志末与志著『怪獣宇宙MONSTER SPACE』

怪獣monsterのコンテンツを中心に興味の赴くままに色々と綴っていくブログです。

【ネタバレ有】『名探偵ピカチュウ』感想

 ポケモン初の実写映画『名探偵ピカチュウを令和元年(2019)5月3日、公開初日に観て参りました。いい映画だったので、記事にしようと思います。
 まず、前提ですが、私はゲームの名探偵ピカチュウ3DSの体験版しかやってません(ケチ臭…)。だから、物語の核心については知らず、元のゲームと比べてどうかという比較も出来ませんが、それでもすでに名探偵ピカチュウの世界観に馴染んだと言いますか、大川透ピカチュウたまらん、探偵…いいじゃないかとなったわけです。名探偵ピカチュウをベースにしたという点では、元をとりあえず見知っているわけでそこは違和感なく期待大でした。

 一方で今回はポケモンの実写映画でもあります。ポケモンは公式絵やゲームでは表面がツルテカとしている感じで、そのまま出しても現実空間には馴染みません。よって、実写化にあたってはデザインに処理を加えるのが当然でしょう。ただ、今回の処理の仕方は表面の質感をリアルに寄せてみた感じで…正直あまり好きではないですね。リアルさをグロみたいなものと勘違いしてないか?ピカチュウやプリンのぬいぐるみ感は嫌いではないですが、リザードンなどの表皮はディテール過多で逆に不自然ではないかと思います。

 観る前に思っていたこととしてはこのようなことでした。それでは、ストーリーを追いつつ、つらつら感想を述べて行くことにします(ぶっちゃけ記憶が曖昧なところがあるので、ちょくちょく間違ってるかもしれません)。改めて言っておきますが、ネタバレをバンバンかましていくので気を付けてくださいね。
 ダラダラ長いだけの駄文なんて読んでられるか!って人は総括までのショートカットがありますのでどうぞ。

 なんとこの映画は公式から100分流出しているので、どうぞご覧ください。(僕は40分くらいで飽きました)


POKÉMON Detective Pikachu: Full Picture


 いきなりミュウツーが囚われているシーンから始まります。あれ?この映画って『ミュウツーの逆襲』のリメイクだっけか…と思うことを狙ってますね。案の定ミュウツーは施設を破壊して脱走しますが、その破壊された研究所から一台の車が…。車は謎のビームに襲われ、盛大に横転、炎上します。それを上から覗き込むミュウツー。映画の鍵を握るプロローグ映像です。
 所変わって、主人公たるティムくんが友達にけしかけられて、カラカラをゲットしようとする下りからメインのお話が始まります。初見者への世界観説明ですね。鳩であるかのようにピジョンかポッポの群れが飛んでおり、ポケモンが自然に存在するアピールとしては期待感抜群と言えます。追々わかりますが、ティムくんは11歳の時に母親を亡くしており、そんな彼にカラカラの説明させたり、パートナーにしようというのはどうなんだろうか…?
 ティムくんはキャラクター設定的にはコミュ障、陰キャ、孤独なんだろうと思い、序盤からそれなりにそういうアピールもあるんですが、役者さんの持つ雰囲気なのか、竹内涼真の声効果か、結構軽口を叩くせいか、そこまでそういうキャラとは思わず、等身大の普通の人間といった印象を受けました。
 カラカラをゲットし損ねたところ、ティムくんに父親の訃報が入ります。ティムくんは父が死んだライムシティに向かうことに。ライムシティは人間とポケモンが共生する町。電車に乗ってるティムくんの顔をなめるだけに現れたベロリンガが普通に気持ち悪かったです。
 父の死を告げに現れた刑事はケン・ワタナベ!(※吉田警部です)この人、ゴジラでも出るんだよなあ。日本向け映画御用達俳優になってきてないか?いかめしいブルーとセットなのが妙にハマってます。ケン・ワタナベはティムくんを気遣ってくれますが、ティムくんは別居の父親に複雑な感情を持っているようで、とりあえず父が住んでいた下宿の鍵をもらい、遺物を確認することにします。
 下宿へ向かう途中の街に自然にポケモンがいる様子がまたいいですね。ライムシティはポケモンと人間が共存する特殊な街でモンスターボールもバトルもないらしいですが、確かにそういう縛りがないとこの日常に溶け込むポケモンという映像は出ないわけで、醍醐味があります。
 下宿に行ってみると管理人の部屋の窓にはキモリが張り付いています。このキモリのヤモリ的質感が非常にマッチしていて、この映画の実写ポケモンの中ではたぶん一番ハマっていると言っても過言ではないです。やったなキモリ
 そこへ新米記者のルーシーがティムへ話しかけて来ます。ルーシーはティムの父親の死について疑惑を持っているようです。ルーシーはこの映画の人間のヒロインで、当たり前ですがとても美人です。しかもそれでいて、こだわりが強く好奇心旺盛で、それが逆に色々と残念な感じを醸し出しています。この単なる美女ではない妙が彼女の魅力だと思うのですが、どうでしょう?
 ティムくんはコミュ障なので彼女をやりすごし(てしまい)、亡き父の部屋に入ります。書斎は推理もののテレビが流れています。いつから付けっ放しなんだろう…。あまりティムくんにとって得るものはないですが、自分用と思われるポケモンの装飾にまみれた子供部屋を見てしまい、色々な記憶が思い出されます。ティムくんが書斎に戻ると、何かが下の方で蠢いています…。何だ?と身構えるティムくんが近付いて行くと…

