志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

令和2年(2020)の日本プロ野球

 今年は新型コロナウィルスCOVID-19のせいでプロ野球にも色々な影響があった。開幕が遅れたり、観客制限があったり、選手にも感染者が出たりクラスターが発生して、「例年通り」というわけにはいかなかった。こんなことを言うのも何だが歴史的に「面白い」シーズンではあったのだろう。ただ、個人的にはあんまり熱を入れて見られなかった。プロ野球というのはやはりファンを巻き込んだ興行なので、ファンの熱が可視化されるかどうかは、ファン自身のモチベーションに関わるのだな…と今更ながら思うのであった。さらに言えば、今年は(も)広島東洋カープオリックスバファローズは弱かった。よく「落ち目の時こそ応援するのが真のファン」などと言うが、贔屓のチームが負けるのは普通に精神衛生上良くない。精神の安寧を保つために弱いチームへの思い入れを控えて行くのは、水が上から下に流れるように自明なのだった…とこれまた体験してみて今更のように以下略*1
 そういうわけで今年に関しては、はて何があったかなと覚束ないことも多いのだが、それでも思うことはあるので、書き綴っていくことにしよう。

 一応私は楽天も気に掛けているつもりではあるので、球団努力を続けつつ、上手く行ったり行かなかったり歯がゆいですね。今年もスタートダッシュは良かったのに、後半戦で息切れしてBクラスフィニッシュでした。この光景は2年前にも見た気が…。目指すところは、前半戦で突き放してそのままフィニッシュ優勝なんでしょうけどね。ただパ・リーグソフトバンクがいるので、セでたまにあるような独走優勝よりも、後半まで首位争いをしつつ最後に連勝を重ねて優勝を決める方が優勝パターンなんですよね。
 石井GM就任以来、楽天は良くも悪くも石井GMのワンマンチームで、監督には傀儡を置く…というやり方でしたが、いよいよ(業を煮やした?)石井GMが監督に降りてきました。何が起きるのか、目が離せませんね。

 悪循環の三文字。いつになったら監督という柱が安定するんだ。チーム作りはまずそこからでしょう。

 去年の優勝は「チーム再整備できてないのに優勝してた」と書いていたが、今年はさらに去年から山口や阿部がいなくなり、チーム整備が進んだ感じもないまま優勝してしまった。では、優勝できたのはなぜか。ペナントで見れば、中盤までに貯金を積み上げたことが大きく、終盤に調子を落としたものの振り切ることが出来た。では中盤までに貯金を作れたのはなぜかと言うと、菅野が開幕13連勝して、このプラス分が上手く作用したからだろう。中盤までの巨人には「相手を飲む力」があり、対戦チームは飲まれていた。交流戦やオールスターといった仕切り直しがなかったり、観客がいないという状況も作用したに違いない。結局終盤や日本シリーズで負けを重ねたのも、「相手を飲む力」がだんだん弱って来たということだろう。
 正直途中までは今年の巨人は2018カープの優勝に似ていると思うこともあった。戦力的には衰えているのだが、前半戦で貯金を作り、後半は調子を落とすも逃げ切るというものだ。ただ、終わってみると、巨人は後半調子を落とすどころかどん底だった。来季がどうなるのかは全く読めない。

 序盤に逆噴射切って最下位爆進ルートやったのに、終わってみれば2位なんやからペナントは不思議やな。何が良かったのかはぶっちゃけわかりません(まあ正直セのチームはどこも何でこの順位なのかちゃんと説明できへんとこばっかりやけど…)。あえて言えば短期にどん底敗北を続けても最終順位とそこまで関係ない実例を見られたのは、「経験」にはなったかな?
 藤川球児選手はお疲れ様でした。藤川くらいのレジェンド選手になると引退試合も豪華で見応えがある。まさかの清原登場には笑ってしまったけど、清原もとりあえず元気そうで良かった。藤川は通算250セーブまであと5セーブだった。終わってみると惜しいけれども、今季に関しては抑えとしては使い物にならなかったので致し方ないところ(阪神球団としては無理してでも5セーブさせると思っていたので、無理させなかったのは意外だった)。
 他には能見がどうなるのか気になる。個人的に能見は好きな選手なので、阪神で引退できなかったのは悲しい。能見くらいになると「球団が言う通り引退しておけ」と「球団側もまだやりたいという意志を尊重していやってもいいのでは」というジレンマを感じてしまう。…しかし去年は鳥谷でも揉めたし、阪神球団はこういうのは下手なのかもしれない。木村昇吾でも引き取り手自体は存在したので、能見がこのままフェードアウトということはなかろうが、気にはかかる。

