮面部分に犬歯のような牙がチラリと見える。こうした点はメイクーモンとの連続性を強く意識しているのではないかと考えられる。また、ローブのような衣服パーツは胸を隠すほどに覆っており、公式絵より露出が狭い分乳のアピール分も少ない。こうした点は上記の初期デザインとも共通するので、渡辺氏がラジエルモンの公式絵を描かれていればまた違った印象があったことだろう。
そして、このような渡辺氏のデザインと比較することで公式絵の際立った部分も明瞭になる。具体的に箇条書きにすると、
- 各部のパーツが細身よりも実態を持って描かれていることでメリハリが明瞭となる。
- 色白になったことで美人としての印象が上がっている。
- ローブが身体を薄く覆うようにしたことで、乳の大きさとアピール度合が高くなった。
- 上記を総合してラグエルモンとの差別化が進んだ。
などが挙げられるだろう。いずれも私のラジエルモン好きを根底から支える美質であるので、是非とも大事にしていってほしい部分である。
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やや先走ったが、ラグエルモンとの差別化というのも大きな視点だ。ラグエルモンはメイクーモンが暴走していったルートの究極体で、当たり前だが『tri.』にも登場しラジエルモンより露出は早かった。メイクーモン究極体としてはラグエルモンはラジエルモンの先輩にあたり、ラジエルモンは見るからにメイクーモンの正統進化であるが、ラグエルモンとどこが同じでどこが違うのかはデザインの上で大きな課題となったと思われる。共通点としては体型でシルエットはラジエルモンとラグエルモンでほぼ同じである。相違点をこれまた具体的に箇条書きにしていくと、
- 顔が獣顔から人間+仮面顔へ
- 肩の翼パーツから毛が消滅
- 胸が女性らしくなる
- 水晶の色が紫からピンクへ
- ローブの追加
その他所々の色合いはラグエルモンは黒やオレンジを基調にしているのがラジエルモンは白くなっている。一言で言えばラグエルモンを天使型にデザインし直したといった趣か。ただ単純に天使に置き換えるのではなく、ラグエルモンの獣部分を適度に残しており、オファニモンといった天使型究極体や獣人型の究極体との差別化に成功している。デジモンにおけるこのような善悪亜種系は単なる色違いだったり(ブラックウォーグレイモンなど)、全く別のデザインだったり(オファニモンとリリスモン)するが、ラジエルモンとラグエルモンは共通部分と差別化が良く調和した理想形ではないだろうか。
2 実装されたCGポリゴンとは
『デジモンリアライズ』では図鑑モードはあるが御覧の通り、ポリゴン鑑賞には全く向かない。大きく表示してようやくこれだから絶望的である。
激突戦画面が全体像を一番大きく表示できる。基本的に公式絵のイメージに忠実にCGポリゴン化しているのではないだろうか。特にメリハリのついた体型をそのまま具現化したのは印象がとても良い。ただ、硬質な部分は公式絵そのままな質感の一方、首回りや肩のファー的な部分は三次元化にあたって密度を感じるものになった。
公式絵やデザインラフ等では死角になっていた背面もポリゴンが作られたことで初めて明らかになった点も多い。首回りのファーは独立したパーツではなくローブと繋がっている一連の衣服だったり、肩あたりから生えている翼のような部位がどのように身体と繋がっているのかなどはポリゴンが作られなくてはわからなかっただろう。意外と翼と身体を繋ぐ部位が細い。尻尾の表面があっさりしすぎている気もするが、まあ致し方ない、かな…。
顔もイベントストーリー中では異様に無表情に見えて心配だったが、ポリゴンで見るとそうした印象はそこまでない。髪も良い感じに密度があって質量を感じさせつつさらりとしているし、緑色の目も鮮やかだ。次節のモーションでより画像を確認してほしいが、口を動かせば猫型の仮面に関わらず結構表情は出る(デジモンではエンジェモンはじめお馴染みの表情表現方法だろう)。なお猫耳とカチューシャは繋がっていないとか、前の猫耳にはイヤリングが2つあるが後ろの猫耳には1つしか見えないなど、これまた新しい事実も確認できる。猫型の仮面は若干公式絵と趣きが違うし、渡辺氏のイラストにあったよう犬歯ももちろんないが、ここはポリゴン密度上妥協すべきところだろうか。
個人的には胸の造型は程良く丸い。リリスモンなどを思うともうちょい露骨でも良かった気はするが、神聖イメージと全体の中でのバランスかなあ。
総合評価としてはまあまあだろうか。公式絵から十二分にポリゴン造形を行なっており、変な独自解釈などは入れていないのだから、順当と言える。「もっとここがこうだったら」という点もないわけではないが、諦められる範疇にある。前節的に言えば、明瞭なメリハリ、白を基調とした美人としては十二分に合格している。
…でも今後のブラッシュアップの余地はあるよなあ*2。
3 ラジエルモンのモーション
…は?