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デデーン!(ネではない)

 主役のピカチュウさんです。
 突然の御対面にティムくんもピカチュウも騒ぎ立てますが、やがて2人(1人と1匹?)はお互いの言葉が理解できることに気付きます。
 ピカチュウの吹替声は西島秀俊さんです。ゲーム版の大川透さんと比べると、声が若くてちょっとイメージの違いが先行します。しかし、太い声ではないながらも声の芯が通っている声はぺちゃくちゃ喋っていても軽さを感じません。この声の正体という要素も併せれば適役だったのではないでしょうか。そういうわけで今回の声は結構気に入りました。
 そうこうしてる間に暴徒化したエイパムが窓から入り込み、ティムを襲います。エイパムは複数個体おり、もうほとんどイッっちゃってます。そんなのが集団で襲ってくるんだから、とっても怖い!まあエイパムが悪いわけではないんですが、この映画で明らかにイメージ落としてます。ティム&ピカチュウエイパムとの鬼ごっこの最中でもわりと掛け合いがあり、こう断続的に喋っているのは向こうのセンスな気がします。
 エイパムから逃げおおせた(というよりエイパムが異常な興奮から脱した)ティムは、夜間のフリマ街をピカチュウと歩き、喫茶店でコーヒーを飲みつつ話します。ピカチュウと喋れるのはティムだけで、他の人からは大谷育江のいつもの声に聞こえているようです。西島秀俊大谷育江は落差あるなあ…。こうした中でもピカチュウが絶え間なく動き、喋っているのがとても好印象を強くします。クールに言うならただの慣れなんでしょうが、すでに「これでいいじゃないか」と思えるのは無駄なストレスがなくて良いです。
 名探偵を自称し、ティムの亡父のパートナーであったようなピカチュウは、ティムの父・ハリーは死んでいないと直感し、死の真相を調べることを提案します。ティムくんはうざがりながらも、ピカチュウに根負けし、次の日にとりあえず情報収集を約束します。コーヒーを飲んだら吹き出すのはお約束。ピカチュウと話しているのを変に思われないように、電話してるように見せかけるのも古典的ですね。
 翌朝、ティムくんが起きてみると書斎をピカチュウが派手に散らかしています。どのタイミングが初出だったのかわかってないので、ここで話しますが、ポケモンを凶暴化させるガス「R」の出所が父の死と関係ある模様。だったらマスコミに聞けばいいだろということで、ティムくんはルーシーを尋ねに行きます。折しもライムシティを作ったクリフォード父子が週末のポケモンパレードの宣伝中。息子のロジャーの声がコジロウでちょっとビビりますが、どうやら悪い奴っぽい演出が入ります。
 ルーシーから情報を得たティムくん&ピカチュウは情報があると思しき場所を尋ねます。そこにいたのはバリヤードですが、ポケモン相手では言葉が通じないので意志疎通が出来ません(ゲームではピカチュウが通訳してた気がするけど)。バリヤードといえばパントマイムということで、ティムくんは設定を作りながらバリヤードの真似をして何とかコミュニケーションを図ります。ここらへんの喜怒哀楽が見ていて楽しく、実写バリヤードは初報時から気持ち悪さが話題になっていましたが、そういった悪い感情を吹き飛ばすほどでした。(マッチを落とす)…あ
 次にティムピカコンビが向かったのは、本来ライムシティでは禁止されているポケモンバトルをやっている場所。このあたりから謎の監視者が出て来ます。ピカチュウはなぜかすでに有名なようで、トレーナーで言うとスキンヘッドとでも言うべき(スキンヘッドじゃないけど) 兄ちゃんが情報の代償にバトルを吹っ掛けて来ます。ポケモン的ですな。意気揚々なピカチュウですが、相手がRを吸って凶暴化したリザードンと知ると「無理無理」とか言い出します。予告でも印象的な場面です。
 暴れるリザードンに逃げ回るピカチュウ。弾みでスキンヘッドが倒れてしまい、持っていたRをぶちまけてしまいます。それを吸った他のポケモンたちも大暴走し、会場は大混乱に陥ります。壊れた水槽からはコイキングバトルフィールド中央へ…。「ピカッと閃いた!」(この映画ではそんな台詞ないです)とピカチュウコイキングギャラドスに進化させようとリザードンにけしかけます。しかし、何も起こらない…。「進化の石とか必要?」と思いきやコイキングギャラドスに進化し、なみのりみたいな技で皆さん吹っ飛ばされます。


