現行TVシリーズの『ウルトラマンオメガ』が佳境を迎えている。記憶を失っていたソラト=ウルトラマンオメガは宇宙観測隊員としての自我を取り戻し、そもそも自分の本来の任務が地球人を守って怪獣を倒すことではないと悟ってしまったのだ。ソラトはソラトとしての自我と宇宙観測隊員としての任務の板挟みになって苦しむが、1月初頭の現段階では後者が上回り、仲間たちの前から去ってしまったのである。
というのが今の『オメガ』の状況だが、過去のシリーズでは恒点観測員や文明監視員がほいほい地球のために戦ってくれたこともあって、ソラトの悩みがそこまで深刻なものなのか、演出としてはかなり頑張ってはいたが、そこまでピンとくる話でもなかったりする。そもそも恒点観測員や文明監視員はなぜ本来の任務ではない地球防衛・怪獣退治に従事してくれていたのか?恒点観測員=ウルトラセブンについては過去にも研究(?)の蓄積もあるし、平成セブンで公式のアンサーが示されたこともあるので、ここでは文明監視員=ウルトラマンマックスについてサクッと語りたい。ちょうどブルーレイボックスも出てるし。
マックスが地球のために戦ってくれたのはなぜなのか。それを探る、というか本人の意思表明がまさに第1話でカイトと一体化する時の会話にある。DASH隊員でないにも関わらずダッシュバード1号に搭乗し無茶な攻撃を仕掛けたカイトだったが、ラゴラスの冷凍光線を受けて墜落の危機に瀕する。このままではカイトの命が危ない!その時宇宙から地球を監視していた赤い球が飛来し、ダッシュバード1号を包む!
マックス「私は君たちがM78星雲と呼ぶ別の銀河系からやって来た」
カイト「俺を救ってくれたのか…」
マックス「この星の衛星軌道から君たちの文明を監視するうちに私は自らを犠牲に戦う君の勇気に共振する個性を感じた」
マックス「君と一心同体になることで私は一定の時間ならばこの星で活動することができる」
マックス「君の力を貸してほしい」
マックス「君一人の力では尊い命を守り切れなくなった時それを使うといい」
マックスから授けられたマックススパークをカイトが掴むと二人は一体化し、靄のような姿だった光の巨人がウルトラマンマックスとしての実態を持って現れる。こうしてウルトラマンマックスとトウマ・カイトの戦いが始まったのである。
マックスの本来の任務は文明を監視することだったが、カイトの「自らを犠牲に戦う」勇気に「共振する個性」を感じたためマックスは動いた…と本人が語っている。しかし、マックスは一方的に力を授けた後はダイレクトに戦闘に突入してしまい、「共振する個性」を感じたこととマックスの任務逸脱がどう関わるのかは説明されていない。そして、その後のマックスはストーリー上のデウス・エクス・マキーナとして怪獣を倒す役割を担うことに専念し、何を考え何を思っているのか、1話完結スタイルのストーリーの中で触れられることはなかった(19話の敵などはマックスにとってのトラウマだったはずが、そのトラウマを感じていたのはストーリー上もっぱらカイトだった)。13話では同僚と思しきウルトラマンゼノンも現れたが、ゼノンもいちいちマックスが何をしているかに突っ込むこともなく、そもそもゼノン本人もゼットンと戦い宇宙戦闘機の襲来を警告して帰っていくという、そもそも最初から宇宙の平和を守っているかのような言動を見せている。
この点が少し進展するのは第30話「勇気を胸に」。第1話でのダッシュバードがそのまま墜落してしまう(つまりカイトもそのまま死亡する)悪夢にうなされるカイトはマックスの力に悩むようになる。自分たち地球人にとってウルトラマンの力とは何なのか。ラゴラスエヴォに立ち向かうカイトは変身の中、マックスと再び対話する。
カイト「マックス、君はM78星雲からどうしてこの地球に来たんだ」
マックス「我々は文明の進んだ惑星が宇宙と調和できるかどうかを観察している」
マックス「本来我々は直接その惑星には干渉しない」
カイト「だけど…今俺たちにはマックスの力が必要だ」
マックス「私はいつまでもこの地球に留まれない」
マックス「宇宙と調和していくのは人間のすべきことだ」
マックス「しかしカイト…君の皆を守りたいという気持ちが私を動かしたのだ」
マックス「私は君に今託している…」
マックス「自分の判断を信じたまえ、カイト」