…は?
あざとすぎません?素晴らしい!!!!!
いやでもこれ本当にすごくないですか?よくこれを思いついてモーションとして取り入れてくれた!
ラジエルモンはここまで「動き」がなかったデジモンだったのが、最初に来たのがこの動き!ラジエルモンはそりゃ私は可愛いと思っているが、最初の公式絵から喚起されるイメージとしては天使として泰然としている印象が強い。そこをいきなり引っくり返してくるのだから痺れたね…。デジモンに女性型天使究極体は複数いるが、猫的なあざとさでラジエルモンを推して差別化するのも一つの方法じゃないか。そういう新しい可能性を端的に示してくれた。誰が考えたのかは知らないが喝采を送りたい。ありがとうございます。
- 必殺技「ノウレッジストリーム」
必殺技・ノウレッジストリームも図鑑の設定文では「両腕の魔方陣から五大元素を自在に組み合わせ膨大なエネルギーを放出する」となっているが、両腕の魔法陣、五大元素、エネルギー放出と設定文に忠実に具現化された。画面奥から登場する勢い、エネルギー収斂で身体を逸らすのを程良く見せるアングル、五大元素色が混じるエネルギーの彩色、腕や足を突きだしてエネルギー量を表現と、必殺技演出としては忠実かつ凝る方への拘りも窺えてうれしい。
なお「セファーラジエール」が採用されなかったのは「あらゆる奇跡を起こし敵対する者を駆逐する」「ラジエルモン自身にも何が起こるか分からない」の表現が難解すぎたからだろう。何が起きるのかわからないなんて表現のしようがないから仕方ないね。
他には移動を浮いて行うとか喜びモーションが身体を斜めに浮かせるなどがある。
ラジエルモンのモーションはいずれもイメージの具体化、充実化に貢献できたと言えよう。やっぱ動くのっていいね!
4 ラジエルモンの未来
記事を書くのをサボっている間に『デジモンアドベンチャー:』にてラジエルモンが登場した。…とは言え天使型デジモンに混じってシルエットが映ったのが唯一で、私自身は『:』を視聴していないので具体的にどういう扱いだったのか定かではない。が、伝聞するだけでもイメージ映像以上の何かがあったようには見受けられない。一応映ったからには『デジモンアドベンチャーtri.』では叶わなかったアニメの設定画くらいは描かれたと思われる。
『デジモンリアライズ』にてラジエルモンが実装されてからもう2年弱経つが、その後の『リアライズ』でラジエルモンは特に再登場していない。そしてデジモンのコンシューマーゲームも長らく出ておらず*4、ポリゴンが流用されることもない。ギア展開ではバイタルブレス展開がスタートし、こちらは拡張性によってはメイクーモン系譜が参戦する可能性はあるが、令和3年月現在そうした情報はない。要するにこれからの再登場には期待しかない*5。
『デジモンサヴァイブ』やバイタルブレスは2Dでデジモンを描画するので、ラジエルモン(およびメイクーモン系譜)を出そうと思えば新しくドットを打つ作業が必要になるが、どちらも完全新作なのでラジエルモンも他のデジモンも登場するハードルは変わらない。CGポリゴンとアニメ設定画はある(たぶん)ので、ラジエルモンはとりあえず何にしても再登場するのに特段のハードルがあるわけではない。ラジエルモンの展望に楽観的になれるわけでもないが、悲観的な材料は特にないのはほっとする心持ではある。