 さてさて、ここまで書いて来ましたが、何だかものすごく雑な書きぶりな気がしてきました。書き逃してるところもいくつかありますね。
 例えば、ティムくんとルーシーの密会。二人は喫茶店で待ち合わせるのですが、警戒のため知らないふりをしあいます。が、ティムくんは最初から空気読めてないし、結局何だかんだで2人で座ってるし、特に声を潜めるとかもありません。見張られてることを意識してるのかしてないのか…。
 ピカチュウがティムの肩に乗ろうとして嫌がれられるシーンも見所です。確かに小さいピカチュウが人間と歩幅を合わせるのは辛いよね。万歩計10万はポケットピカチュウネタなのかな。ピカチュウはティムをパートナー呼ばわりしますが、ティムくんは拒否、清々しいほどの前振りですね。
 違法ポケモンバトル会場でのカメックスVSゲンガーも面白い戦いでした。半透明でまさにゴーストタイプのイメージが強いゲンガーや回転しつつ攻撃するカメックスガメラかお前は)は実写ならではの見せ方でした。この映画ではバトルはメインではないですが、描写があるのはうれしいところですね。

 本筋に戻ると、ティムくんらはライムシティの市長ポジションであるハワード・クリフォードに招かれます。ハワードは是非ハリーの死の真相を突き止めてほしいと依頼します。ティムがハリーの死を肯定すると、ハワードは立体映像でハリーの事故を再現、謎の攻撃で車が横転し、車から逃れようとしたハリーの前にミュウツーが現れ、ピカチュウの記憶を消してハリーを吸収してしまいます。真相に驚くコンビ。
 そういうことで今度は手掛かりを探しにミュウツーを捕えていた研究所にルーシーと行くことになります。ルーシーの連れているポケモンコダックで気難しい性格なためピカチュウは機嫌を取ります。ていうかピカチュウチャイルドシート…まあ当然か。閑話休題コダックってこんな爆弾みたいなポケモンだっけ…?ルーシーはリュックサックみたいにコダックを背負って移動しますが、完全にカスミですね。
 ティムとルーシーらは柵を切り取って研究所に侵入します。当然見張られているわけですが、2人は全然気を配っていません。相変わらず警戒心があるのかないのか、どっちなんだ。研究所には実験ポケモンたち、パワーアップされたゲッコウガや成長を促された…割には普通の見た目のドダイトスなどがいました。ティムくんは記録されたバーチャル映像から、ミュウツーを浚う仕事を請け負ったのがハリーであることや事故の状況などを知ります。毎度受け身ですね。ミュウツーを研究している女博士の声は林原めぐみです。ロジャー=コジロウと違い、ミュウを探しに行ったのがミヤモト(ムサシの母ちゃん)だったことを思うと意味深なキャスティングですね。
 2人の様子を監視カメラで見ていたロジャーらしき男は、ゲッコウガの部屋を解放し、2人を襲わせます。ティムくんやルーシーたちはコダックの超能力を爆発させることで難を逃れますが、すると地震か!?と地面が動き出します。何と、彼らが立っている大地そのものが体長1キロメートルはありそうな巨大ドダイトスなのでした。多事多難怪獣ゴーヤベックか!?さっきの成長促進と言いつつ普通のドダイトスは伏線だったのです。どーすんだこれ。