カイト「ありがとう、マックス」
相変わらずマックスの言葉は端的に過ぎるが、「地球人のために戦うのは本体の任務ではない」のに干渉したのは、カイトの「皆を守りたい」という想いによるとマックスは言っている。マックスはカイトの想いに自らの力を託している、だからカイトも悩まずに自分を信じろ、マックスはそう言って、カイトを後押ししているのだ。そして、マックスのTVシリーズは39話で終わるので、上記以上にマックスはなぜ戦ってくれるのかという問題がテーマになることもなかった。
文明監視員であるマックスはカイトだけを見ていたわけではないはずだが、マックスは明らかにカイトへの信頼感に重きを置いている。そもそも「皆を守りたい」などはDASHの他の隊員にも共通の心情のはずだろう。しかし、マックスが選んだのはカイトだった。
ここで1話のマックスの言葉に戻ってみるとマックスはカイトの「自らを犠牲の戦う」姿に「共振する個性」を感じたと語っている。「共振する個性」とはまた超越者らしい仰々しい物言いだが、要するに個性が同じということだ。マックスは正式なDASH隊員でないにも関わらずダッシュバードを操縦し死にかけたカイトにこそ「共振する個性」を感じ、「一心同体」に足る人格を見出したのだ。言うまでもなく正式な隊員でもないのに戦闘機に乗って戦うなど全ての面において違法・逸脱なのは間違いない。しかし、それを見てカイトを救わねばならないと動き出したマックスもまた本来の任務から逸脱して命を守ることを優先してしまった。ここにおいて、カイトとマックスは確かに同じことをしている。本来の役割がどうであれ命を守るために無茶をしてしまう、それこそが「共振する個性」だったのだ。
実際、マックスはカイトと対話する時こそ超越者のようにゆったりと語っているが、ウルトラマンとしての戦い方は意外と人間くさい。アントラーの大顎に挟まれれば思い切り痛がっているし、ヘイレンを挑発したり、クラウドスとの戦いで御神木を引っこ抜いてしまった時は慌てて元に戻したり、モエタランガとの戦いでも異常な興奮状態を披露している。これらは変身前のカイトの行動にも通じていて、カイトとしての行動がマックスにも出てしまっていると見ることもできる。そういう一端があることも確かだろう。しかし、それでも実際に行動で示しているのはマックスなわけで、マックス本人にもこういう面があるからこそ、そういう行動に結実していると見ても誤りではないだろう(後に『ウルトラマンX』8話でマックスが客演した時、マックスが人間体として選んだのはカイトの姿だったが、初登場時はカイト本人のような挙動を見せている。これもカイトの言動をコピーした、と言うよりはマックス本人がカイトっぽいと見ても不自然ではない)。
つまり、マックスが地球のために戦ってくれたのは偏にカイトの行動による。仮にカイトがDASHの入隊テストに合格して正規の隊員として殉職しかけてもマックスは恐らく動かなかった。カイトが違法行動に手を染めてまで皆を守りたいと行動し、マックスは図らずもそれに「共振」してしまった。そうであれば、マックスとしても本来の任務からの逸脱は禁忌ではなく、今するべきことになってしまう。カイトが「なぜ文明監視員の任務から逸脱してまで戦ってくれるのか」とマックスに問いかけることはなかったが、マックスは「いや、皆を守るためならそうしてもいいってお前が身を以て示したんだろ」と答えたに違いない。マックスとしてはカイトの心情こそが自分の任務逸脱に正統性を与えているのである。マックスがカイトという一地球人に全幅の信頼を置いているのはこのように説明できるだろう。
(1話のマックスが自分の方が圧倒的な力を持っているにも関わらずカイトに「君の力を貸してほしい…」と語りかけるのも好き。ウルトラマンにとっても戦うためには人間の意志に依存することを、この逆転的言辞は示しているのだ)
(13話のゼノンがマックスが戦っていることにいちいち突っ込まなかったのも「まあマックスってこういう奴だしな…」と思っていた可能性もあるし、ゼノンも戦ってくれたことを見るとゼノンもそういう奴なのかもしれない。文明監視員のコンプラ意識どこ…?)
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