そもそも私がラジエルモンに拘っているのも『デジモンアドベンチャーtri.』が不発だったからということが大きい。ラジエルモンはデジタルモンスターVer.20thによって存在が明かされ、個人的な感慨としては混迷を深める『tri.』ストーリーの救世主的な扱いを期待していた。メイクーモンは新キャラのパートナーデジモンとして登場したにも関わらず、作中では忌み子のポジションだった。こうしたストーリー展開の中でラジエルモンはメイクーモン起死回生の切り札と言うか、ラジエルモンに進化してセファーラジエールを発動すればデウス・エクス・マキーナになるはずと予測していたのだが…。ところが結果は普通にメイクーモンは殺されてしまい、ラジエルモンは登場することがなかった。この展開ならそもそも本来の進化ルートっぽいラジエルモンの存在を明かす必要性もなかったのでは…とも思うが、とにかくショックは大きい。
メイクーモンは『tri.』において新しい選ばれし子供のパートナーデジモンとして生を享けた。であるならば、メイクーモンはデジモンアドベンチャーシリーズの新しいピースになるのではなかったのか?そうした思いが裏切られたのは感情の落差としてとても大きい。そう思っていたからこそ、ラジエルモンという他のデジアド組と並び立てる存在が明かされたことに安堵した経緯もある。そういうわけで個人的にラジエルモンはメイクーモンが汚名を雪ぐための存在としていよいよ大きくなっていったのだった。
今後はアニメにしろゲームにしろラジエルモンへの素材は揃ったわけで一時期のように出てもラグエルモン系統だけ、ということは起こりにくくなったと言える。リアライズでも「決意の瞳」がその一端であったように、メイクーモンを独り立ちさせる存在としてラジエルモンを扱ってやってほしいのが、デジモンファンとしてのささやかな願いである*6。
★最新カード紹介★
— 【公式】デジモンカードゲーム (@digimon_tcg) 2020年12月9日
12/18(金)発売のブースターパック第4弾『グレイトレジェンド』のカードをご紹介。本日のカードは「ラジエルモン」「ヴァロドゥルモン」です!
https://t.co/Ba5qAz2dM6#デジモン#デジカ#デジモンカードゲーム pic.twitter.com/F0hu5PciE1
書き飛ばしてしまったが、デジモンカードゲーム「ブースター グレイトレジェンド【BT-04】」でもメイクーモンが系譜を引き連れる形でラジエルモンも参戦した。イラストレーターは田所哲平氏。未プレイなので能力的なことはよくわからないが、イラストは神聖さと美しさ、特にラジエルモンのメリハリのある体型がよく表現されていて感謝の念しかない。ありがとうございます。なぜ、このタイミングでメイクーモン系譜が収録されたのか、決め手はわからないが、仮にアニメ出演が後押ししていたとするならば、『:』で本当にチラッと出たことにも意味はあったことにはなる。
追伸
最近デジモン図鑑に「関連するデジモン」という項目が追加された。ラジエルモンで試すと
(1回目)
- ホーリードラモン
- オファニモン(X抗体)
- アレスタードラモン
(2回目)
- ガルルモン(X抗体)
- モノドラモン
- カオスモン
(3回目)
- ジャスティモンクリティカルアーム
- クダモン(2006)
- ユニモン
(4回目)
- スサノオモン
- ゴグマモン
- ゴッドドラモン(X抗体)
(5回目)
- ブラストモン
- モジャモン
- ジュエルビーモン
(6回目)
- アイギオモン
- バーガモン
- ズバイガーモン
となった。見るたびに表示メンツが変わるのだが、天使系、神聖系、獣系が多く確かに関連度が頷ける一方で、アレスタードラモンやモノドラモンといった単なる竜系、ジャスティモンやズバイガーモンといったウィルスバスターズ的には関連するかもしれないけど広く取りすぎじゃね?、ブラストモンやバーガモンといった何の関連があるのかさっぱりわからないデジモンもいたり安定しないチョイスである。もうちょいちゃんとしていってほしいところだが…。