 巨大ドダイトスはやがて鎮まりますが、高所から落下したピカチュウは重傷を負います。毛がゴワゴワっとして息も絶え絶えなことで重傷をアピールしていますが、目立った外傷はなくもちろん流血表現もなし。正直言うと、どれほどの傷やねんという感情もなくはなかったのですが、これが株ポケの矜持ということかもしれません。一部の漫画を除いてポケモンが流血することはないですから、線引きはあったのでしょう。
 ティムくんがおいおい焦るそこへ野生のフシギダネが通りかかります。とおりすがりのフシギダネピカチュウ救助を訴えかけるティムくん。ポケモンに人間の言葉が通じるかよ…と醒めてるルーシーに、ティムくんはハートでわかりあえると力説!パートナー宣言といい、完全に初期ピカチュウに毒されています。実際に心が通じたのか、大量のフシギダネがわらわら現れて、ティムくんとピカチュウを森の中に案内していきます。しかし、せせらぎの気持ちいい場所まで案内し終わると、フシギダネたちは去って行きます。「えっ?どうすりゃいいんだよ」的なティムくん。
 するとそこへミュウツーが直々に出てきて、ピカチュウを回復させてくれます。ミュウツーは回想で何があったのかの断片をティムくんとピカチュウに語りますが、いいところでロジャーっぽい人がミュウツーを捕まえて連れ去ってしまいます。最初からミュウツーを発見させるために泳がせてたようです。
 さて、もうここらへんで色々なことが読めてきます。ミュウツーは「息子を連れて来たぞ、ハリー」のようなセリフを言います。ハリーはいったいどこにいるのか?探偵人格でなぜか意志疎通できるピカチュウ…その人格はハリーのものなのではないか。ミュウツーの台詞もピカチュウに言っているのでは…?
 さらにロジャーが明らかにワルなことも引っかかります。ロジャーは一言も喋ってませんし、何より悪であるというのはハワードの証言しかありません。序盤のテレビ局のシーンでロジャーがハワードを偽善者と罵っていたことも思い出されます。ロジャーって感じの悪い奴!という演出ではなく、実際に善悪が逆転しているのでは…?ミステリーなんてどんでん返ししてナンボですよ。ロジャーは実はいい奴でミュウツーを捕まえたことには意図があるんですよ。
 そんなことを考えつつ、ピカチュウミュウツーが示した真実で、自分がミュウツーを逃がした犯人(犯ポケ?)なことを知りショックを受けます。自分はハリーを裏切ってしまったのではないか…。ピカチュウはティムくんを傷つけることを恐れ、絶交を宣言してしまいます。気持ちはわかるけど、もうちょっとちゃんと確かめてみないか?
 失意のティムくんですが、ロジャーがミュウツーを捕えたと知ってはすぐにハワードに報告に走ります。ルーシーも何とか事実を暴露しようとします。ピカチュウはとぼとぼ歩いていると、ハリーの車が横転した事故現場に至ります。そこに残っていたのはゲッコウガの手裏剣の跡でした。へ…?てことはハリーを襲ったのはミュウツーじゃなくてゲッコウガ…?じゃあ何でハワードはそれを隠して…?やべえことに気付いたピカチュウはティムの身を案じ駆け付けようとします。
 しかし、ティムがハワードの書斎に入った時には、すでにハワードはその本性を明らかにしてミュウツーに憑依します。暗躍していた見張りの女性やロジャーっぽい男は実はメタモンというオチ。マ、マジかよ…。ロジャーがティムくんらの知らない意図で動いてるとかじゃなく、そもそも別人だったのか!…そんなの許したらもう何もかも成り立たねえだろうが!(一応ずっとサングラスだったのが伏線ではあった)