 今年は離脱者も多く苦しい戦いが続いた。そんな中で佐野が筒香に代わる4番として定着したのはすごい。こういうセンスに関してはラミレス監督は謎の当たり外れがある。そのラミレス監督は今年で監督を退くが、ラミレスの遺産と呼べるものは結構ある。今後それがどのように活用されていくかでラミレスの評価も決まってくるだろう(暗黒ベイスターズで複数Aクラス、借金なしの時点で偉大だけど)。
 後任は三浦監督!なるべくしてなる感じだが、初年度となる来季は上手くいかないと思っている。上手くいかなさからどのように対応していくかが、良くも悪くも監督の味である。ラミレスとはまたガラッと違うチームになるだろう。その中で粒揃いの選手がどう動いていくか、ワクワクする。

 今年はとにかくリリーフの不安定さと外国人のハズレに尽きると思う。もちろん佐々岡新監督の先発を平気で最終回や120球以上投げさせる采配も(眉を顰められながらも)学習や反省の形跡がなく問題だが、その根底もやはり1点勝負をするには調子の良い先発を引っ張るしかないという箇所にある。もっと得点力があれば、安定感のあるリリーフがいれば…佐々岡監督の先発引っ張り采配にもセーブがかかったはずなのである(たぶん)。
 そしてこの点については来季も安泰とは全く言えない。一岡や中﨑、今村といった三連覇を支えたリリーフ陣については勤続疲労が大きく復活に望みはかけられない。この点は今年後半は抑えだったフランスアも同様だし、塹江も終盤は力尽きていた。得点力やリリーフに直結する外国人もオープン戦は悪くなかったスコットがいざ始まるとすっとこどっこいだったので、出たとこ勝負だろう(この点に関してはカープの外人力は近年悪くなかったので痛いところである)。
 あえて言えば、先発投手は後半そこそこ固まってきており、終盤に調子が良かったのはここが大きい。森下や九里はもちろん遠藤もよく頑張ってくれた!ただ森下も九里も「投げすぎ」である。1年調子が良くても、否、良すぎて2年目に崩れることもままあることである。森下も九里も来季ローテはとりあえず確約はされているだろうが、アテに出来るかと言うとわからない。
 少ないポジ要素では、堂林には楽しませてもらった。最終的に.279 14本 57打点 OPS.787だから、まずまず、もちろん欲を言えば2割8分ならOPS.8超えなら見栄えも良かったが…。
 昨年は「チームはここから再建!挑戦者だ!」みたいに言ったが、今年見えたのは思った以上にチームがボロボロで挑戦できる陣容ではないということだった。これは長い旅になるのかもしれない…

 10月の調子がソフトバンクと巨人でくっきり明暗だったので、前年以上に巨人が4連敗するのは予想が付いた。とは言え、巨人はアンチ巨人の願望を打ち砕くことに長けるチームなので、何だかんだで巨人も2勝くらいはするのではないかとも思っていた。しかして、現実はお話にならなかった。去年は一応阿部のホームランなどの巨人の盛り上がりポイントはあったはずだが、今年は…何があったっけ。丸がノーノーを阻止するヒットを9回ツーアウトから打ったとか?敢闘賞に選ばれたのは戸郷だったが、彼も登板数が多かっただけで、3登板どれも敗戦処理だったと言って良かろう。がっつり拮抗しあうとか、巨人にも勝ってる点があるとか全くなかった。
 私は「勝った者が強いのだ」精神で勝負事を見るようにしているが、巨人は優勝チームらしからぬ弱さだった。
 今年のセのチームは勝ちへのパターンがなかった。もちろんエースが抑えるとか4番が打つとかそういうパターンもあるが、安定的に「勝ち」を重ねるには鉄壁の勝ちリリーフ陣とか上位打線による得点パターンがある方が重要だ。今年はどのチームも調整は難しかったろうが、全体的に一人のスタータレント頼みで、協働による強みを発揮した感はなかった。こうしたチーム同士でペナントを争ったのだから、そりゃ弱い。逆に2018・2016広島や2017DeNAは勝ちへのパターンははっきりしていた。だから最終的に敗退したとはいえがっつり戦うことはできた。
 そしてこれは「チーム作り」の問題で、DH制の有無は直接的には関係ないと思う。タレント不足というわけでもなかろう。どのチームもチームとして上り坂か下り坂で完成形ではなかったのだ(パで言うといつまでも登山口にいるのがオリックス、下り坂が日本ハムといったところだろうか)。日本シリーズの惨めな敗退もこの結果と考えているので、今後の日本シリーズがずっと見応えのない虐殺になるかと言ったらそうではあるまい。セパの格差は実在するが、解消するにせよしないにせよ長期的な視野で物を見なければ、改革にも保守にもならないと思われる(どうしても強烈な「負け」に引っ張られて近視眼的な議論が多いように見える)。
 何にせよ、問題になるのはチームの形作りである(これオリックスの至上命題と思ってたんだけど、他のチームにまで派生する課題とは思ってなかった)。来季は楽しくなることを祈っている。

*1:直接関係ないが、この点で言うと関西民にとっての阪神タイガースはまさしく宗教である。贔屓が負けるのは精神衛生上良くないからちょっと距離を置こう…なんて考えは存在せず、否応なく享受させられる(からこの記事でも阪神の項目がある)