 人間の精神とポケモンの肉体の一体化はマサキがやっていたネタからのインスパイアなんですかね。ポケモン映画かと思いきや、切り口がセンセーショナルで度肝を抜きます。人間の肉体は衰える一方だが、ポケモンは進化することができる。急に重厚なテーマを突きつけられた格好です。でもミュウツーにそんな力があったとか初耳ナンデスケド…。
 ハワードinミュウツーはバルーンに仕込んでいたRガスを充満させて、パレードに来ていた客たちをポケモンと合体させていきます。ティムくんは高層ビルの上からメタモン(が変身する様々な人物やポケモン)に吹っ飛ばされ、落ちそうになります。ハリウッド映画でよくあるやつだ。しかし、書斎の箪笥みたいな場所に軟禁されていた本物ロジャーが助けてくれます。そんな近いところにいたのかよ!
 ピカチュウピジョットに乗って駆け付け、ミュウツーとの間に大空中戦が展開されます。文字に起こせないのが残念ですが、流石迫力に満ちています。ピカチュウがついにボルテッカ―を披露するのも見物です。でも最終的にはティムがハワードの頭についていた精神転送装置っぽいものを外すとミュウツーの人格が戻ります。普通こういうのって外れないとか外しても戻らないとかじゃないんだ…。ミュウツーは意外といい奴で、人間とポケモンの精神と肉体もきちんと元に戻してくれます。「人間にもいい奴はいる」というありがちだけど、王道なミュウツーの感慨にはほっとさせられますね。
 ティムくんとルーシーも最後「また会おう」とデートの約束(っぽいもの)をして終わるのがいいですね。安易に恋人になるのではなく、今回の事件で良縁が出来て、これからどう広がるのか、こういう終わり方でいいんだよ、こういう終わり方で。
 で、結局ハリーはやっぱりピカチュウでした。う~~~ん、ここは予想してたけど、同時にあまりそうあってほしくなあってところでもありました。ティムとピカチュウの友情を見ていたら、そこにピカチュウ本人(本鼠?)は介在していないのはやはり根幹から観ていたものがズレてしまいます。ただ、戻ってきたハリーは微妙に無口だし、ピカチュウは序盤でティムくんのお母さん(つまりハリーの亡き妻)に全然気付かなかったしで、ハリーの人格が乗っ取ったと言うより、ピカチュウ人格と融合していたと見る方がいいのかもしれません。うん、やっぱりそっちの方が納得できるし。
 何だかんだ言いましたが、ティムくんがやっぱり帰るのをやめて、ハリーと同居するのは家族ものらしくほっこりするラストではありました。続編が難しそうなのが難点ですが…。
 エンディングの遊び心も劇中の余韻を受けつつ楽しい映像でとても良かった。杉森絵とポケスペが混じったような公式テイストイラストが流れてましたが、あちらさんから見た日本のポケモン観というのが窺えますね。ポケモンの公式絵の周辺にポケモン名や「けんきゅう」などのそれっぽい単語が平仮名で浮遊していましたが、文字全体を見えるような形にはしておらず、雰囲気作りに使っているのが、日本から見ると特異なようにも見えました。でもこれまたあちらから見ると、イメージ作りにアルファベットを多用する日本のあり方もそう見えているんでしょうね。写し鏡みたいなものです。

総括

 まず、ミステリー・探偵ものとしてはあまり誉められないと言いますか、結局推理らしい推理はしていませんね。名探偵の看板倒れです。皆さん、真実の一端を徐々に見せられるだけでただただ受け身でしかないです。外連味に欠けています。ここは15点くらいですね。
 次にパートナーと言うべき名探偵ピカチュウの人格が結局人間のものというオチも、異種間コンビという点からは肩透かしです。まあもちろん家族ものという側面もあるので一概に全否定もしませんが。ここは25点くらいでしょうか。
 お話としてはよく言えば正統、悪く言えば捻りなしです。中盤に予想したことがだいたい当たってしまいます。人間とポケモンの融合というのも突きつけられた時はショックでしたが、スパイス以上のものではなかった、と言うか、映画ではなく観てるこっちが引き受ける類のものなんでしょうね。40点くらいかな。
 ポケモンが自然に存在する世界観の面白さ。実写が本当に自然だったか、あれが正解かというのはまあ6割くらいの満足かな…という印象です。それでもポケモンが現実にいることで何が起こり、何が楽しいのかという点はとても有意に描かれていたと思います。ここは5000点を差し上げたい。
 最後にピカチュウの可愛さです。今回の実写解釈はポケモン総じて言いますと、手放しで誉められるとは思っていません。が、ピカチュウのふわふわとした可愛さにコミカルな動き、キャラは文句なしです。これだけピカチュウの可愛さにショックを受けるのはポケダン以来ですねえ。10万点!!!
 合計するとこの映画は100点満点で108050点です。何を言ってるのかよくわからないかもしれませんが、何が素晴らしいかという比重はじゅうぶんにご理解いただけるのではないでしょうか。
 今回出たポケモンたちはだいたい150匹くらいだそうですが、ポケ選はまあまあバランス良かったと思います。チコリータベイリーフメガニウムも出ませんでしたが!でも実写化ってやっぱりショックが伴うものだし、本当に好きなポケモンがいじられて毀誉褒貶を激しくしてしまうことがなかったのは、映画への評価への公正さの維持という点では悪くなかったと言えるかもしれません。

※実写どうだった?表 (順不同にも程がある)

ピカチュウ フシギダネ ヒトカゲ ゼニガメ
カラカラ リザードン カメックス ゲンガー
コダック プリン ルンパッパ バリヤード
キモリ ミュウツー*1 イーブイ ブースター
メタモン カビゴン カイリキ― コイキング
ギャラドス ゲッコウガ ドダイトス ブルー
ベロリンガ エイパム ドゴーム ガーディ
ウインディ ピジョット

 全体的に○が多すぎる。考えなしか?と思われるかもしれませんが、意図としては元々△多めの低評価だったのが、好印象によって評価が○まで上がっているのが多いのでこうなっているということです。ナマモノ系は△のままなのでわかりやすいですね。

 この映画は続編を作るには設定的な面で難しいと思われます。ハリーが復活したから、「名探偵ピカチュウ」はもういないわけだし。ただ、やはり世界観やキャラクターがこれで終わりなのは惜しいものがあります。公式ダンス動画でもかなりお腹いっぱいなので、今後ちょくちょくこういうCGを流用した面白映像を配信するでも楽しいかなと思います。何にせよ「今後」にも大いに期待してます!

*1:ミュウツーは実写デザインの当否よりも存在感が実写に馴染んでいないのが気になった